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東京高等裁判所 昭和52年(行ケ)41号 判決

原告主張の審決取消事由の存否について検討する。

1 請求原因四1(1)の主張について

原告は、本願発明では、第三引用例のものにおけるパイロメータ系の他に、X線厚み計54、巻帯機40の駆動制御器60及び62データ入力装置58、ねじ下げ位置制御器46、手動入力器70、ねじ下げ位置信号SP1~SP6、ロール力信号RF1~RF6、計算機56、加速度制御器64等(別紙第一図面参照)があつて、これらの出力信号を総合して速度調整器が働くものであるから、審決が、本願発明における「圧延機を第一速度から早い運転速度の方に加速するための速度調整器を制御する装置(加速度制御器64)」と第三引用例記載の「パイロメータ系」とが同一と認められるとしたのは誤りである、と主張する。

しかしながら、本願発明の要旨が請求原因二の項に記載のとおりであることは、当事者間に争いがないところ、この争いのない本願発明の要旨によれば、原告の指摘するX線厚み計、巻帯機の駆動制御器、データ入力装置、ねじ下げ位置制御器、手動入力器、ねじ下げ位置信号、ロール力信号、計算機は、いずれも本願発明の要旨に含まれない事項であることが明らかであるから、かかる要旨外の事項を挙げて第三引用例記載の「パイロメータ系」との相違を主張する原告の主張は採用することができない。(なお、加速度制御器64については、後述(5<1>の項)するように、第三引用例のものにおけるパイロメータ系は、モータ速度制御器59を制御するサブシステムの全体をいうものと解され、モータ速度制御器を制御するとは、モータの加速度を制御するにほかならないから、第三引用例のものにも、実質上、加速度制御器が設けられている、ということができる。)

2 請求原因四1(2)の主張について

原告は、審決が、第一引用例及び第三引用例に記載の「圧延機を第一速度から早い運転速度の方に加速する」という技術的思想を第二引用例に記載の計算機制御システムに適用することに格別の困難性はないとしたのは誤りであると主張する。

よつて、検討するに、成立に争いのない甲第九号証によれば、第二引用例には、

「圧延工程の計算制御の目的は、生産能率をあげることと、品質向上とにある。」(「内容梗概の項一行目)、

「以上は最大生産を得ることのみを考えて設定を計算したものであるが、仕上圧延機出口温度、コイラー前温度は、ストリツプの質をきめる重要な要素であるので、温度計算に設定計算結果を与え温度降下を計算してチエツクすることが必要である。」(第一二六頁左欄一六行目~一九行目)、

「通板後は、各スタンドに設置された自動板厚制御装置により、厚み制御を行なわせる。仕上圧延機速度は、仕上圧延機出口、入口の温度検出により、温度偏差を補正するように制御される。」(同頁右欄三行目~五行目)、

「ホツトストリツプミルにおいて、仕上圧延機出口温度、コイラー巻取時温度は、製品ストリツプの品質を決定する重要な要素である。」(同頁右欄二四行目~二六行目)、

「温度降下の傾向の一例を第3図に示す。粗圧延及び仕上圧延の設定計算に基づき、この実測関数に照らしておのおのの温度降下をチエツクし、それが適当な値に入らぬ場合は、設定計算をやり直す必要がある。温度制御の一例のブロツク図を第4図に示す。温度計算の修正を経た設定計算により圧延機圧下、速度が設定され、」(同頁右欄三五行目~四一行目)、

「仕上入口における圧延材温度を測定し、その偏差により、仕上圧延速度を変化させ、仕上圧延機出口におけるストリツプの温度のバラツキを減少させることができる。仕上圧延機出口温度の測定は、上述の温度計算の修正に使用されると同時に、その偏差により、ホツトランテーブル上の冷却水開度の補正計算を行なつて、あらかじめ制御し、ストリツプ先端が、コイラー前の温度検出器に達してから後は、この温度をフイードバツクして修正制御する。」(第一二七頁左欄一行目~八行目)、

