大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(う)2056号 判決

被告人 宮森啓介

〔抄 録〕

右の事実関係によると、麻薬取締法違反の関係では被告人は、覚せい剤取締法四一条二項の罪を犯す意思で、結果的には麻薬取締法六四条二項の罪を犯したことになる。そこで、右両罪の異同についてみるに、両罪はともに、中毒性、習慣性を考慮し、その濫用による保健衛生上の危害を防止することを目的としているうえ、構成要件の形式もきわめて近似するなど、その罪質を同じくし、法定刑もまったく同一であるから、これらの点を考慮すると、被告人が麻薬を覚せい剤と誤信していたとしても、被告人に前記麻薬取締法六四条二項の罪の責任を負わせるのが相当であると解される。したがって、この点について原判決には所論のような法令適用の誤りはない。

また、関税法違反の関係でこれをみると、被告人は客観的には関税法一〇九条一項の罪を犯したのであるが、被告人の認識を前提とすると、同法一一一条一項の罪の故意を有し、同項の罪を犯したにすぎないことになる(被告人が同条にいう許可を受けないで輸入しようとの認識を有していたことは関係証拠により明らかである)。ところで、関税法の立証趣旨(同法一条参照)をふまえて両罪の罪質をみると、両罪は規定形式を異にしているとはいえ、同法一〇九条一項は税関手続の面から社会公共の秩序、衛生、風俗、信用その他公益の侵害を防止することを目的としており、また、同法一一一条一項は関税行政上の秩序を維持し関税の徴収ならびに貿易統計上の正確を確保するとともに、多種多様化した各種密輸事犯を税関手続の面から把握し、これによって各種態様の事犯を全体として捕捉し取締の完璧を期することを目的とするものであり、いずれもその目的とするところは関税手続の適正な処理をはかることにあると解せられる。したがって、両罪は罪質を異にするとはいえないのであり、本件においては、被告人の認識の限度において、刑法三八条二項により、軽い関税法一一一条一項の罪で処断するのが相当であると解すべきである。そうすると、本件につき関税法一〇九条一項を適用処断した原判決にはこの点で法令適用の誤りがある。

しかしながら、関税法一〇九条一項を適用処断しても、あるいは同法一一一条一項を適用処断しても、本件においては、原判示第一の(二)、第三の(一)、(二)のように、他にも麻薬取締法違反の罪がある関係上、結局、処断刑に変動を生じないものというべきであるから、いまだ、右法令適用の誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。

法令適用の誤りの関係では以上のとおりであるから、その前提としての本件目的物の認識についての事実誤認自体もまた判決に影響を及ぼすことが明らかであるとは認められない。

(石崎 森 中野)

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