大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和51年(行コ)66号 判決 1978年4月25日

東京都荒川区西尾久二丁目三七番八号

控訴人

有限会社日の出商会

右代表者代表取締役

野口和男

同都同区西日暮里六丁目七番二号

被控訴人

荒川税務署長

伊東保雄

右指定代理人

鳥居康弘

藤村啓

古田幸三郎

相馬順一

右当事者間の法人税更正処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人会社代表者は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和四七年五月三一日付で控訴人の同四三年三月一日から同四四年二月二八日までの事業年度、同四四年三月一日から同四五年二月二八日までの事業年度及び同四五年三月一日から同四六年二月二八日までの事業年度の法人税についてした各更正及び重加算税賦課決定をいずれも取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠関係は、次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、それをここに引用する。

一、控訴人の主張

控訴人会社の営業日数は年間三一三日である。これに対し、控訴人会社と営業規模を同じくする、原判決添付別表三の記号「A」ないし「G」に掲げる七店(以下「本件七店」という)の営業日数は年間三六三日である。そこで、昭和四四年度から同四六年度までの本件七店及び控訴人の一日当りの売上高及び機械一台当りの売上高を算出すると、別表一(1)、(2)、(3)記載のとおりである。これによると、控訴人の一日当りの売上高及び機械一台当りの売上高は、いずれも、本件七店のそれよりも著しく高く、控訴人の売上高が一番多くなつている。

次に、昭和四四年度から同四六年度までの本件七店及び控訴人の売上高年間伸率を算出すると別表二(1)(2)記載のとおりである。これによると、控訴人の売上高の伸率は非常に大きく、本件七店の売上高の伸率は、控訴人にくらべて小さい。

以上のとおり、控訴人の一日当り、機械一台当りの売上高及び売上高伸率は、本件七店とくらべて著しく高くなつているが、これは、控訴人が出玉率を高くする営業方針をとり、その結果、差益率が本件七店にくらべて低かつたことを推認させるものである。したがつて、控訴人に本件七店の平均差益率を適用するのは不当である。

二、被控訴人の主張

1  控訴人の前記主張に対する反論

控訴人は、機械一台当りまたは一日当りの売上髙あるいは前年対比の伸率が、他の同業者に比して控訴人の方が高い、と主張するが、仮に控訴人の一台当りの売上及び前年対比の伸率が他の同業者に比して高いとすれば、控訴人の営業は好調というべきであり、そのことは、同業者の平均率を適用するに当り、控訴人にとつて有利な条件であるということはできるが、同業者の平均差益率による推計課税を違法とするような不利な条件とはいえない。

また、機械一台当りの売上高についても、各同業者間にばらつきのあることは推認されるところであるが、本件七店の差益率を見れば、機械一台当りの売上高の高さが直ちに差益率を低下させるとは認めがたいうえ、仮に差益率に影響を与えるとしても、本件七店の平均差益率の中に捨象されているというべきである。

2  予備的主張

被控訴人は、各同業者の差益率の平均値を求める方法として、予備的に次のとおり主張する。

すなわち、控訴人の同業者と認められる本件七店の各年分の差益率を求め、更にこれから平均差益率を求めると、それぞれ原判決添付別表三(1)(2)(3)記載のとおり(ただし、同別表(2)のGの差益率二五・〇を二四・九と訂正し、(1)ないし(3)の各末尾の「計」の行を削り、そこに「平均差益率」として(1)につき二五・五、(2)につき二六・〇、(3)につき二四・四をそれぞれ加える。)で、平均差益率は昭和四四年中決算分二五・五パーセント、同四五年中決算分二六・〇パーセント、同四六年中決算分二四・四パーセントとなる。そして、右平均差益率と控訴人の本件各事業年度の売上原価を基に控訴人の売上高を算定する(円未満切り捨て)と、第一事業年度七四、一三九、五〇四円、第二事業年度一〇三、八七二、七五九円、第三事業年度一一二、八九二、二八五円となり、これに控訴人の申告にかかる本件各事業年度の販売費、一般管理費、営業外収益及び営業外費用の額をも考慮に入れて、控訴人の本件各事業年度の所得金額を算定すると、第一事業年度八、二五九、九九〇円、第二事業年度一一、三五二、一九五円、第三事業年度七、〇〇〇、四六九円であり、本件各更正の課税標準は、各事業年度とも右所得金額の範囲内である。

理由

一、当裁判所は、控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり補足するほか、原判決理由説示(原判決一〇枚目表二行目から同一六枚目表四行目まで)と同一であるから、それをここに引用する。

1  控訴人は、第一事業年度から第三事業年度までの控訴人の売上高が控訴人の申告額のとおりであること、控訴人の年間営業日数が三一三日であり、本件七店の年間営業日数が三六三日であること及び同七店の機械台数が控訴人と同じ一八〇台であることを前提として、昭和四四年度から同四六年度(控訴人の第一事業年度と本件七店の昭和四四年中決算分を便宜上昭和四四年度と総称する。昭和四五、四六年度についても同じ。)までの各年度一日当りの売上高及び機械一台当りの売上高を算出したうえ、控訴人は、一日当りの売上高においても、機械一台当りの売上高においても、本件七店を著しく上回つていると主張するのであるが、前提とされた控訴人主張の売上高が認められないことは、原審認定のとおりであり、本件七店の年間営業日数がいずれも控訴人のそれよりも多いことは本件全証拠によつても認めることができず、また、本件七店の機械台数は、原判決説示のとおり、九〇台ないし三六〇台というのであつて、控訴人と同じ一八〇台であると断定することはできないから、控訴人の算定した一日当りの売上高及び機械一台当りの売上高は到底正確なものとはいいがたく、控訴人の右各売上高と本件七店のそれとを比較することは、無意味であるといわざるをえない。

次に、控訴人は、控訴人の売上高がその申告額のとおりであることを前提として、昭和四四年度から同四六年度までの本件七店及び控訴人の年間売上高伸率を算出したうえ、控訴人の売上高伸率は非常に大きく、同七店の売上高伸率は控訴人にくらべて小さいと主張するのであるが、前記のとおり、前提とされた控訴人主張の売上高が認められないのであるから、右主張は失当であるといわざるをえない。

2  ところで、控訴人会社が第一事業年度から第三事業年度まで出玉率を本件七店よりも高くしていたことを認めるに足りる証拠のないことは原判決説示のとおりであるから、控訴人会社の同期間における差益率が本件七店に比して低かつたと推認することはできない。

3  以上の次第であるから、控訴人会社の売上高を推計するに当り、本件七店の平均差益率を適用することは不合理であるとはいえない。

二、よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 枡田文郎 裁判官 斎藤次郎 裁判官 山田忠治)

別表一

同規模法人の

(1) 昭和44年度各店1日の売上高他

当店営業日数=週休、年開店2日休

同規模法人の

(2) 昭和45年度各店1日の売上高他

当店営業日数=週休、年開店2日休

同規模法人の

(3) 昭和46年度各店1日の売上高他

当店営業日数=週休、年開店2日休

別表二

(1) 昭和四四年分に対する同四五年分の売上高伸率

(2) 昭和四五年分に対する同四六年分の売上高伸率

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例