「第3図 ホツトストリツプミルにおける圧延材温度降下」、「第4図 温度制御ブロツク図」(第一二七頁)、

の各記載があることが認められる(ただし、審決認定の部分は原告の自認するところである。)から、これらの記載によれば、第二引用例の計算機制御システムが、熱間圧延機の製品の品質向上を図ることを目的の一つとして、そのために、送出し温度を可及的に一定とすべく圧延速度の制御を行ない、その中には饋還制御も含むものであることが明らかである。

他方、成立に争いのない甲第一〇号証によれば、第三引用例には、

「本発明は、条材の熱間圧延の制御法及び装置を提供し、これにより、条材長手方向の温度差を大いに縮減し、必要とあれば完全に除去しうるごとくしたものであり、さらに、所望ならば、圧延操作中の条材の温度域を自動的に狭い範囲内に制御しうるごとくしたものである。上述のような目的を達成するために、一つの実施例では、仕上列内の各スタンドの圧延速度を条材が圧延されるにつれ一斉に増大するように前記仕上列を運転するようにし、これにより、条材の後方部分を前方部分に比し、より大なる速度で第一のスタンドに進入させるようにするようにしている。……上記のごとくする結果、条材の長手方向の温度差は相当程度に低減され、条材全域にわたつて実質的に一定の温度条件が得られる。」(第一頁右欄下から八行目~第二頁左欄六行目)、

「本発明の一つの実施型態では、仕上列、送出テーブル、コイラーの速度は一斉に調整されるごとくしてあり、よつて、これらの諸装置は、条材がコイラーのマンドレルから出発すると同時に加速されるものである。さらにまた、他の場合には、前記列の速度は、材料が列内に進入して来ると同時に、段々にかつ連続的に増大され、また、材料が前記列を通過する時の前記列の速度に合せて、他の装置の速度が増大させられるようにしてあり、よつて、最初の速度は、条材の送出テーブルへの移送、コイル捲作業が順調に行いうる範囲内に押えられる。」(第二頁左欄一四行目~二三行目)、

「本発明の他の特徴は、圧延作業中の条材の温度を定め、また、二またはそれ以上の条材部分間の温度差を定める装置を使用するにあり、その装置の情報はまた前記列の速度を調整し、所望の温度条件を得るための前記列の電動機の制御装置に関連せしめてある。もし所望ならば、条材のかなりの部分にわたり精密に温度域を調整しうるようになつている。」(同頁二四行目~三〇行目)、

「温度域を上げ、あるいは、下げることが望まれる場合には、仕上列の各スタンド11~16の速度を変えて温度域の微細調整、条材のかなりの部分の温度の維持を行なうことができ、この温度調節は条材の端から端まで均一な温度を得ることにつき前記説明したところと同様にして行なわれる。」(第四頁左欄下から五行目~右欄一行目)、

「条材の所望圧延温度が約八九九度Cであり、前記条材前方端縁部分が圧延装置から離れる時の送出側パイロメーターによつて検出した温度が九二七度Cであるとする。この時……圧延装置の速度は、条材の温度域を所定に保つように調整される。……一度上記の温度域が得られたならば、パイロメーター系は仕上列、送出しテーブル、コイラー等の速度、噴霧装置27の出力を徐々に比例的に増大させるように制御装置59に指令し、仕上列を通過中の条材の温度差を補正し、条材の温度が大略制御温度の約八九九度C近傍にあるようにする。」(第四頁右欄一一行目~三五行目)、

との各記載があることが認められる(ただし、審決認定の部分は原告の自認するところである。)。これらの記載によれば、第三引用例の制御システムも、熱間圧延機の製品の品質向上を図ることを目的として、そのために、送出し温度について、ストリツプの長手方向の温度差を減ずると共に、基本温度(温度域)を所定値に合致させるように、圧延速度と加速度の制御を、饋還制御をも用いて、行うものであることが明らかである。そのうえ、右制御のための制御装置として、第三引用例には、

「温度差を補正する他のやり方としては、計算機を使用し、この計算機に圧延過程間の条材の温度変化に含まれる種々の要素間の理論的、経験的な諸関係を連続的に供給する方法がある。さらに他のやり方としては、過去の実績に基づくプログラムシステムの開発がある。第3図は前記計算機式の主要な各要素を示すもので、」(第二頁右欄下から五行目~第三頁左欄二行目)、

