東京高等裁判所 昭和51年(ネ)812号 判決
債務者又は担保提供者がその所有する不動産につき抵当権を設定する際に、債権者との間の特約により抵当債務の不履行を停止条件とする代物弁済契約を締結し、これに基づき所有権移転仮登記をすることは往々見受けられるところであり、右の特約は代物弁済予約形式のいわゆる仮登記担保権を設定する趣旨のものと考えられる。しかしながら、担保提供者が単に物上保証人となることを承諾したにとどまる場合には、通常の場合抵当権を設定することのみを承諾したものと解すべきであり、特段の事情のない限り当然には抵当権の目的たる不動産につき右の仮登記担保権を設定することを承諾したものと推認することはできない。けだし、債権者による仮登記担保権の実行は、その効果において抵当権の実行の場合と類似する一面があるとはいえ、その手続及び効果が後者と全く同一であるというわけではなく、不動産に仮登記担保権を設定した場合には、抵当権のみを設定した場合と比較して後順位抵当権の設定、当該不動産の譲渡・賃貸等につき所有者が一層不利益な立場に置かれることもあり得るのであって、他に特段の事情もないのに、物上保証人となることを承諾した者は当然に仮登記担保権を設定する意思をも有していたものと推測するのは、合理的な意思解釈ということができないからである。
(外山 近藤 鬼頭)