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東京高等裁判所 昭和52年(ネ)1654号 判決 1979年9月27日

控訴人 永井江理子

<ほか二名>

控訴人ら訴訟代理人弁護士 猪熊重二

同 山田正明

同 中西正義

被控訴人 横浜市

右代表者市長 細郷道一

右訴訟代理人弁護士 瀬沼忠夫

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  求める判決

(一)  控訴人ら

1  原判決中、被控訴人に関する部分を取消す。

2  被控訴人は控訴人永井江理子、同永井眞理子に対し各金六八七万〇一〇二円づつおよび各内金六五七万〇一〇二円に対する昭和四九年五月一六日以降右完済まで年五分の金員、控訴人永井高子に対し金九九七万〇一〇二円および内金九五二万〇一〇二円に対する昭和四九年五月一六日以降右完済まで年五分の金員をそれぞれ支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  第二項につき仮執行宣言。

(二)  被控訴人

主文第一項と同旨。

二  主張

当事者双方の主張は次に附加、訂正するほかは原判決事実欄第二中被控訴人関係部分記載のとおりであるから、それを引用する。

原判決一二枚目―記録三八丁―裏九行目の「蛇行進行させ、」を「蛇行進行させたことが唯一の原因となって、」と訂正し、次行に「3 同6項の損害の主張はすべて争う。」を加える。

三  証拠《省略》

理由

一  《証拠省略》によると請求原因1(本件交通事故の発生)が認められ、右認定に反する証拠はない。

なお《証拠省略》により認められる右事故の態様については次に附加、訂正するほかは原判決一四枚目―記録四〇丁―裏三行目の「本件道路は」から同一五枚目―記録四一丁―裏一行目の「転落させ」まで記載のとおりであるからそれを引用する

1  原判決一四枚目―記録四〇丁―裏三行目の「本件道路」の下に「(後記未舗装路肩部分を含まない道路の主要構造部分。以下同じ。)」を加え、同一〇行目の「かかり、進行方向の」を「かかった折柄、」とあらため、同行の「本件道路」の下に「西端(清水から見て左端)縁石より約二・七メートル中央に寄った道路上」を加え、同行の「左側」を削除する。

2  同一五枚目―記録四一丁―裏一行目の「転落させ」の次に「翌昭和四七年一一月二九日午前九時四八分死亡させたものである。」を加える。

二  請求原因5の(一)は当事者間に争いないが、同(三)のうち本件未舗装部分が歩道であることを認めるに足りる証拠はない。

ところで、本件未舗装部分が道路の一部分である路肩であるか否かは、国家賠償法二条一項所定の道路管理の瑕疵に基づく本件損害賠償請求訴訟においては控訴人らがその請求を理由あらしめるために主張(立証)すべきいわゆる主要事実の一つと解すべきであるが、控訴人らは、本件未舗装部分は歩道であり、そうでないとしても、少くとも路肩である、と主張し、被控訴人は原審昭和五〇年二月一三日第六回口頭弁論期日において、控訴人らの右主張を否認し、右未舗装部分は水路敷である、と主張し、その後、原審昭和五〇年一〇月七日第一〇回口頭弁論期日において、右未舗装部分は路肩(ないし保護地)である、と主張を変更、これにより少くとも本件未舗装部分が路肩であることについては裁判上の自白が成立した。ところが被控訴人は原審昭和五一年一二月七日第一九回口頭弁論期日において右自白を撤回し(この自白の撤回に際し、前記自白が真実に反し、錯誤によるものである旨の明らかな主張はないが、暗にこの主張はなされていると解するのが妥当である。)、再び右未舗装部分が路肩であることを否認し、水路敷である旨を主張し、控訴人らはこの自白の撤回に異議を述べた。

