東京高等裁判所 昭和52年(行ケ)215号 判決
一 請求原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。そこで、原告主張の審決取消事由の存否について、判断する。
二 第一引用例に、「四六重量%のポリウレタン弾性長繊維又は二八重量%ないし三三重量%のゴム条の芯糸と、これを螺旋状に取り囲むマルチフイラメント糸からなる鞘糸とよりなり、弛緩状態においては上記鞘糸のフイラメント糸が膨んで多数の輪及び弧を形成することを特徴とする弛緩状態で嵩高な弾性複合糸」の記載があること、第二引用例の記載内容が審決認定のとおりであること、第三引用例に、「連続フイラメント」を芯糸とするものについて、審決認定の記載があること、本願発明と第一引用例のものとの対比において、相違点として、(1)鞘糸が、前者では短繊維粗糸よりなるのに対し、後者ではマルチフイラメント糸よりなる点、(2)芯糸が、前者では四〇重量%以下であるのに対し、後者では四六重量%である点、(3)複合糸の伸張状態における撚係数が、前者では二ないし四であるのに対し、後者では具体的には記載されていない点が存すること、以上の事実は当事者間に争いがない。
成立に争いのない甲第五号証(本願発明の特許公報)によれば、本願発明の解決課題及び目的は、次のとおりであることが認められる。
「現在知られているバンロン商標名及びヘランカ商標名のような弾性高嵩性糸は、捲縮もしくは撚り及び固定の技術を用いて製造される。この種の糸は、伸張特性は満足すべきものであるが、収縮力が小さい。
弾性糸は、また、多数の平行な繊維を伸長したゴムの芯に接着させることによつても製造されている。このものは、撚りのない繊維の一本一本が、その長さの二点あるいはそれ以上の点で芯に接着され、芯が弛緩するとき輪あるいは彎曲部ができるように形成されている。生成する糸は、高嵩性を有するが、その製造方法が複雑であり、また、接着剤を施すための特殊な装置を必要とする。
過去において、ゴムの芯は、多くの理由、中でも外観、よい手触り、ゴム芯の光、発汗及び脂に対する保護ならびに複合弾性糸の伸長の制御などの目的で被覆された。例えば、ラトンという商品名で知られる滑らかな弾性糸は、有嵩紡糸法で予め撚つたゴムの芯を用いることにより製造される。このようなゴム糸は、ヘランカ型の高嵩性糸よりも、かなり高い収縮力を有するが、現在までのところでは、有嵩紡糸法においてゴムの芯を用いることにより、本発明のような嵩高な弾性糸を得た例はない。さらに、デニールで約三〇〇以下のゴムフイラメントは、市場で入手できないという事実により、ゴムの芯を有する複合糸の細さには厳しい制限が課せられる。
本発明の最も重要な目的は、高嵩性の弾性糸を提供することであり、他の重要な目的は、複雑高価な工程を必要としない簡単な方法によつて、高嵩性、低デニールの弾性糸を提供することである。」
(原告主張の審決取消事由1について)
成立に争いのない甲第二号証(第二引用例)によれば、第二引用例の複合糸は、芯糸がゴム糸であり、その芯糸が鞘糸により被覆された弾性糸であるが、弛緩状態時に嵩高性を示すものではないことが認められる。すなわち、甲第二号証には、その複合糸が嵩高であるとの記載はなく、できた糸は、バランスされたシングルカバーの弾性糸であり、同号証の第4図ないし第6図の糸の形態よりしても、嵩高性を有するものとは認められない。
そうすると、第二引用例の複合糸は、芯入紡績糸(コアスパンヤーン)のうちで弾性を有するものであるが、嵩高性を有しないものであり、嵩高性を有する本願発明の複合糸とは別種のものといわなければならない。
成立に争いのない甲第三号証(第三引用例)によれば、第三引用例の複合糸は、連続フイラメントの芯糸にステープルフアイバーの粗糸を巻きつけたもの及び連続フイラメントとゴム糸を組合わせた芯糸にステープルフアイバーの粗糸を巻きつけたものであつて、共に弾性を有するものとは認められない。また、伸縮しないので、嵩高性も有しないものと認められる。甲第三号証に、ゴム糸のみを芯糸とする弾性複合糸が記載されているとみることはできない。