との記載があることが認められ、その実施例は、アナログ型であるが、計算機の使用が明示されていることが認められる。

以上の事実によれば、第二引用例の計算機制御システムの基本的目的は、原告が主張する本願発明のそれと同じであり、かつ、第三引用例のもののそれとも異なるところがなく、しかも、構成上も、饋還制御を含む点で相互になじむところがあるから、第三引用例のものにおける品質向上のための手段である「圧延機を第一速度から早い運転速度の方に加速する」という技術的思想を第二引用例の計算機制御システムに適用することには、格別の困難性はないというべきである。

原告の主張は理由がない。

3 請求原因四1(3)の主張について

原告は、本願発明と第三引用例のものとでは、その主目的及び手段を異にするから、この第三引用例のものを第二引用例のものに附加、適用しても本願発明にはならないのであつて、審決が第三引用例記載の「パイロメータ系」を第二引用例記載の計算機制御システムに附加、適用することに格別の困難性はないとしたのは誤りである、と主張する。

しかしながら、第三引用例のものにおいて、前示認定の、所定の温度域で「板の長手方向の温度差を小さくする」ことが、そのまま、原告が本願発明について主張する、「最終スタンドにおける板の送出し温度を一定にする」こと、ないしは、「最終スタンドにおける板の送出し温度を所定の値に精密に維持する」ことになるのは自明の理である。

また、前記第三引用例の記載(前掲甲第一〇号証第一頁右欄下から八行目~同四行目、第二頁左欄一四行目~三〇行目、第四頁左欄下から五行目~同右欄一行目、同欄一一行目~三五行目)から見ても、その制御システムが、「最終スタンドにおける板の送出し温度を所定の値に精密に維持する」ものであることは明らかである。

したがつて、本願発明と第三引用例のものとの間に、原告が主張するような主目的上の相違があるとは認められない。

また、原告は、本願発明においては、各圧延スタンドを独立的(スタンド間の速度関係がない)に加速調整するとしているが、そのような事項は本願発明の要旨に含まれていない事項であるから、採用することができない。

そのうえ、原告の右主張は、それ自体誤りであるというべきである。何故ならば、成立に争いのない甲第三号証によれば、本願発明の明細書及び図面には、その実施例において、最終スタンドS6の後に巻帯機40(別紙第一図面)が設けられていることが認められるので、主に仕上圧延機を対象とするものと解されるのであるが、仕上圧延機では、複数のスタンドがいわゆるタンデムに配置され、一つのストリツプがこれら複数のスタンドに同時に噛まれた状態で送られるのであるから、いかに加速されようと、各スタンドにおける体積速度(ストリツプの幅と厚さと速度との積)が同一であるという速度関係が維持されなければならないことは、原理上明らかな事項だからである。現に、前掲甲第三号証の本願発明の明細書第三頁右欄一四行目~二六行目にも、諸圧延スタンドの速度比は一定に保たれる旨が明記されている。

原告の主張は理由がない。

4 請求原因四2(1)の主張について

原告は、第三引用例記載の技術的思想を計算機制御システムに適用することにこそ発明性があると主張するけれども、本願発明は、その要旨によれば、必ずしも計算機制御システムに限らないものと解されるから、原告の右主張はそれ自体失当である。

仮に、本願発明が計算機制御システムに限定されるとしても、審決は、第三引用例記載の技術的思想を計算機制御システムに適用することに発明性がないとしているのではなく、右の適用に格別の困難性があつたか否かを判断し、結局、本願発明を「容易に発明をすることができたもの」と認めているのであるから、審決に対する右の非難は当らない。

さらに、原告は、第三引用例記載の、「仕上列内の……進入させるようにする」という技術的思想と本願発明の技術的思想とは相違する旨主張する。

しかしながら、第三引用例の計算機制御システムが、本願発明と同じく、板の最終スタンド出口温度を精密に一定にするものであることは既述(3の項)のとおりであり、そこで原告が本願発明に設けられていると主張している各種機構は、速度調整器、加速度制御器及びこれらを制御する装置を除けば、本願発明の要旨からみて、その発明の構成要素とは認められないものであり、そして、右三種の装置については、第三引用例のものも、実質上それらを備えていることは、次項で述べるパイロメータ系の構成から明らかであるから、原告の右主張は理由がない。

