東京高等裁判所 昭和51年(ネ)1660号 判決
控訴人は、控訴人の休業損害の額を算定するについて、控訴人の営業に対する寄与度なる観念によってその年収額を算定することには問題があるが、仮にこの方法によるとしても、その寄与度は少なくとも五〇パーセントとすべきものであり、また、その計算の基礎となるべき営業収益は、昭和四五年度の営業収益額金二〇九万九六八〇円に控訴人の家族の事業専従者としての給与額として控除した合計金一三二万円を加えた金三四一万九六八〇円とすべきであると主張する。しかしながら、控訴人のような自営商業の営業主における休業損害は、物的施設や過去の営業実績に基づく信用、のれん、顧客等の無形資産と営業主その他の営業従事者の精神的、肉体的労働の総合によって得られる営業収入からこれに要する経費を控訴した純営業収益の全部と一致するものではなく、専ら当該営業主が現実に営業に携わることができなかったために生ずべき収益の減少部分に相当するものであり、これを算定するにあたり、当該営業の運営の実態に照らして前記経済上の営業収益のうち営業主の右関与によるものがその何パーセントを占めると認めるのが相当であるかを考察、判定し、これを右営業主の右収益に対するいわゆる寄与度として、これを右収益の額に乗じて得られる金額をもって右営業主の休業損失額と認定することも、もとよりかかる休業損失認定の合理的方法として是認されるべきものである。ところで、本件においては、昭和四六年度の営業収益が明らかにされていない関係上、右の方法によって控訴人の休業損失を認定するほかなく、この算定にあたり、控訴人の営業における営業収益を、前記のように、本件事故の前年である昭和四五年度の確定申告書控に基づき、同年度の売上総額から必要経費を控除した残額の金二〇九万九六八〇円と認定したものであるが、右必要経費の中には、控訴人の主張するように、控訴人の娘夫婦及び妻に対する専従者給与額として合計金一三二万円が含まれている。これにつき控訴人は、前記寄与度によって計算すべき営業収益の算定につき右所得申告における家族に対する給与としての控除額をそのまま控除額として認めることは不当であるというのであるが、しかし、右のような場合に常に所得申告上の営業収益額に右控除額を加えたものを基礎としなければならないとすべき理由はなく、家族労働が一定の金額において控除されていることを考慮に入れたうえで、残存収益に対する営業主の寄与度を判定し、これによってその営業主の休業損失額を認定することも、右控除額が一般的基準に照らして多額であり、その結果残存収益額がこれに比し、あるいは同規模の他の同種業者の平均的な収益額に比し、著しく寡額となっている等の特段の事由のない限り、もとより原則として許されるところといわなければならない。本件においては、前記控訴人の家族に対する給与としての控除額は比額的低額であって、右控除前の収益額のほぼ三分の一程度にすぎず、これを控除した残存収益額も決して著しく寡額であるというにはあたらないから、右給与相当額を控除した金額を基礎とすることは決して不当ではなく、また他方、前記認定のような控訴人の営業の種類及びその運営の実態等に照らすときは、右控除の事実を考慮に入れても、控訴人の前記収益に対する寄与度は三〇パーセント程度とみるのが相当であり、控訴人の主張するように、これを五〇パーセントとすることは、過大に失するといわなければならない。それ故、控訴人の上記主張は、採用することができない。
(中村 蕪山 高木)