被告は、甲第三号証の第四五四頁下から一六行目ないし一三行目をあげ、ここにあげられている英国特許第七〇一二四八号明細書(乙第六号証)の記載内容から、ゴム糸のみを芯糸とする複合糸があることがわかると主張するが、審決が引用したのは甲第三号証の記載であるし、そこから、乙第六号証の具体的内容がうかがわれる特段の事情もないので、甲第三号証の記載から、ゴム糸のみを芯糸とする弾性複合糸があることがわかるとすることはできない。
そうであれば、第三引用例の複合糸は、芯入紡績糸ではあるが、弾性も嵩高性も有しないものであつて、本願発明の複合糸とは別種のものであるといわざるをえない。
そこで鞘糸の変換が容易に想到しうるものであるか否かを検討する。
成立に争いのない甲第一号証、前掲甲第二号証、第三号証、甲第五号証により、本願発明の複合糸の製造装置及び第一引用例ないし第三引用例の複合糸の各製造装置を対比すると、これらはすべて同様の装置であり、そして、甲第二号証には、鞘糸に粗糸を用いた複合糸の製造装置(同号証の第1図)と、鞘糸に長繊維の糸を用いた複合糸の製造装置(同号証の第2図、第3図)とが併記されており、複合糸の製造上からみると、本願発明の複合糸も第一引用例ないし第三引用例の複合糸も同一の技術分野に属しているものということができる。したがつて、製造される複合糸が異種であるからといつて、鞘糸の構成材料の変換が困難であるとはいえない。
そして、第一引用例の複合糸は、芯糸が収縮することにより鞘糸のフイラメント糸がふくらんで多数の輪及び弧を形成して嵩高性を呈しており、鞘糸として、フイラメント糸に代えて短繊維粗糸を用いても、糸の構成上なんら支障は考えられず、一方、複合糸の鞘糸に短繊維粗糸を用いたものは、第二引用例及び第三引用例に記載されており、短繊維がフイラメント糸に比べて見かけの容積が大きいという糸の形態からも、嵩高な複合糸を製造するに当り、鞘糸としてフイラメント糸に代えて短繊維粗糸を用いることは、当業者の容易に想到しうるところであるというべきである。
したがつて、審決の相違点(1)についての判断に誤りはない。
(審決取消事由2について)
前掲甲第一号証(第一引用例)によれば、第一引用例の複合糸は、本願発明の複合糸とは鞘糸成分を異にするが、後記審決取消事由4の項で述べるとおり、本願発明の複合糸と同様に、弛緩状態において鞘糸が膨んで芯糸の全面を密に覆うように多数の輪及び弧を形成する嵩高弾性複合糸であることが認められ、特に複合糸Hは、ポリウレタン弾性長繊維を芯糸とするものであつて、本願発明の複合糸と別種のものとみることはできない。
前掲甲第一号証の表1の実施例をみると、エラストマー糸ないしゴム条の重量%としては、二八%から四六%の範囲のものが記載されており(複合糸Hは四六%)、嵩高弾性複合糸の芯含量(芯糸含有率)を設定するに当り、甲第一号証は参考になりうるものである。
本願発明は、芯含量を四〇重量%以下に規定したものであるが、本願発明の特許公報(明細書、前掲甲第五号証)の表2(末尾添付の別表(〔編註〕省略)のとおり)によれば、芯含量が四〇重量%の場合と五〇重量%の場合とを対比すると、撚係数三においては、五〇重量%の方が嵩高倍率が高く、本願発明の明細書には「表2によれば、芯含量が40%以下である糸は、芯含量が多いものに比べて優れた嵩性を有する」とあるが、芯含量四〇重量%と五〇重量%との相互間では、嵩高倍率に格段の差異があるものとはみられない。したがつて、本願発明の複合糸の芯糸と同じポリウレタンエラストマー糸を用いた第一引用例の複合糸Hの芯含量として四六重量%が示されており、また、ゴム条を芯糸とした複合糸AないしGにおける芯含量が四〇重量%より低い値のものであるから、芯糸にポリウレタンエラストマー糸を用いた複合糸において、芯含量を四六重量%より低い四〇重量%以下にすることは、当業者の必要に応じて容易にしうることといえる。
