大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和52年(ネ)2015号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

四下水道負担金不払による解除について

<証拠>によると、清水市においては、控訴人が主張する市条例によつて、昭和四五年度以降公共下水道の排水区域内の土地所有者又は賃借人に、下水道事業費の一部を負担させており、本件土地についての負担金は控訴人主張の金額(但し、二二〇番一の土地全体についての負担金を、面積に応じて割つた金額である。)であつて、これを控訴人が清水市に納付している事実が認められる。

控訴人は、控訴人が昭和四八年四月一八日付文書で、被控訴人に右負担金の支払を催告したと主張し、<証拠>によれば、右文書から読取れる趣旨は、「昭和四五ないし四七年分の下水道負担金はすでに控訴人が支払つたので、この分は昭和四八年一月以降の賃料増額により回収する。被控訴人は四八年度以降の負担金年額六、七九六円を、賃料に加算して控訴人に支払え。」というにあることが認められる。右文書が昭和四八年四月一九日に被控訴人に到達したことは、前出同号証の二によつて明らかである。

被控訴人は、被控訴人が右催告に応じて負担金を供託ずみである旨主張する。被控訴人が賃料として昭和四八年の分一万円、四九、五〇年分の各八万円、五一年以降の分年一二万円を、それぞれ供託していたことはすでに認定した。しかし右各供託金が下水道負担金を含まないことは、<証拠>によつて認められるところであるから、被控訴人の主張はとりえない。

しかしながら、元来、控訴人主張の下水道負担金は、賃貸借の成立要件たる賃料とは異なり、土地賃借人と清水市との関係で生ずる債務であるから、負担金を賃貸人が立替え支払つたにもかかわらず、賃借人がその弁償を怠る場合、その債務不履行がただちに賃貸借契約解除の原因となりうるか否かは、当該債務不履行が賃貸借契約の継続を阻害する程度に重要であるか否かを検討し、これを肯定するに足る特段の事情の有無によつて決すべきものと解される。これを本件について考えると、

1 昭和四八年の分は別として、四九年以降の被控訴人の年間賃料供託額と、控訴人が請求する右負担金額を比べた場合、後者は極めて僅かなものであり、控訴人が賃貸借契約解除の意思表示をした日までに立替え支払つた金額を合計しても、五年間に三万四千円弱に過ぎないことが明らかである。

2 さきに認定したとおり(判決理由三、(一)1、(二)23)、控訴人と被控訴人の間では、昭和三八年以来控訴人からの明渡請求が反覆して行なわれ、被控訴人はその頃から賃料の供託を続け、昭和四八年四月には控訴人の賃料増額及び負担金支払請求、同年五月には控訴人の契約解除の意思表示と被控訴人の賃料改訂調停申立、昭和五〇年六月には控訴人からの本訴の提起が、相次いでされるという状態であつた。かような起伏に富む経緯を考えれば、被控訴人が控訴人からの負担金請求に即座に応じなかつたことも、無理からぬものと思われ(弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、前記調停及び本訴において抜本的解決をはかる意思であつたことが推測される。)、重大な債務不履行とみるのは相当でない。

3 以上の諸点を総合判断するに、被控訴人が下水道負担金の支払を遅滞したことは、本件賃貸借契約解除の独立の原因とするに足る特段の事情には当らないというべきである。従つて、控訴人の再抗弁(三)は採用しがたい。

(吉岡進 吉江清景 上杉晴一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!