5 請求原因四2(2)の主張について

<1> 原告は、第三引用例のものにおける「パイロメータ系」は計算機への入力信号を与える検出部であつて、この計算機は「パイロメータ系」を制御するものではない、と主張する。

しかしながら、第三引用例には、既述のとおり、

「パイロメータ系は、仕上列、送出しテーブル、コイラー等の速度、噴霧装置27の出力を徐々に比例的に増大させるように制御装置59に指令し、仕上列を通過中の条材の温度差を補正し、条材の温度が大略制御温度……近傍にあるようにする。」(第四頁右欄三〇行目~三五行目)

との記載があるのであつて、この記載によれば、第三引用例のものにおける「パイロメータ系」は、検出部(パイロメータ)自体にとどまることなく、それを含めて、モータ速度制御器59を制御するサブシステム(第3図)の全体をいうものと解される。

そうすれば、それは、送入側、送出側、コイラー(巻帯機)入口の各パイロメータからの信号、手動調整信号、モータ回転数饋還信号及びその他の信号に演算処理を施して、送出し温度を一定にするように、圧延機のモータの速度を制御するものであるから、そのような「パイロメータ系」が附加、適用された計算機制御システム中の計算機が、その「パイロメータ系」を制御すべきことは当然のことといわざるをえないのであつて、原告の主張は理由がない。

<2> 原告は、第二引用例記載の計算機制御システムは本願発明と目的を異にするシステムであると主張するけれども、既述(2の項)のとおり、第二引用例記載の計算機制御システムの基本的目的は原告の主張する本願発明のそれと同じであるから、原告の右主張は理由がない。

以上のとおりであり、審決の取消を求める原告の主張はすべて理由がないので、本訴請求は失当として棄却することとする。

〔編註〕 本願発明の要旨および審決理由の要点は左のとおりである。

本願発明の要旨

各圧延台毎に電動駆動装置と各電動駆動装置の速度調整器とを有する多台熱間帯金減厚圧延機において、圧延機を第一速度から早い運転速度の方に加速するための速度調整器を制御する装置と、饋還路内に接続されて帯金の送り出し温度をほぼ予定の温度範囲内に調整するための速度調整器の制御及び圧延機加速度を制御する制御装置とを備える多台熱間圧延機の制御装置。

審決の理由の要点

本願発明の要旨は、前項記載のとおりである。

ところで、本願発明の特許出願前に日本国内において頒布された刊行物(昭和三八年三月一日日本鉄鋼協会発行、「鉄と鋼第四九年(一九六三)第三号」)の第二三四頁~第二三六頁に掲載された論文「ストリツプ冷却状態の解析式の実作業への適用(ホツトストリツプミルのホツトランテーブルにおけるストリツプの冷却に関する研究ⅠⅡ)」(以下「第一引用例」という。甲第八号証。)は、すでに、発表済みの「ホツトランテーブルにおけるストリツプの冷却状態を表わす数式」(コンピユータコントロールに使用するためのもの)の適用例について述べたものであるが、該数式による試算の前提として、「最近の新しいホツトストリツプミルでは、能率及び品質向上を目的として、ストリツプの頭部が捲取機に捲付いた後、速度を上昇させて圧延するミルが多い。ある工場では、板厚二・三mm、幅三フイートの圧延を、最初はV3=一七〇〇fpmで圧延を行ない、ストリツプの頭部が捲取機に捲付いた後、V2=二七〇〇fpmに速度を上昇して圧延する。」(第二三六頁左欄第八行~第一四行)旨の紹介説明を行なつたものである。してみれば、「最近の新しいホツトストリツプミル」なるものが、品質の向上をも目的としていること、「時間の経過と共に圧延機の速度を加速度的に上昇させるようにしたもの」であることは明らかである。