そこで右自白の撤回の効力について検討するに、本件未舗装部分は路肩ではなく、水路敷である(従って右自白は真実に反する)との被控訴人主張に副う《証拠省略》は、《証拠省略》によると、本件道路幅員は本来七メートルとされていることが認められるが、《証拠省略》によると、本件事故当時の本件道路の幅員は現実には六・五三メートルであったこと、および《証拠省略》によると本件事故当時の本件道路西端から西側水路西端までの幅員は二・九メートルであるが、右水路の本来あるべき幅員は不明であること(《証拠省略》によると被控訴人保管の道路台帳には本件道路および右水路の幅員が記載されているだろうとのことであるが、その提出はなされておらず、また被控訴人提出の乙第一号証(道路台帳平面図)には本件道路および右水路の記載があるが、それらの幅員は記載されていない。)、に照らすとたやすく採用できず、ほかに被控訴人の前記自白が真実に反することを認めるに足りる証拠はないから、右自白の撤回はその効力がないといわざるをえない。

そうすると本件未舗装部分が路肩であることは当事者間に争いがないということになる。

三  《証拠省略》によると、前記認定のように本件道路西側には道路から水面までの高低差約二メートル、幅員約二・九メートルの水路があるが、右道路と水路との境界部分にあたる位置に道路と同一平面をもって幅員約〇・三メートル強の未舗装の路肩部分とこれから水路水面に向って低くなる傾斜面からなる土の露出部分とが存したが、昭和四四年頃、道路本体西端より約〇・二メートル辺の右路肩上にガードレールが設置されたこと、本件事故現場付近は交通量が人車とも比較的多いところであるためかガードレールと道路本体までの右幅員〇・二メートルの未舗装路肩部分を通過車両を避けたり、あるいは歩行するのに利用する通行人があったこと、ところが本件交通事故発生の約半年前、右未舗装路肩部分は豪雨のため一〇数メートルにわたってガードレールともども崩壊して水路内に落ち込み、本件交通事故発生当時までその修復はなされず、崩壊状態のまま放置されていたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

四  しかし右未舗装路肩部分の崩壊状態の放置が被控訴人の道路管理の瑕疵に当るとしても、それと本件交通事故発生との間にいわゆる相当な因果関係がなければ被控訴人は賠償責任を負うことはないところ、控訴人らは右因果関係の存在を主張するが、この主張に副う《証拠省略》だけでは右因果関係を認めることはできず、また《証拠省略》によると、本件交通事故発生後、被控訴人は本件道路西側の水路を暗渠とし、その上を歩道として使用していることが認められるが、《証拠省略》によると、右工事は浸水対策と従来からの下水道整備工事の一環としてなされたことが認められるから、右事実をもって前記因果関係を認めることはできず、ほかに右因果関係を認めるに足りる証拠はなく、結局これを否定せざるをえないが、その理由は右に述べたほかは次に附加、訂正、削除したところによる原判決一八枚目―記録四四丁―裏三行目から四行目にかけての「前認定のとおり」から同一九枚目―記録四五丁―裏五行目の「相当因果関係はない」までと同じであるからそれを(右理由中で引用の他の理由記載を含む。)引用する。

1  原判決一八枚目―記録四四丁―裏六行目の「右歩行の位置」を「右歩行の位置およびもともと道路構造令(昭和四五年一〇月二九日政令三二〇号)二条一〇号によれば路肩は道路の主要構造部分を保護し、又は車道の効力を保つことを目的とするものとされているうえ、事実上歩行者が路肩を歩行、待避などに使用しえたとしても、前記認定のように崩壊前、人が待避、歩行に利用できた本件未舗装部分の幅員はわずか〇・二メートルにすぎず、この幅員からすると、待避の場合はともかく、歩行の場合は右路肩だけでの歩行は必ずしも容易とは思われないこと」とあらため、同八行目の「とか」から同一〇行目の「うとか」までを削除し、同一〇行目の「被害車」を「被害者」とあらためる。

2  同一九枚目―記録四五丁―表七行目の「ほぼ同じ方法で」を「同方向に向い、縁石より約二・七メートルも道路中央に寄って」とあらため、同裏四行目の「右未舗装部分」から次行の「因果関係はない」までを「右未舗装部分の崩壊状態を放置したことと本件交通事故発生との間には相当な因果関係はないといわざるをえない。」とあらためる。

五  そうすると他の点(管理の瑕疵、損害)を検討するまでもなく、控訴人らの本訴請求は理由がないことになるから、これを棄却した原判決は正当である。

よって本件各控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条本文、八九条、九三条一項本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉岡進 裁判官 手代木進 上杉晴一郎)

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