東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)148号 判決
一 前掲請求の原因のうち、被告が商標権を有する登録商標について、その構成、指定商品及び原告の登録取消審判の請求から審決の成立にいたる特許庁における手続並びに審決の理由に関する事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、右審決に取消事由があるか否かについて考察する。
(一) 右登録商標について、かつて、専用使用権者及び通常使用権者が存在しなかつたことは当事者間に争いがない。
(二) そして、成立に争いのない甲第二号証の一ないし五、第四号証、証人坪谷加南子の証言により真正に成立したものと認める甲第三号証及び同証言によれば、被告は、昭和二一年三月創業にかかる個人企業を前身とし、昭和二三年中化粧品の製造販売を目的とし、資本金総額一五〇万円をもつて設立された株式会社であつて、その後販売部門を独立させて逐年営業の規模を拡大し、昭和三九年には資本金総額を一億二〇〇〇万円としたものであるが、創業以来その製品は広く「コーセー化粧品」の名称で市場に出廻つていること、ところが、昭和四二年四月三〇日附発行の業界誌「週刊粧業」には、被告の発売する商品一覧として、クリーム、乳液、化粧水、石鹸、頭髪用品、メイキヤツプ、香水、男性用化粧品等にわたり合計一七〇点余の品目が挙げられているにかかわらず、その中には「スポーツ」の標章を附した商品はないこと、また、昭和四四年一一月から昭和四五年六月までの間に発行された被告の愛用者向け宣伝誌「カトレヤ」(月刊)や宣伝用パンフレツトにも「スポーツ」の標章を附したコーセー化粧品は記載されていないこと、なお、昭和四五年六月当時東京都内新宿の百貨店伊勢丹及び三越においては「スポーツ」という標章の化粧品を販売していなかつたことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。しかるところ、被告は、右登録商標の商標権者としてその使用の具体的事実をたやすく立証し得る立場にありながら、あえて積極的にこれを主張立証しようとしないので、右認定の事実に被告の応訴態度にみられる弁論の全趣旨を斟酌すれば、被告は、本件審判請求時たる昭和四五年三月四日まで継続して三年以上、日本国内において右登録商標をその指定商品について使用していなかつたものと認めるを相当とする。
(三) そうだとすれば、右登録商標については、商標法第五〇条第一項に規定する登録取消の要件が存するというべく、審決がその不使用の事実を認めず、右商標登録を取消さなかつたのは事実誤認によるものであるから、審決は違法として取消されるべきである。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。