同様の刊行物(昭和三九年八月二五日株式会社日立製作所発行、「日立評論」第四六巻第八号)の第一二四頁~第一二八頁に掲載された論文「圧延工程における計算機制御」(以下「第二引用例」という。甲第九号証。)は、計算機制御の目的、効果及びその効果を得る方法の一例の説明、計算制御される部分の考察、制御上の問題点への言及をしたものであるが、詳説すれば、「圧延工程の計算制御の目的は、生産能率を上げることと、品質向上とにある。」(第一二四頁の内容梗概の欄第一行等)、「以上は最大生産を得ることのみを考えて計算したものであるが、仕上圧延機出口温度、コイラー前温度は、ストリツプの質をきめる重要な要素であるので、温度計算に設定計算結果を与え温度降下を計算してチエツクすることが必要である。」(第一二六頁左欄第一六行~第一九行)、「第二図に、これら設定計算のブロツク図を示す。図において、設定計算により(中略)仕上圧延機速度などの設定値が与えられる。」(第一二六頁左欄第二四行~第二六行)、「第二図圧延機設定制御ブロツク図」「圧延中における温度降下に影響するおもな要素は、圧延材表面からの輻射による熱放射、圧延変形による熱の発生及び圧延ロールを通して逃げる熱の伝達と考えられる。(中略)温度降下の傾向の一例を第三図に示す。粗圧延及び仕上圧延の設定計算に基づき、(中略)それが適当な値にはいらぬ場合は、設定計算をやりなおす必要がある。温度制御の一例のブロツク図を第四図に示す。温度計算の修正を経た設定計算により圧延機圧下、速度が設定される。」(第一二六頁右欄第二七行~第四一行)、「第三図ホツトストリツプミルにおける圧延材温度降下」、「第四図温度制御ブロツク図」、「圧延材の流れにしたがい、設定計算、温度計算を行なわしめる指令を与え、その結果を適当な時期に、位置、速度などの各制御装置に与える。この指令を与える時機、指令の与え方も、温度計算、設定計算の結果をチエツクして進められる。」(第一二七頁右欄第八行~第一二行)、「第五図シーケンス制御ブロツク図」、「計算機故障時にもなるべく機能を落とさずに作業が続けられる方式を考えておくべきである。」(第一二七頁右欄下から第一七行~第一四行)、「設定制御、温度制御などにおいて、材料と製品仕様とが与えられて最適の標準スケジユールを作成するのは、多数の変数と多数の計算式及び資料を用いて計算する作業であるため、かなり大容量高速度のデイジタル計算機が必要である。また、全体を統括するシーケンス制御も、その性格上、デイジタル計算機を使用するのが適当である。」(第一二八頁左欄第一行~第六行)、「偏差補正の部分を目的とした計算制御化にはアナログ計算機を使用する方が適当な場合が多い。また、この部分的な計算機構が、それぞれ働きうるように設計されている場合には、故障による完全な停止の機会を非常に小さくすることができる。」(第一二八頁左欄第一〇行~第一四行)等の記載があることが認められる。

しかして、第二引用例記載の圧延機が粗圧延機と仕上圧延機とを含んでいること、該仕上圧延機が第一~第六スタンドを含んでいること、各スタンドの駆動モータを制御するために六個の速度制御装置が配設されていること、各速度制御装置を一括して制御するための補正計算装置が配設されていること、仕上圧延機入口に圧延機温度測定器が配置されていること、仕上圧延機出口に圧延機温度測定器及び圧延機厚み測定器が配置されていること、これらの諸装置を統括するためにデイジタル計算機が使用されていることは明らかであり、しかも、計算機制御の内容は、圧延機設定制御、圧延機温度制御及びシーケンス制御であり、位置ぎめ、速度制御、厚み制御、データ処理などの各自動装置を有機的に連結して有効に働かせることであると認められる。

