東京高等裁判所 昭和51年(行コ)28号 判決 1977年4月27日
東京都中央区日本橋馬喰町一丁目七番一二号
控訴人
株式会社旅粧高橋製作所
右代表者代表取締役
高橋佐久三
右訴訟代理人弁護士
水上喜景
同
菅谷幸男
東京都中央区日本橋堀留町二丁目五番地
被控訴人
日本橋税務署長
佐藤七郎
右指定代理人
渡辺等
同
小川修
同
新保重信
同
菅野俊夫
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和四七年一月二七日控訴人の昭和四二年九月一日ないし昭和四三年六月三〇日の事業年度以後青色申告の承認を取消した処分が無効であることを確認する。被控訴人が昭和四七年一月三一日控訴人の昭和四二年九月一日ないし昭和四三年六月三〇日の事業年度の法人税についてした更正(三次)及び重加算税賦課決定が無効であることを確認する。被控訴人が昭和四七年一月三一日控訴人の昭和四三年七月一日ないし昭和四四年六月三〇日の事業年度の法人税についてした更正(四次)のうち、欠損金八、三〇一、九一六円を超える部分が無効であることを確認する。被控訴人が昭和四七年一月三一日控訴人の昭和四四年七月一日ないし昭和四五年六月三〇日の事業年度の法人税についてした更正及び重加算税、過少申告加算税賦課決定が無効であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の主張および証拠の関係は、左記のほか原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
(控訴人の陳述)
原判決は昭和四三年度更正の無効確認を求める控訴人の訴について訴の利益がないものとした。しかし、本件における訴の利益は、金銭債権の多寡にあるのではなくして、なされた更正がそれを是認せしめる根拠・理由のある、従つて適正な更正であつたか否か、又前年度・次年度との関連影響の有無、更には基礎ないし前提となつた事由の取消により何らの処分を要せず当然更正・変更・取消等の結果をもたらすものか否か等の観点からこれをみるべきである。よつて、この見地から本件処分をみると、訴外の者の預金及び利息を控訴人の簿外預金と(誤)認定した上、<1>価格変動準備金の繰入否認及び<2>事業税認定損金を減算した結果一種の相殺勘定をなし減額更正したものであり、右の如く青色申告承認取消処分を前提とした事と重大な事実誤認に基き、第三者の預金を控訴人の預金とした事による処分である以上、それが結果的に減額更正となつていても、無効確認を求める訴の利益はあるものと思料する。
(被控訴人の陳述)
控訴人の昭和四三年度分の法人税について、確定申告に係る課税標準が一、〇一六、一四九円、税額が六〇、五〇〇円であるのに対し、更正(四次)に係る課税標準が欠損一一、〇〇三、二四六円、税額は二二三、八九七円の還付となるのである。そうすると、更正(四次)は控訴人の利益にこそなれ、控訴人の法律上の利益を何ら害していないことが明らかであるから、控訴人には右更正(四次)の無効確認を求める訴の利益がないというべきである。
(証拠関係)
控訴人は新たに甲第七号証の一ないし三を提出し、当審における控訴会社代表者高橋佐久三本人尋問の結果を援用し、被控訴人は右甲号各証の成立を認めた。
理由
当裁判所も控訴人の昭和四三年度更正の無効確認を求める請求に係る訴は不適法としてこれを却下すべく、その余の各請求は理由がなくいずれもこれを棄却すべきものと判断する。その理由は原判決の理由説示と同じであるからこれを引用する。当審で取調べた証拠資料によつても右引用にかかる原判決の認定判断を動かすに足りない。
よつて原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五法、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 江尻実雄一 裁判官 滝田薫 裁判官 桜井敏雄)