東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)67号 判決
一 特許庁における手続の経緯、本件考案の要旨及び審決の理由の要旨に関する各事実については当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の取消事由の存否について判断する。
成立につき争いのない甲第五ないし第一四号証(特許庁昭和四五年審判第六一五号事件における証人上坂俊夫、同立脇精一、同岡田あい、同船木久雄、同平野石己、同斎藤勘一、同船木林、同花原佐一郎、同岡田一郎、同森本登の各証言調書)及び森本登作成のアルミ線製編籠であることにつき争いのない検乙第一号証を綜合すると、おそくとも昭和三〇年ころには、兵庫県出石郡出石町の三木、片間、大谷、丸中などの各部落では、同町の山崎正一の仲介による主に農家の副業として、審決が認定したような俗に「鎖天場」と称される上縁部が編組構成をもつアルミ線を用いた金属編籠が製作されていたことが認められ(原告は、右各証言内容には矛盾や経験則に反する部分が多いと主張するが、大筋において、以上の心証を妨げるほどのものは存在しない。)、甲第四号証及び原告代表者尋問の結果のうち、これに反する部分は、容易に措信できず、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。
右審決の認定にかかる金属編籠の縁編の構成自体が本件考案の構成と同一であることについては、原告も争わないところであるから、右認定事実に徴すれば、本件考案は、本願出願日である昭和三四年三月二七日前に日本国内において公然知られ、若しくは公然用いられたものによつて、新規性を失つたことが明らかである。
したがつて、審決が、本件考案は、実用新案法施行法第二六条第一項により旧実用新案法第一六条第一項第一号に該当するとして、本件実用新案登録を無効とした判断は、正当であつて、審決には、原告の主張するような違法はない。
三 以上のとおりであるから、本件審決の違法を主張してその取消を求める本訴請求は理由がないものとして棄却することとする。
〔編註〕 本件と同趣旨の判例として次のものがある。
昭和五四年一〇月三〇日東高民六判・昭和五一年(行ケ)六五号