東京高等裁判所 昭和52年(ネ)711号 判決 1981年11月12日
控訴人(原告) 沼澤繁作
被控訴人(被告) 石川島播磨重工業株式会社
主文
本件控訴を棄却する。
控訴人の当審で拡張した請求を棄却する。
当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。
事実
第一求める判決
一 控訴人
1 原判決を取消す。
2 控訴人が被控訴人に対して雇傭契約上の権利を有することを確認する。
3 被控訴人は控訴人に対し金二、四九一万四、七九八円及び昭和五六年一月一日から毎月二五日限り一カ月金二二万三、八七五円の割合による金員を支払え(但し、金九七二万九、二一五円及び昭和五一年三月一六日から毎月二五日限り一カ月金一六万一、四八二円の割合による金員を超える金員の支払を求める部分は当審において請求を拡張したものである)。
4 訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
5 仮執行の宣言。
二 被控訴人
主文第一、第二項と同旨。
第二主張
当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決事実摘示第二主張欄の記載と同一であるから、これを引用する。
一 控訴人
別紙(二)記載の計算方式により控訴人の賃金、夏期及び年末一時金の額を計算すれば、別紙(一)記載のとおり昭和五五年一二月一二日における賃金は一カ月金二二万三、八七五円であり、同四五年七月九日から同五一年三月分までの合計額は原判決添付別表記載のとおり金九七二万九、二一五円、同年四月分(同年三月分の差額を含む)から昭和五五年一二月一二日までの合計額は賃金一、一五八万八、七八三円、一時金三五九万六、八〇〇円(総計金二、四九一万四、七九八円)である。
よつて、被控訴人に対し支払を求める金員は第一主張一、3記載の金員である(請求の拡張)。
二 被控訴人
前記一の事実中、計算関係及び方式が控訴人主張のとおりであることは認めるが、その数額は争う。
第三証拠<省略>
理由
当裁判所も控訴人の本訴請求(当審で拡張した請求を含む)は理由がなくこれを棄却すべきであると判断するが、その理由は次に付加、補正するほか原判決がその理由として説示するところ(原判決二一枚目―記録四四丁―表二行目冒頭から同三五枚目―記録五八丁―裏九行目の「棄却し」まで)と同一であるから、これを引用する。
一 原判決二三枚目―記録四六丁―表四行目の「飯田光一」の後に「、当審証人三田弘文」を加え、同裏三行目の「特別視していなかつたこと」を「特別視することなく事故欠勤として処理していたこと」と改める。
二 原判決二四枚目―記録四七丁―表一一行目の「あること」の後に「を」を加える。
三 原判決二五枚目―記録四八丁―表七行目の「第一七号証、」の後に「成立に争いのない乙第二二号証、」を、同表一〇行目の「一二号証」の後に「、当審証人三田弘文の証言によつて成立を認める乙第二一、第二六号証」をそれぞれ加え、同行の「同証人の証言」を「右両証人の各証言」と、同裏三行目の「四一条」を「四〇条」とそれぞれ改め、同行の「四二条、」の後に「労働協約二七条、」を、同裏四行目の「合併により」の後に「必要となつた」をそれぞれ加え、同四、五行目の「必要を生じたが」を「際」と、同八行目の「これを参考として」を「被控訴会社がこれを参考として、同制度を採用する方向で作成した新就業規則案について労使間で検討がなされ」とそれぞれ改め、原判決二六枚目―記録四九丁―表三行目の「三月六日」を「三月一六日」と改め、同裏一一行目の「認められ、」の後に「当審証人佐藤芳夫、同山田紘一の各証言中右認定に反する部分は前記各証拠に照らし採用し難く、」を加える。
四 原判決二八枚目―記録五一丁―表五行目の「できない。」の後に「なお、労基法二〇条の解雇の予告の規定は、労働契約が終了すべき時を明確に指示すべきことを要求した趣旨であるから、一カ月の休職期間を設定して一定期間経過の時点で雇用契約終了の効果を生ずる旨を定めた本件「事故欠勤休職」制度は、右規定に違反するものではない。」を加え、同表七行目の「前記」から同裏二行目の「のみならず、」までを「そもそも」と改める。
五 原判決三〇枚目―記録五三丁―裏八行目の次に行を替えて次のとおり加える。
「さらに、控訴人は、被控訴会社における事故欠勤休職制度は、その制度の趣旨において刑事事件によつて逮捕勾留されたことによる欠勤の場合を予定していないと主張するが、前掲大堀証人、三田証人の各証言によれば、被控訴会社において初めて事故欠勤休職制度をとり入れた新就業規則制定の前後を通じ、同制度については旧播磨時代の機械的適用の取扱いを踏襲するということで労使間に異論がなく、逮捕勾留による欠勤の場合には特別扱いにするとか、右制度を適用しないとかの論議はなされなかつたことが認められ、前掲佐藤証人、山田証人の各証言中これに反する部分はにわかに信用することができず、他に控訴人の右主張事実を認めるに足りる証拠はない。従つて、控訴人の右主張は採用できない。」
