大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)85号 判決

原告は本願商標(〔編註〕ゴジツク体により「むら咲」と縦書してなるもの)は引用商標(〔編註〕草書体にて「むらさ起」と縦書してなるもの)との間に称呼は共通であつても外観と観念上明かに識別できる差異がある旨主張するので、その根拠について検討する。

「むらさき」の文字およびその発音が醤油の異称として用いられ、醤油がせんべいの調味料の一つとして使用されていること、また「むらさき」の文字が紫色を表現するために使用されていることは、いずれも当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない甲第九号証、同第一四号証の一・二、同第一五号証の一・二、同第一六号証の一・二、同第一八号証の一・二・三、同第一九号証の一から五まで、同第二〇号証の一・二、同第二一号証の一・二、同第二二号証の一・二、同第二三号証の一・二、同第二四号証を総合すると、米菓業界において、醤油の産地野田を「下總紫の里」、「醤油の豊かな香りをむらさきの姿に」「むらさきの香り」などのように、その調味料である醤油の修飾辞として「むらさき」を使用し、あるいは「うす焼むらさき」「むらさき揚」「紫」「ぶぶ紫あられ」「むらさき」などのように米菓商品の品名ないしその一部として「むらさき」が用いられている事実が認められる。しかしながら、以上の事実は、他方、米菓の包装用紙に調味料として表示するのに、原告みずから『紫(おしようゆ)』とそえ書きして使用し、また他にも同じく「紫(しよう油)で」とそえ書きしている例が前掲甲第九号証、同第二二号証の一・二などに示されているところからも窺えるように、「むらさき」が商品の原材料あるいは品質を表示するものとして、普通に使用されているというよりは、むしろ、その非日常的な美称ないし雅称にちかい語感をもつところから、いうならば、その宣伝効果をねらつて使用されていることを示すに過ぎないと解するを相当とする。他に「むらさき」が商品の原材料あるいは品質を表示するものとして普通に使用されていることを認めるに足りる証拠はない。

なお、原告は引用商標が、横たわつていたものが起き上る意を直感させるとか、本願商標が「むら」に花の咲く意を直観させて、ともにそれぞれ独特の観念を取引者・需要者に印象づけ、称呼の共通性を阻却する旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。したがつて、出願者の主観的意図はいざ知らず、「むら咲」も「むらさ起」も、互いに意味関連のない平仮名と漢字とを任意結びつけたいわゆる創造語といわざるを得ない。

以上のとおり、原告の主張は根拠がない。そうすると、外観上書体の相違・構成文字の違いはあつても、本願商標は引用商標と「ムラサキ」の称呼を共通にし、しかも引用商標の指定商品中に含まれる商品を指定商品としているから出所混同の恐れがあり、商標法第四条第一項第一一号にいわゆる類似の商標であるとした審決の判断に原告主張の違法はないというべきである。

よつて、原告の本訴請求は理由がないから棄却する。

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