したがつて、審決の相違点(2)についての判断にも誤りはない。
(審決取消事由3について)
まず、甲第一号証(第一引用例)の表1に複合糸の伸張状態における撚係数二ないし四が示唆されているかどうかを検討する。
前掲甲第一号証の表1には直接複合糸の撚係数の数値は記載されていないが、右表1には、複合糸の伸張状態の撚り数と一ポンド当りのヤード数が示されているので、当業者は必要であれば、右表1のデータより恒重式番手を算出したうえ、撚係数を求めることができる。そして、これにより求められた撚係数は、実施例の複合糸A、B、C、Hにおいて三・三四から四・五四の範囲にあり、そのうち、複合糸Hの撚係数は四・五四である。
ところで、甲第一号証の全部の実施例について撚係数を算出すると、次の表のとおりである。
<省略>
右表によると、本願発明の複合糸の要件である撚係数が二ないし四に該当するものは、複合糸A及び複合糸Cであつて、他の複合糸の撚係数は四・〇三ないし八・八三の範囲にあり、四より高い数値を示していることが明らかである。そして、複合糸A及び複合糸Cは、いずれも芯糸に天然ゴム糸を、鞘糸にナイロンマルチフイラメント糸を用いたものであり、本願発明の複合糸とは、芯糸及び鞘糸の両方を異にしていることが、前掲甲第一号証により明らかである。しかして、甲第一号証中には、表1を除いては撚係数を示唆する記載はない。
そうすると、撚係数が四以下である複合糸A及び複合糸Cの例は、甲第一号証の表1における実施例九例のうち二例にすぎないものであり、しかも、芯糸及び鞘糸の構成材料が本願発明の複合糸とは異なるものであるから、右表1から算出される撚係数中に、たまたま撚係数四以下のものが存在した程度のものといわざるをえない。まして、甲第一号証中には、撚係数を二ないし四にしたことによる効果については、何も示されていないので、甲第一号証の表1から算出した撚係数を参考にして、本願発明の複合糸の撚係数を二ないし四の範囲に限定することは、容易にしえないものというべきである。
右事実によれば、甲第一号証に、本願発明の複合糸の伸張状態における撚係数二ないし四が示唆されているとみることはできない。
審決は、二ないし四の撚係数を有する芯入り紡績糸は、第三引用例に記載されているとしているが、第三引用例(甲第三号証)には、撚係数を二ないし四の範囲とする例の記載はあるが、この撚係数が伸長状態における撚係数であるとの記載はなく、むしろ、第三引用例の糸は、さきに検討したとおり、弾性を有せず、伸縮しない複合糸であるから、第三引用例における撚係数を二ないし四の範囲とする例の記載は、伸張状態における撚係数ではないものと推認される。そうであれば、本願発明の嵩高弾性複合糸は伸張状態において二ないし四の撚係数を有するものであるから、第三引用例における撚係数の数値は、本願発明の参考にはならないものというべきである。
被告は、一般に綿紡式、毛紡式紡績糸の撚係数は特定の用途の糸を除いて二ないし四の範囲にあることは技術常識であると主張するが、嵩高弾性複合糸は通常の綿紡式、毛紡式紡績糸とは異なり、嵩高性及び弾性を有し、糸の性能、形態が著しく異なるものであるから、右のような技術常識は参考にならないというのが相当である(甲第一号証における嵩高弾性複合糸の実施例をみても、前述のとおり、大部分の撚係数は四ないし八の範囲にある。)。
次に、本願発明の特許公報(前掲甲第五号証)には、「表2は、撚係数が四・〇よりも大きい場合には、複合糸のビリ指数が飛躍的に悪化することを示しているのみならず、芯含量が四〇%を実質的に超えた場合には、たとえ撚係数が四・〇以下であつても、糸のビリ指数が極めて不良であることを示している。」(第七頁左欄八行目ないし一三行目)と記載されており、本願発明の複合糸は、撚係数を二ないし四の範囲にすることによりビリ指数を改良することをねらつたものであると解される。
