大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(う)206号 判決

被告人 木村美智夫

〔抄 録〕

原判決は、没収に関する法令の適用として刑法一九条一項二号、二項を掲げるのみで、判示第一ないし第三のいずれの罪の犯行供用物件としてこれを没収したのかを明示していないが、判示第三の各罪(交通事故の場合の措置義務及び報告義務違反の罪)についての犯行供用物件と考える余地はなく、また、およそ過失犯については、犯罪供用物件と解せられる物があったとしても、これが没収は極めて限定された場合(例えば同種の重大な過失を繰り返すおそれがあるため、危険防止上是非とも没収を必要とするような場合)にのみ認められるべきものであるから、原裁判所の意図は判示第一の無免許運転の供用物件としてこれを没収したものと解せられる。

そのような前提に立って考えると、本件自動車(日立警察署に領置中)は、無免許運転の用に供されたものではあるけれども、無免許で自動車を運転することを内容とする無免許運転罪の構成要件要素に属する物件であるから、法律上は同法一九条一項二号の犯罪供用物件ではなく同項一号の犯罪組成物件に当るものと解すべきであり、従って原判決は法令の適用を誤ったことに帰するが、同項一号によって本件自動車を没収しうることに変りはなく(併合罪について加重刑を科する場合に、最も重い罪以外の罪の組成物件を没収しうることには何も問題はない。)、しかも後述するとおりその没収を相当とすべき場合であると認められるので、右の法令適用の誤りも判決に影響を及ぼすべき事柄ではない。結局のところ所論は原判決破棄の理由とはならない。論旨は理由がない。

量刑不当の主張について。

記録によると、被告人は、二〇歳位の時普通乗用自動車の無免許運転により罰金刑に処せられており、その頃から二輪免許あるいは普通免許を得ようとして何度も試験を受けたが学科試験でいずれも不合格となっていたものであるが、昭和四九年五月頃、格別仕事上などの必要もないのに、本件自動車を購入し、両親や伯母などの注意もきかず、これを乗り廻していたものである。このことは被告人の甚だしい順法精神の欠如を物語るもので、無免許運転の再犯のおそれは今なお払拭し難いものがある。

以上のほか、本件自動車の評価額もそれほど高いものではないこと(被告人は四二万円で購入しているが、すでに七万四、〇〇〇キロメートル余も走行した中古車であるうえ、本件事故により相当破損している。)、本刑である懲役刑の執行が猶予されていることなど諸般の事情を併わせ考えると、本件については、特に附加刑として自動車を没収することとした原審の措置は相当として是認することができる。

(戸田 永井 本郷)

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