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東京高等裁判所 昭和52年(ネ)359号 判決 1978年1月30日

控訴人(附帯被控訴人) 豊田茂

控訴人(附帯被控訴人) 豊田節子

右両名訴訟代理人弁護士 新井藤作

同 安西勉

被控訴人(附帯控訴人) 早川子之吉

右訴訟代理人弁護士 菊池武

同 松田政行

同 三木茂

主文

本件控訴と附帯控訴とをいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)らの、附帯控訴費用は被控訴人(附帯控訴人)の各負担とする。

原判決主文第二項中「昭和五一年一一月二三日」とあるを「昭和五二年一〇月一三日」と訂正する。

事実

控訴人(附帯被控訴人、以下単に控訴人という)らは、「原判決を取消す。控訴人らが被控訴人(附帯控訴人、以下単に被控訴人という)に賃貸している原判決添付の別紙物件目録記載(一)及び(二)の土地の賃料は、昭和五〇年二月一日以降月額金九万円であることを確認する。被控訴人は控訴人らに対し金七三五万円及びこれに対する昭和五〇年一月一六日から右完済まで年五分の金員を支払え。本件附帯控訴を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求め、附帯控訴として、「原判決主文第一、第四項を取消す。控訴人らが被控訴人に賃貸している原判決添付の別紙物件目録記載(一)及び(二)の土地の賃料は、昭和五〇年二月一日以降月額金六万円であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(控訴人らの主張)

一、控訴人らと被控訴人との間の本件賃貸借契約においては、たまたま更新料について契約書に記載しなかったが、更新料を請求できるとする黙示の合意が存在していたものである。

二、仮に右合意の存在が認められないとしても、更新料支払いの合意があれば法定更新の場合でも更新料の請求が許容されるのに、たまたまその合意を欠くだけで更新料の請求が許されないとするのは不当な差別であり、憲法一四条の趣旨に反する。

三、さらに、被控訴人は、本件土地上にアパート二棟を所有し、相当の収益をあげ、かつ自らはアパートの賃借人に対し更新料の請求をしているのであって、本件賃貸借契約について更新料の支払いを拒絶するのは信義則に反し許されない。

理由

一、原判決理由一ないし四に判示するところは、左に付加、訂正するほかは、当裁判所の認定、判断と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一〇丁表三行目の「乙第七号証」の次に「の鑑定評価額」を加え、同四行目の「適正賃料を評価する資料」を「賃料の相当額」と、同七行目から八行目にかけての「本件土地の適正賃料の評価について本件鑑定を基礎とし」を「まず」と改める。

2  同丁表末行の「実際支払賃料」から同丁裏四行目の末尾までを削り、そのあとに次のとおり加える。

従来の賃料(実際支払賃料)に加算する方法により、本件土地の昭和五〇年二月一日時点における適正賃料を試算することとする。

3  同一二丁表一行目から二行目にかけての「となるから」から六行目の末尾までを「となる。」と改め、その次に行を変えて次のとおり加える。

次に、近隣の土地の賃貸事例に基づく比準賃料を検討する。

本件鑑定の結果によれば、本件土地の近隣地域における土地の賃料(継続賃料)は月額大体一平方メートル当たり六〇円から八五円(三・三平方メートル当たり約二〇〇円から二八〇円)の範囲内にあって、中間値七三円(三・三平方メートル当たり約二四〇円)以下に集中している傾向がみられるが、本件土地の場合はアパートや小売店舗等の収益的建物の敷地として利用していること等を勘案して、七三円又はこれを若干上回る程度が妥当であるとされている。しかし、右鑑定の結果に掲記されている賃貸事例のうち、放射三号線道路に接面していると認められる土地の賃貸事例(記号イ及びハ)においては、昭和四八年以降の賃料が月額一平方メートル当たり七五・六二円又は八四・七〇円(三・三平方メートル当たり約二五〇円又は二八〇円)であることをも考慮すれば、本件土地の位置、形状(本件土地は、既に認定したとおり、放射三号線道路に西面しているが、本件鑑定の結果によれば、西側の間口は約二三メートル、東西の奥行は約三三メートルで、北側が側道に接するやや不整形の二方路画地であることが認められる。)を考慮に入れても、本件土地の昭和五〇年二月一日時点における比準賃料は、月額一平方メートル当たり八〇円(三・三平方メートル当たり二六四円)又はこれを若干上回るものとみるのが相当である。

よって、当裁判所は、以上に検討した結果を総合して、本件土地の昭和五〇年二月一日時点における一か月の賃料の相当額を八万一〇〇〇円(三・三平方メートル当たり約二七〇円)と判断する。

4  同一二丁裏八行目の「結局」から末行の末尾までを削り、そのあとに次のとおり加える。

しかも、更新料が賃貸人の一方的要求に基づき賃借人の義務として支払われている事実は、これを認めるに足りる証拠がないから、控訴人(原告)主張のごとき慣習法ないし事実たる慣習の存在は認めることができない。なお、借地法四条一項本文又は六条一項本文の規定が適用される、いわゆる法定更新の場合には、賃貸人の承諾を必要とすることなく、かつ賃借人になんらの金銭的負担を課することなくして契約更新の効果を借地人に享受させるのが借地法の趣旨とするところであると考えられるので、前述のように借地人から賃貸人に更新料が支払われるのは、通常、契約当事者双方の合意に基づく更新料の授受を附款とする合意更新の場合であって、例外としては、法定更新の後における特別の合意によってその支払がなされることも考えられるが、いずれにしてもそれは契約当事者双方の合意に基づくものであるというべきである。

そこで、控訴人らの当審における主張(弁論の全趣旨により被控訴人はこれを争うものと認められる)について検討するに、一については、控訴人らと被控訴人との間に更新料の支払いにつき黙示の合意が存在したことを認めるに足りる証拠がない(《証拠省略》によれば、本件賃貸借契約の更新に際し、被控訴人は更新料一〇〇万円の支払を申入れたが、控訴人らがこれを受け入れなかった事実が認められるが、この事実のみでは右当事者間に更新料の支払につき黙示の合意があったものと認定することはできない。)。二については、更新料は、前述のように、当事者間の合意に基づいて支払われるものであるから、その支払につき合意のある場合と合意のない場合とを同一に論ずることはできない。また、三については、被控訴人がアパートの賃借人に対し更新料を請求した事実を認めるに足りる証拠がないのみならず、仮りにそれが認められるとしても、被控訴人に更新料支払の義務を生ずるいわれがない。

二、そうすると、控訴人らの本訴請求中賃料額の確認を求める部分につき昭和五〇年二月一日以降月額八万一、〇〇〇円の限度でこれを認容し、更新料の支払を求める部分につきこれを棄却した原判決は相当であり、本件控訴及び附帯控訴はいずれも失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、九三条、八九条を適用し、なお、本件控訴により本件口頭弁論終結時に変更を生じたので、原判決主文第二項中「昭和五一年一一月二三日」を「昭和五二年一〇月一三日」と訂正することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 川島一郎 裁判官 小堀勇 小川克介)

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