大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(う)1272号 判決

被告人 有限会社貸間学生協会 外一名

〔抄 録〕

所論は、被告人有限会社貸間学生協会(以下被告会社という。)の業務は、第一営業所(本店)、本件第二営業所及び支部が三者一体となって、営業上一事務所の機能を果しているものであり、第二営業所は第一営業所の分室にすぎないのであるから、第二営業所に専任の取引主任者を置く必要はなく、東京都に提出した事務所新設に伴う宅地建物取引業者名簿登載事項の変更届書は、被告人川崎(以下被告人という。)が、宅地建物取引業法(以下法または業法という。)を誤解して届出たものにすぎず、被告人の有罪を認めた原判決には、事実誤認及び法令の解釈、適用の誤りがある、というのである。<中略>

一 第二営業所の性格及び機能等について

1 被告会社の業務内容、とくに第二営業所の実情等について被告会社の貸間媒介業務の運営方法及び手順等については、原判決の「争点判断」中に正当に判示されているところであるが、要するに、被告会社は、会員制度を原則とし、新規依頼客に対する事務は第一営業所で取扱い、会員加入者、非加入者を問わず依頼客(会員加入者に対しては、その登録を行なったうえ)に対し貸間物件の紹介をするが、その手続は、まず、客に家主に対する紹介状等必要書類を渡し、客自身が家主方へ赴き直接貸間等を見分して家主側と交渉し、賃貸借契約が成立すれば、その客が入室契約成立通知書を通常第一営業所に持参し、同営業所で仲介手数料を、会員加入者からは、なお会員登録料を受領し、所定の契約書用紙に必要事項を記載して交付し、客は右契約書に家主の署名押印をもらうことにより完了するものであって、第一次の紹介で右契約が成立した場合には、すべて第一営業所で媒介行為も終了することになる。

しかし、第一次紹介で前記契約が成立しない場合及び成立後、他に転居するため再紹介を依頼された場合には、第一営業所にきた者も第二営業所に回し、第二営業所で媒介行為を行っていたことが認められる。

すなわち、被告人の供述によると、第二営業所には、本件当時の昭和五〇年三、四月ころ、内勤者として社員の久川、臨時職員の鈴木、山田(なお、同年六月ころ岸岡栄子が入社)がおり、被告人は受付にいて、第一営業所から回ってくる客の会員証及び有効期間を確認し、内勤者に物件紹介を担当させていたこと、内勤者には被告人において物件紹介にあたっての注意等をこまごまと指導していたこと、第二営業所にも家主台帳、家主整理カードその他業務上必要な帳簿、書類等が備えられていたこと、昭和五〇年一月から同年一二月まで、あるいは昭和五一年一月から同年一二月までの取引件数は、それぞれ約一、〇〇〇件で、会員七、非会員三ぐらいの割合であり、第一次紹介で成立したものは三、四割ぐらいであると述べていること、関係証拠によると、被告会社の取引件数は、昭和四七年度(昭和四七年一一月一日から同四八年一〇月三一日まで)六〇二件、昭和四八年度(昭和四八年一一月一日から同四九年一〇月三一日まで)七一二件であるので、昭和五〇年以降における被告会社の取引件数は一段と増加しており、前記成立割合からいえば、第一営業所関係が約三~四〇〇件、第二営業所関係が約六~七〇〇件ということになり、第二営業所における成立件数が圧倒的に多く、従って、第二営業所設置後は、被告会社内における業績の比重も第二営業所に移行している状況が窺えるので、以上の諸事情を考え合わせれば、被告会社の媒介業務は、第一のほか第二営業所においても独立して行われていることが明らかである。

2 第二営業所の分室性及び業務の一体性について

被告人の上申書によると、被告人は、第一営業所の狭あいなところから、紹介物件の整理、空室情報の組織化のため、昭和四九年五月ころから九月ころまで吉田ビルの一室を、昭和五一年三月初ころには唐橋ビルの一室をそれぞれ借り、その後、同月一三日付をもってニュー西村ビルの一室(本件第二営業所)を借り受けてようやく落着いたこと、そもそも、西村ビルはシーズンオフになると福祉サービスと来年度のための物件整理等の準備をしている程度のもので、その他には、第一営業所で会員と家主間の契約が成立した後の関係書類の授受等の手続と、その後の会員の福祉、情報提供、貸間紹介等のアフターサービスを行うところにすぎないので、第一と第二営業所は、玄関と奥の間の関係にあると述べている。

