東京高等裁判所 昭和52年(ネ)1960号 判決
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【判旨】
<証拠>を総合すると、控訴会社が経営に当たろうとする足利マルニカントリークラブは、一般的な、いわゆる預託金会員組織のゴルフクラブであり、控訴会社が、入会を申し込んだ会員に対し、他の一般利用客よりも有利な条件でゴルフ場施設を利用して継続的にプレーさせることを約し、会員資格保証金の名目で一定額の金員を預託させ、一定期間無利息で据え置き、これを主要資金としてゴルフ場を建設しようとするもので、会員となつた者は、控訴会社に対し、右のようなゴルフ場施設の優先利用権と据置期間経過後の預託金返還請求権を取得し、別に年会費納入の義務を負うに至るものであることが認められる。被控訴人らが入会を認められて取得したゴルフ会員権とは、右のような権利義務を包括する債権契約上の地位にほかならず、その内容をなすゴルフ場施設の優先利用権と預託金及び年会費の納付とは、相互に対価関係に立つものと解される。
したがつて、被控訴人らから預託金を受け取つて入会を承認した控訴会社としては、被控訴人らに対し、入会に当たつて示された開場予定時以降は、会員としての優先的利用権を行使させるためゴルフ場施設を提供する義務を負うものというべく、開場予定時は、右利用権発生の始期たる期限を定める意味を持つものと解するのを相当とする。もつとも、ゴルフ場建設事業の性格上、また本件における開場予定時の示し方に照らし、開場予定時として示された昭和四九年一〇月の末日をもつてそのまま右期間に該るものと解すべきではなく、社会通念上相当として是認の得られる程度の遅延はこれを許容し、その間は履行遅滞の責を問うことはしない旨の暗黙の合意が含まれているものと解するのが、当事者の意思に合致するところと考えられるので、開場予定時から右相当期間を経過した日をもつて最終期限たる開場日と定めたものと解するのが相当であるが、右許容期間は、原判示のとおり昭和四九年末を超えるものではないとしてよく、いわんや、被控訴人らが本訴をもつて入会契約解除の意思表示をした昭和五一年八月頃までもの著しい遅滞をも許容する趣旨とは、到底解することができない。右解除の前提として催告のなされたことは被控訴人らの主張しないところであるが、入会に当たつて定められた前記開場期限をすでに一年半以上も経過し、しかも、<証拠>によると、九ホールを五一年内に仮オープンするというのが当時控訴会社の公表した最大限の見通しであつたと認められること(それすら果されず、現在に至つていることは、控訴人の当審において自認するところである。)に徴すると、催告しても早急に控訴会社の遅滞を解消しうる可能性は全く無い客観的状況下にあつたことが認められるので、催告を経ることなくなされた契約解除でも、有効と認められるべきである。
控訴人は、開場の遅滞によりゴルフ場でプレイすることができないことと会員資格保証金の預託に関する契約関係とは別個の問題であつて、解除が認められるべきでないと主張するが、さきに説示したような会員権たる地位に包括される両者の関係に徴し、所論は採用の限りでなく、控訴会社が入会に当たつて定められた開場期限を過ぎてもゴルフ場を建設しえず、被控訴人らの優先的利用のためゴルフ場施設を提供する義務の履行を遅滞している以上、被控訴人らは、不可分的内容をなす保証金預託に関する約定を含めて入会契約を解除し、預託金の返還を求めうるものといわなければならない。
(高津環 横山長 三井哲夫)