東京高等裁判所 昭和51年(ネ)2298号 判決 1977年2月15日
控訴人
県央開発株式会社
右代表者
大野茂雄
右訴訟代理人
高田正利
被控訴人
ムサシノ工業株式会社
右代表者
前田精寿
右訴訟代理人
谷浦光宣
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実《省略》
理由
控訴人主張の請求原因事実は、すべて当事者間に争いがない。ところで、いわゆる白地手形は、白地部分を補充せずに満期にこれを支払のため呈示しても、右呈示は無効であつて、裏書人に対する手形上の権利行使の条件を具備しないものと解するのが相当である。そして、前記争いのない事実によると、本件約束手形三通は、いずれも振出日欄白地で振出され、所持人である控訴人は、右各手形の各満期にこれを白地のまま支払場所に呈示しているのであるから、裏書人である被控訴人に対し、遡求権を行使することは許されないものといわなければならない。
仮に控訴人主張の商慣習(法)が存在するとしても、約束手形については、それが確定日払のものであつて、振出日が手形要件とされていることは、手形法第七五条、七六条の規定に照らし、明らかであり、同法の性質上、商慣習法によつて振出日を手形要件から除外することは許されないものと解するのが相当であり、右各規定が強行規定であることは明らかであるから、右各規定と異なつた商慣習に従つて意思表示を解釈することが許されないことも、民法第九二条の規定に照らし、明らかである。従つて、商慣習(法)の存在に関する控訴人の主張は採用することができない。
よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(枡田文郎 山田忠治 古館清吾)