一方、前掲甲第一号証には、「この複合ヤーンは、好ましい態様において、ヤーンを直線状に把持する力のすべてから解放されたとき、非常によじれやすく、躍りやすい、そして、カールしないように予め処理されていない限り、それ自身でカールし、ビリ(撚りくだれ)を生ずる。」(第一欄六三行目ないし六七行目)と記載されており、一般に、このような弾性複合糸は、ビリ(撚りくだれ)を生じやすい糸であることを示している。しかして、右甲第一号証によれば、第一引用例は、その記載内容から、ビリ指数の改良を目指したものではないことが明らかである。
被告は、乙第三号証ないし第五号証の実験結果によると、本願発明の複合糸は、その撚係数が二ないし四の範囲においてビリ指数に関して臨界的な効果を有するとはいえないと主張するが、成立に争いのない乙第三号証ないし第五号証の実験に用いられたビリ指数測定法は、本願発明で用いられた測定法が中心荷重をかけない測定方法であるのに対し、これとは異なり、中心荷重をかける測定方法であつて、成立に争いのない甲第八号証の一ないし五によれば、両者は、ビリの発生の仕方が異なるものと認められ、本願発明において用いられた中心荷重をかけない測定方法もそれなりの合理性を有しているものと認められるから、乙第三号証ないし第五号証の実験結果をもつて、直ちに本願発明の明細書の表2のビリ指数が示している臨界性を否定することはできない。
また、被告は、本願発明の特許公報の表2において、試料1ないし4のビリ指数が〇・五を示しているが、このような値は、常識的に考えても有りえない数値であると主張するが、右の主張を裏付ける資料はない。かえつて、前掲甲第八号証の二には、芯含量一〇重量%、撚係数三の嵩高弾性複合糸の実験例において、糸を固定する左右のクランプがほとんど接触する位置まで近づいたとき初めてビリが発生し、右表2の資料3におけるビリ指数〇・五と符合する状況が示されている。被告の右主張は理由がない。
以上によれば、第一引用例及び第三引用例には、嵩高弾性複合糸の伸張状態における撚係数を二ないし四の範囲に限定することについては何も示唆されていないものであつて、本願発明は、右の限定により、嵩高弾性複合糸のビリ指数を改良したものと認められるのであり、相違点(3)についての判断において、第一引用例及び第三引用例にもとづいて、これを「嵩高弾性複合糸の撚係数を二ないし四とすることは、当業者が実験的に嵩高弾性糸としての最適条件を求めて得られる程度の数値範囲ということができ、本願発明の明細書中に記載されている効果も、普通に予測される範囲を越えるものではない。」とした審決は、誤りというべきである。
(審決取消事由4について)
前掲甲第一号証中には、その第3図及び第4図について、「一般に、糸10は、糸14のまわりに嵩高又は膨らみをもつて幾分螺旋状に、個々の輪又はコイルが糸14の直径よりも平均して実質的に大きいような具合に巻きついている。」(第三欄二七行目ないし三一行目)と記載されており、また、右第3図及び第4図に記載された糸の態様をみると、糸14(芯糸)が露出しておらず、全面がマルチフイラント糸10(鞘糸)により覆われていることが認められる。そして、「密に覆う」とはどの程度のものをいうかの点については、本願発明の明細書(甲第五号証)に記載はなく、鞘糸が粗糸であるかフイラメント糸であるかによつて外見上多少の違いがあるとしても、結局、甲第一号証の第3図及び第4図に記載された複合糸は、その図示に徴し、鞘糸により芯糸の全面が密に覆われているものと認めるのが相当である。
原告は、第一引用例の複合糸Hは、甲第七号証の実験報告書及び検甲第一号証の三の見本から明らかなとおり、芯糸が露出した糸であり、鞘糸が芯糸の全面を密に覆うものではないと主張する。