同様の刊行物(特公昭三九ー一五四一四号特許公報、以下「第三引用例」という。甲第一〇号証。)の発明の詳細な説明の欄には、「連続あるいは半連続熱間圧延装置の運転についての従来からの重大な問題は、特に条材が仕上列内で圧延中に条材の長手方向の各部分が異なる温度となることにより、寸法が変動したり、金相学的に変化したりすることにある。」(第一頁左欄下から第一二行~第八行)、「他の問題は、金相学的に好ましい温度域に仕上列内にある条材の温度を保つことにある。」(第一頁左欄下から第四行~第三行)、「上述の如き温度差が精密に定められ、そして、低い範囲内にあり、条材の温度域があらかじめ定めた範囲内にあることは、最良の金属組織及び条材の寸度範囲が充分得られるかどうかにとつて重要なことである。」(第一頁右欄第七行~第一〇行)、「最新の製造に係る圧延装置においては、主として条材の全長を今までの装置におけるよりも大きな速度で圧延することによつて、それ(条材の温度差の制御)を行なうようにしている。」(第一頁右欄第一四行~第一七行)、「条材を一定の高速度で圧延するといつても、条材の前方部分を圧延するに際しては、最大速度は条材が送出しテーブル上にバタツキ現象なしにうまく載置され、また、その前方端縁がコイラー内にうまく入りうる範囲内に限定される。」(第一頁右欄第二二行~第二六行)、「本発明は、条材の熱間圧延の制御法及び装置を提供し、これにより、条材長手方向の温度差を大いに減縮し、必要とあれば、完全に除去しうるごとくしたものであり、さらに所望ならば、圧延操作中の条材の温度域を自動的に狭い範囲内に制御しうるごとくしたものである。上述のような目的を達成するために、一つの実施例では、仕上列内の各スタンドの圧延速度を条材が圧延されるにつれ一斉に増大するように前記仕上列を運転するようにし、これにより、条材の後方部分を、前方部分に比し、より大なる速度で第一のスタンドに進入させるようにしている。しかしながら、各スタンド間の速度の比は、必然的に乱されるわけではない。上記のごとくする結果、条材の長手方向の温度差は、相当程度に低減され、条材全域にわたつて実質的に一定の温度条件が得られる。」(第一頁右欄下から第八行~第二頁左欄第六行)、「一つの実施形態では、仕上列、送出テーブル、コイラーの速度は、一斉に調整されるごとくしてあり、よつて、これらの諸装置は、条材がコイラーのマンドレルから出発すると同時に加速されるものである。さらにまた、他の場合には、前記列の速度は、材料が列内に進入して来ると同時に、段々にかつ連続的に増大され、また、材料が前記列を通過するときの前記列の速度に合せて他の装置の速度が増大させられるようにしてあり、よつて、最初の速度は、条材の送出テーブルへの移送、コイル捲作業が順調に行いうる範囲内に押えられる。」(第二頁左欄第一四行~第二三行)、「一度上記の温度域が得られたならば(条材前方端縁部分がコイラー内に入るまでに一度九二七度C~八七一度Cの温度域が得られたならば、と解すべきである。)、パイロメータ系は、仕上列、送出しテーブル、コイラー等の速度、噴霧装置27の出力を徐々に比例的に増大させるように(モーター速度)制御装置59に指令し、仕上列を通過中の条材の温度差を補正し、条材の温度が大略制御温度の約八九九度C近傍にあるようにする。勿論、速度の変更は、必ずしも漸減、漸増するように行う必要はなく、時間間隔を置いてあるいは一挙動で行つてもよい。条材の前方端縁と残余の部分との速度の差が非常に大きい時は、初期温度条件の逆転が起りうる。すなわち、その時は、最終スタンドから出て来る条材の後方端縁部分が、前方端縁部分より、温度が高くなる。これは、非常な高速度で圧延を行う場合には熱の放射が減少し、圧延により金属中に導入される熱が増大する結果である。」(第四頁右欄下から第一九行~第七行)との記載があることが認められる。また、第三引用例の図面第三図に記載された「制御装置」は、発明の詳細な説明を勘案するに、モーター速度制御装置59と、「パイロメーター系」とを含んでいること、該モーター速度制御装置39は、仕上列内スタンドのモーターの速度を調節するものであること、「パイロメーター系」は、条材前方端縁部分がコイラー内に入つた後で仕上列の出力を徐々にあるいは段階的にあるいは一挙に増大させるように、モーター速度制御装置59に対して指令をするものであり、したがつて、送出側パイロメーター31や操作増幅器31等を含んでいること、該操作増幅器51には、条材の温度域を設定するため、計算機または手動により調整しうる信号を印加する入力端子を備えていること、がそれぞれ認められる。

