大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(ネ)1138号・昭50年(ネ)2531号 判決

右事実関係に基づいて考えるに、まず、本訴請求原因3のうちの各約束手形の裏書譲渡については、菊地電線は、控訴人から商品代金の前渡金として右各手形の振出を受けたものであるから、商品を納入しない以上控訴人に対し手形の支払を求めることができず、したがって、右各手形は、訴外会社の手許にあってもその一般債権者の共同担保たるべき責任財産を構成しないことが明らかである。しかしながら、かかる手形でも他で割り引いて現金化することはもとより可能であり、そうすると、窮状にある債務者が、特定の債権者のために、自ら現金化して弁済に供すれば事情によっては詐害行為が成立するし、これと同様に、かかる手形を債務者において現金化する代わりにそのまま特定の債権者に裏書譲渡し同人をして現金化させるなどしてその債権回収の用に供したという場合にも、事情のいかんによっては詐害行為成立の余地あるものといわなければならない。ただ、この場合には、債務者自らが手形を現金化してする弁済に準じて考えるのであるから、手形の裏書のみを切り離して考察するのでは意味がなく、右の特定の債権者がかかる手形を用いていかにして債権の回収を実現したかという点も合わせて総合的に検討しなければならないところ、これを本件の被控訴人について見るに、被控訴人は、控訴人が前渡金として前記各手形を振り出したものであることを知りながら菊地電線からこれらの裏書譲渡を受けたこと、そして控訴人から満期に右各手形の支払を受けたことは、これらの点に関する原判決の説示を引用して既に示したとおりである。そうすると、被控訴人は、人的抗弁の対抗を受け本来支払を受けることのできないはずの右各手形につきたまたまその支払を受けたというにすぎず、右に見た債務者自らが手形を現金化してする弁済に準じて考えるべき余地はなく、したがって、菊地電線の被控訴人に対する右各手形の裏書譲渡については、詐害行為の成立を肯定することはできない。

(岡松 賀集 木村)

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