しかしながら、審決が本願発明の複合糸と対比している第一引用例の複合糸は、複合糸Hのみではなく、複合糸AないしGをも含んだものであり、右第3図及び第4図の複合糸は、かかる一般的な第一引用例の複合糸の態様を示したものであり、それが鞘糸により芯糸の全面が密に覆われた複合糸であることは、上述のとおりである。複合糸Hについてみても、結局、右第3図及び第4図に記載された一般的な第一引用例の複合糸と同じような態様であると推認されるところであり、鞘糸により芯糸の全面が密に覆われた複合糸と認めるに十分である。
成立に争いのない甲第七号証及び検甲第一号証の一ないし三も、実験条件の具体的内容が必ずしも明らかではなく、この実験結果をもつて、直ちに甲第一号証の第3図及び第4図の糸の態様が誤りであるとはいえず、引用の技術としては、そこに表わされたところから、当業者であれば、どのように読みとりうるかを基準として、その内容を定めうべきものであることを併せ考えれば、前記認定を左右するに足りるものではない。
そうであれば、審決が、第一引用例の複合糸について、弛緩状態において鞘糸が膨らんで芯糸の全面を密に覆うものとし、本願発明と第一引用例のものとの対比においても、両者が弛緩状態において鞘糸が膨らんで芯糸の全面を密に覆う点で一致するとしたことに誤りはない。
(審決取消事由5について)
原告主張の(イ)の効果について検討する。第一引用例の複合糸の収縮した状態については、前掲甲第一号証の第3図及び第4図に見ることができる。ところで、本願発明の特許公報(明細書、前掲甲第五号証)の第2図は、本願発明の複合糸を伸張状態から七〇%収縮したときの拡大概略図であるが、これによると、形成された輪及び弧は、大きさ、形状が必ずしも均一であるとみることはできない。また、本願発明の明細書には、「これらの繊維布は、ヤーンの嵩性が極めて均一であり」(第七頁左欄三一行目、三二行目)とあるだけで、複合糸の嵩高の均一性については具体的な記載がなく、反面、複合糸は、紡糸操作によりその品質の均一性はかなり左右されるものであることが示されている(第二頁左欄二八行目ないし三五行目)。そうであれば、本願発明の複合糸が第一引用例の複合糸と鞘糸の素材、芯含量、撚係数の限定について相違があるとしても、両者の前記図面の記載からでは、本願発明の複合糸が第一引用例の複合糸より嵩高が均一であると一概にいうことはできない。
原告主張の(ニ)の効果については、審決取消事由3の項で検討したところから、本願発明の複合糸は、第一引用例の複合糸と比べてビリ(撚りくだれ)の発生が少ないと考えられるので、本願発明の複合糸は作業性において優れたものということができる。本願発明が各引用例のものに比べて格別の作用効果を生じるものではないとした審決は、この点において当を得ないというべきである。
原告主張の(ホ)の効果については、審決取消事由4の項で検討したとおり、第一引用例の複合糸も鞘糸が芯糸の全面を密に覆うものであるから、(ホ)の効果を本願発明の格別の作用効果と認めることはできない。
三 右のとおりである以上、審決には、原告主張の審決取消事由3及び5(但し、(ニ)の効果について)の点において判断を誤つた違法があり、これは、その余の点については上述のとおり審決の判断に誤りがないとしても、審決の結論に影響を及ぼすものと認められる。
よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容することとする。
〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。
四〇重量%以下の捲縮していない合成セグメントエラストマー長繊維の芯糸及びこれを螺旋状に取り囲む少なくとも一本の短繊維粗糸からなる鞘糸よりなり、伸張状態においては二ないし四の撚係数を有し、かつ、弛緩状態においては上記鞘糸の短繊維が膨らんで芯糸の全面を密に覆うように多数の輪及び弧を形成することを特徴とする弛緩状態で嵩高な弾性複合糸。