大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(う)1700号 判決

被告人 権在根

〔抄 録〕

所論は要するに、原判決は、被告人が単独で、ないし原審相被告人阿部和好と共謀のうえ、変造した郵便貯金通帳を用いて払い戻しを受け、(または受けようとした各金員の全額について詐欺罪、または同未遂罪が成立すると認定したが、原判決が認定した右騙取した、または未遂に終った金額中には被告人および阿部和好(以下単に「被告人ら」ということがある)が正規に預金した金員も含まれているので、被告人らには右預金額については正当な払い戻し請求権があり、したがって本件においては被告人らが払い戻しを受け、または受けようとした金額から被告人らが正規に預金した金額を差し引いた金額についてのみ詐欺罪、または同未遂罪が成立すると解すべきであるから、原判決には騙取金員額の認定について誤認があり、右誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。

そこで検討してみるに、関係証拠によれば、被告人らは、本件各犯行に先立ち犯行の準備のため、手分けして多くの郵便局に出向き、偽名で一、〇〇〇円ないし一万円を預金し、その旨記載された貯金通帳多数(合計六〇通以上)を受け取り、被告人において右入手した貯金通帳のうち四八通について預入れ欄、残高欄がそれぞれ五一万円ないし七五万五、〇〇〇円となるように改ざんして変造したうえ、被告人らにおいて郵便局に出向き、右変造した貯金通帳を提出して預金の払い戻しを求め、担当係員から身元の確認を求められると、貯金通帳の名義人に合わせてあらかじめ作成しておいた虚偽の身分証明書を示すなどして、原判示認定にかかる金員の払い戻しを受け(合計六〇回、利得額合計一、八一〇万円)、または払い戻しを受けようとしたが未遂に終った(合計三回)ことが認められるのであって、右のような被告人らの準備行為、正規に預金した金員に比し変造した預金額が極めて高額であること等に照らすと、被告人らの本件郵便貯金の払い戻し請求は、正規に預金した金員の払い戻しを受けるためではなく、もっぱらその変造した分から預金払い戻し名下に金員を騙取しようとして行なわれたものであることが明らかであるから、本件においては被告人らが払い戻し金名下に交付を受けた金員の全額について詐欺罪が成立すると認めるのが相当である。

(小松 千葉 鈴木)

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