東京高等裁判所 昭和51年(う)1751号 判決
被告人 川井田順光
〔抄 録〕
所論は、要するに、原判決は、その理由中において、被告人が法定の除外事由がないのに、覚せい剤約〇・九二七グラム(東京地裁昭和五一年押第七三六号の一ないし三は、その一部である。)を所持した旨認定しながら(原判示第二事実)、その主文においてこれを没収する旨の言渡をしていないけれども、覚せい剤は法禁物であり、覚せい剤取締法四一条の六本文により必要的に没収しなければならないものであるから、右没収の言渡をしなかった原判決には理由不備の違法か、もしくは判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤り、または訴訟手続の法令違反(審理不尽)がある、もっとも同法同条但書によれば、「犯人以外の所有に係るときは、没収しないことができる」旨規定しているけれども、原審で取り調べた証拠によれば、本件覚せい剤は被告人の所有にかかるものとしかみられず、万一小笠原雄二の所有とみるとしても、同人は同法その他の法令により所持を認められているものではないから、右但書の規定の適用もない、というのである。
しかしながら、被告人の控訴にかかる本件において、被告人の弁護人が、原判決の没収していない物件を没収すべきである旨主張することは、被告人にとり不利益な主張であって、控訴理由として許されないものと解すべきである(最高裁判所昭和三〇年(あ)第二三一一号、同年一二月二一日大法廷判決、刑集九巻一四号二九四六頁参照)。
(綿引 藤野 鈴木)