六 原判決三一枚目―記録五四丁―裏一一行目の「いたつて」を「いたつた」と改め、同三二枚目―記録五五丁―表一行目の「大堀証人及び飯田証人」を「前掲大堀証人、飯田証人及び三田証人」と改め、同表三行目の「規定については、」の後に「播磨造船の労働協約二五条の『休職を命ずる』、同二六条の『休職を命ずることがある』との二か条の規定を一括して一か条とし『休職させることがある』と規定したが、」を、同裏一行目の「なかつたこと、」の後に「被控訴会社は従業員に対しこの趣旨の周知徹底方を図り、新規採用の従業員に対しては入社の際に詳細な説明を行つていたこと、」を、同裏一一行目の「認められる。」の後に「佐藤証人、山田証人の各証言中右認定に反する部分は前掲各証拠に照らし採用できない。」をそれぞれ加える。
七 原判決三三枚目―記録五六丁―表八行目から九行目にかけて「認められるのであつて」とあるのを「認められ、成立に争いのない甲第七八号証の記載もこれを左右するものではなく」と改め、同表九行目の「妨とならないし、」の後に「また原本の存在及び成立について争いのない甲第七五号証(但し、末尾の佐藤芳夫名義の記載部分を除く)の記載によれば、被控訴会社は昭和五三年三月二五日付の書面により従業員西沢遠吉に対し、同人が同年四月二五日をもつて休職期間を満了して従業員の資格を喪失する旨を通知したことが認められるが、同号証中の休職期間が六年である旨の記載によればこれが業務外傷病休職の場合であつて本件事故欠勤休職とは異なることが明らかであり、成立に争いのない甲第七六号証の記載によれば、被控訴会社は昭和二八年九月二九日付の書面により組合事務に専念中の従業員大多和彦二に対し就業命令を発する旨同人の父大多和彦吾宛に通知したことが認められるが、これは本件事故欠勤休職制度の制定前の事例であり、さらに、前段囲みの部分について成立に争いのない甲第一一九号証の上記部分の記載によれば、被控訴会社が昭和五五年一一月三〇日従業員某に対し、同人が同年一二月三一日付で退職する旨を通知したことが認められるが、右文面上から明らかなようにこれは定年退職者に対する事例であり、右三例はいずれも本件のような事故欠勤休職の場合の参考事例とするには適切ではなく、」を加え、同裏二行目の「にかかわらず」から同四行目の「とらない限り」までを「場合には、右文言の通常の用例にもかかわらず」と改め、同六、七行目の「そのとおり」の後に「機械的」を、同裏七行目の「相当である。」の後に「そして、被控訴会社が従業員に対し右の趣旨の周知徹底方を図つていたことは前記認定のとおりであり、従業員も同規定に該当する事故欠勤があつた場合には、このような扱いを受けるべきことを予測できたものというべきであるから、「事故欠勤休職」処分をするに当り、被控訴会社が当該従業員に対しその旨の通知をする必要はないというべきである。」を加える。
八 原判決三四枚目―記録五七丁―裏八行目の「の証言」とあるのを「及び三田証人の各証言」と改め、同三五枚目―記録五八丁―表一行目の末尾の「及」から同五行目の末尾までを削り、同表九行目の「証拠はない。」の後に「三田証人の証言によつて成立を認める乙第二七号証の一の記載によれば、『事故欠勤休職』扱いについて東京地区には該当なしとされていることが認められるけれども、相生地区と東京地区とではその地域的特性から従業員の流動性に差異があることは経験則上明らかであるから、東京地区に該当者がなかつたからといつて直ちに前記認定を左右することはできない。」を、同裏三行目の「ない。」の後に「また弁論の全趣旨により成立を認める甲第八七号証の記載及び当審証人佐藤芳夫の証言によれば、前記渡辺金司の例と同時期に被控訴会社従業員松尾信男がメーデー事件に関連して長期間にわたり逮捕勾留されて欠勤したことが認められるが、同人に対する被控訴会社の措置を検討するまでもなく、時期的にみて、前記渡辺の場合と同様、本件の場合の先例となりえないことが明らかであり、また、弁論の全趣旨により成立を認める甲第九五、第九六号証の記載も前掲各証拠に照らし採用するに足りない。」をそれぞれ加える。
九 原判決三五枚目―記録五八丁―裏八行目の「本訴請求」の後に「(当審で拡張した請求を含む)」を加え、同九行目の「棄却し、」を「棄却すべきである。」と改める。
よつて、これと同旨に出た原判決は相当であり、本件控訴及び控訴人の当審において拡張した請求はいずれも理由がないからそれぞれ棄却することとし、当審における訴訟費用の負担につき民訴法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 岡垣學 手代木進 吉江清景)
別紙(一)、(二)<省略>