そうすると、第三引用例記載の発明が「時間の経過と共に圧延機の速度を制御すること」、また、仕上入口温度が「時間の経過と共に降下することを確かめ、この特性曲線に応じて、圧延機の速度を加速度的に増加させ、仕上出口側温度を一定に保つて、品質の向上及び均一化を図つた」ものであることとは明らかである。

そこで、本願発明と第二引用例記載のものとを比較するに、両者は、「各圧延台毎に電動駆動装置と各電動駆動装置の速度調整器(速度制御装置)とを有する多台熱間帯金減厚圧延機」における「制御装置」である点、「饋還路内に接続されて一帯金の送り出し温度をほぼ予定の温度範囲内に調整するための」「制御装置(計算機)とを備える」点で一致しているが、<1>本願発明は、「圧延機を第一速度から早い運転速度の方に加速するための一速度調整器を制御する装置」を備えているのに、第二引用例記載のものはこれに対応すべき記載を欠く点、<2>本願発明は、「饋還路内に接続されて一帯金の送り出し温度をほぼ一定の温度範囲内に調整するための」制御装置に対して「速度調整器の制御及び圧延機加速度を制御する」という機能をもたせているのに、第二引用例記載のものはこれに対応すべき記載を欠く点において、両者間に差異のあることが認められる。よつて、上記相違点<1>、<2>について、審究する。

相違点<1>について

本願発明における「圧延機を第一速度から早い運転速度の方に加速する」という技術的思想は、前述のごとく、第一引用例及び第二引用例に明記されていると認められる。また、本願発明における「圧延機を第一速度から早い運転速度の方に加速するための一速度調整器を制御する装置」は、第三引用例記載の「パイロメーター系」と同一であると認められる。

しかして、第一ないし第三引用例記載のものは、いずれもホツトストリツプミルに関する技術であるから、第一、第三引用例記載の「圧延機を第一速度から早い運転速度の方に加速する」という技術的思想を、第二引用例記載の計算機制御システムに適用すること(シーケンスブロツク等に具体化すること)に格別の困難性はないものであり、したがつてまた、第三引用例記載の「パイロメーター系」を、第二引用例記載の「計算機制御システム」に附加、適用することに格別の困難性はないものと認められる。

したがつて、上記相違点<1>は、本願発明の特許出願前において当業者が第一、第三引用例の記載事項に基づいて容易に想到・実施することができたものであると認められる。

相違点<2>について

本願発明における「圧延機加速度を制御する」という機能は、第一、第三引用例記載の「ストリツプの頭部が捲取機に捲付いた後、速度を上昇させて圧延する」、「仕上列内の各スタンドの圧延速度を条材が圧延されるにつれ一斉に増大するように前記仕上列を運転するようにし、これにより、条材の後方部分を、前方部分に比し、より大なる速度で第一スタンドに進入させるようにする。」という技術的思想を、第二引用例記載の計算機制御システムに適用したとき、計算機システム内の計算機が必然的に獲得する機能であると認められるところであり、該思想を該システムに適用することの容易性は、相違点<1>についてのところで、すでに説示したとおりである。

また、「速度調整器の制御(装置)を制御する」という計算機機能、換言すれば、「パイロメーター系」を制御するという計算機機能は、前述のごとく、第三引用例記載の発明がすでに前提するところのものである。換言すれば、「パイロメーター系」の附加、適用された計算機制御システム中の計算機が「パイロメーター系」を制御すべきことは極めて当然のことである。

さらに、デイジタル計算機に対して、速度調整器を直接的に制御するようなプログラムを与えることも、勿論可能であり、かつ、容易であると認められる。

したがつて、上記相違点<2>もまた、本願発明の特許出願前において、当業者が第一、第三引用例の記載に基づいて容易に想到・実施できたものであると認められる。

以上を総合して判断するに、本願発明は、本願発明の特許出願前において当業者が上記第一ないし第三引用例に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第二九条第二項の規定により特許を受けることができない。

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