大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(行ケ)176号 判決

本件商標と引用商標とは、審決で認定されているとおりのものであるが、両商標は外観上類似しているというべきであるから、これらを非類似とした審決の判断は誤りであり違法であつて取消されなければならない。

両商標が外観上類似している理由は次のとおりである。両商標を対比すると、両商標ともゴシツク体の大文字からなり、本件商標の七文字に対し引用商標は六文字であり、両商標とも前半部の「SIN」の三文字および後半部の二文字「ER」を共通にしており、相違するのは中間部の「CL」と「G」である。しかし、「C」と「G」とは外観上類似しているから、結局両商標の実質上の相違点は、「L」の有無であるということができる。「L」は本件商標の中間にあつて、その有無はあまり意識されない。それに引用商標が世界的に著名であることを考慮にいれ、両商標を時、所を異にして、離隔的に観察するときは、両商標は外観上極めて紛らわしく、取引者、需要者が両商標を混同するおそれがあるといえる。それにまた本件商標の中間の文字「CL」は、引用商標の中間の文字「G」と混同される可能性があるともいえる。したがつて両商標は外観上類似の商標である。

被告は、適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面も提出しない。

よつて、被告は原告主張事実を自白したものとみなし、この争いのない事実によれば、本件審決には原告主張の違法があることになるから、原告の本訴請求を正当として認容する。

〔編註〕 本件における事実関係は左のとおりである。

特許庁における手続の経緯

被告は、登録第九八〇二〇一号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である。本件商標は「SHNCLER」の文字を横書にした構成からなり、第九類ミシンを指定商品として昭和四〇年一一月一二日登録出願され、昭和四七年九月一三日登録された。

原告は、昭和四八年五月一四日特許庁に対し、被告を被請求人として本件商標につき登録無効審判を請求し、同庁昭和四八年審判第三二〇〇号事件として審理されたが、昭和五二年六月二日「請求人の申し立ては成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は、出訴期間として三か月を附加する旨の決定とともに同年六月二五日原告に送達された。

審決の理由

本件商標は前項のとおりのものである。

ところで請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第一二七三五一号商標(以下「引用商標」という。)は「SINGER」の文字を横書にした構成からなり、旧第一七類裁縫機械を指定商品として大正九年一一月一九日登録出願され、大正一〇年四月六日登録され、その後昭和二四年七月一一日および昭和四五年四月二七日それぞれ商標権存続期間更新の登録がなされているものである。

そこで両商標を対比すると、本件商標から「シンクラー」の称呼が、引用商標から「シンガー」の称呼がそれぞれ生ずる。そしてこの両称呼は、前半部において「シン」の音を共通にするが、比較的簡潔な全体の音構成中、後半部において「クラー」と「ガー」の顕著な差異があるから、両者は語感、語調の明らかに異なる別異の称呼といわなければならない。

請求人は、前記「クラー」の音は一体となつて聞え、「ガー」の音と類似関係にあると主張するが、「クラー」の音が一体となつて一音の如く聴取され、しかも、それが「ガー」の音に対応してこれと明らかには聴別し難い類似の音であると判断すべき特段の事情は見出せない。

つぎに、本件商標は格別の観念を有しない造語と認められるものであるから、「歌手」の観念を生ずることの明らかな引用商標とは、観念上類似するものではない。

また、両商標の構成をみると、構成文字において「C」と「G」、および「L」の文字の有無の差があるから、通常の注意力をもつてすれば、その差異は明らかに認識しうるもので両者を見誤まるおそれはないものというべきである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念、外観のいずれにおいても異なる非類似の商標と認められる。

したがつて、本件商標は、商標法四条一項一一号に違反して登録されたものではなく、同法四六条一項一号によりその登録を無効とすることはできない。

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