しかしながら、関係証拠によると、被告会社が、吉田ビル及び唐橋ビルの一室を借りたことは窺えるけれどもその使用形態は、原判決も前記「争点判断」で指摘しているように、吉田ビルでは、単に新物件開拓のための家主に対する問い合わせ等宣伝用文書の作成及び台帳整理等に利用したにとどまり、客に対する媒介業務を行っておらず、執務場所の拡張たる性質を有していたこと、また、唐橋ビルは、家主側の申出により極めて短期間で解約しその使用形態が明らかでないのみならず、実際に使用されたかどうかも明確でない。他方、本件西村ビル内第二営業所は、通行人等に配布した被告会社のチラシにも「高田馬場第二営業所」と明記し、「貸間学生協会各営業所御案内図」中にも、その所在地を図示していること及び前記(一の1)の使用形態等に徴すれば、右第二営業所は、単なる執務場所の延長、すなわち、分室ではなく、被告会社の媒介業務を分担して行う事業の拡張場所、すなわち、独立した事務所たる性格を有することは否定することができないというべきである。この点に反する被告人の供述は、前記各ビルにおける以上のような本質的差異を無視するもので採用できない。

ところで、所論の業務の一体性は、第二営業所が分室であるとする主張を骨子とするものであるが、被告人の供述に徴すると、被告会社は、会員制度を採用し、新規の客に対しては、もっぱら第一営業所で扱い、かつ、第一次の物件紹介を行なうこと、第二営業所では第二次以降の物件紹介を行うに過ぎないこと、第二営業所も被告人が業務を統轄し、その指揮命令系統に属すること及び貸間の賃貸借契約が成立するまでを一業務としていることなどの点から業務の一体性を主張し、同時に第二営業所の独立機能を否定しようとする面も窺われないではない。

しかし、企業が、その組織上、各営業所に業務及び地域等を分担させ、相互に補完、協同させることは、各営業所の独立性の有無に拘らず、一般的にみられるところであって、被告会社のように小規模組織で、各営業所等も近く、第一営業所の狭あいな場合においては、各営業所間の業務分担と連繋が一層密接な関係をもつことも何ら異とするに足らないうえ、被告人は、第一営業所の専任の取引主任者であるとしても、被告会社の実質的経営者である以上、各営業所の業務を指揮、監督することは当然のことであり、また、媒介行為それ自体は、当事者間の契約の成否によって消長を来すものではないから、右のような組織及び業務の流れの一体性をもって、それが直ちに、第二営業所の独立機能を否定する論拠となりうるものではない。

3 業法上の事務所性について

そこで、問題は、第二営業所が果して、宅地建物取引業法上事務所たる機能を有していたか否かの点にあるので、さらに検討する。

業法上の事務所については、法三条一項、同法施行令(以下令という。)一条の二に規定するところであるので、本件では、第二営業所が令一条の二第二号に掲記の「継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの」に該当するか否か、ということになる。そして、右第二営業所が継続的に業務を行うことができる施設を有する場所であることは明らかである。しかして、右にいわゆる「使用人」とは、令二条の二で「宅地建物取引業者の使用人で、宅地建物取引業に関し…事務所の代表者であるもの」と規定しているので、契約締結権限を有する者が事務所の代表者というわけである。そして、右事務所の代表者が、会社の代表権限を有する代表者ないし取締役あるいは支配人等に限定されるものでないことは「事務所の代表者」という文言に徴し、明らかなところである。

被告人は、昭和五〇年三月一七日、免許権者である都知事に対し、有限会社貸間学生協会代表者安部喜代子名義をもって、従たる事務所新設に伴う宅地建物取引業者名簿登載事項の変更、届書を法九条に従って提出しているが、その際、「専任の取引主任者」及び「政令で定める使用人」として樺山良久を届出ていることが認められ、しかも、原審証人戸成公伸の証言をまつまでもなく、右使用人が取引主任者を兼ねうることは当然であるから、右第二営業所は、業法上事務所たる機能及び形式を具備しているといわなくてはならない。

(草野 高山 油田)

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