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東京高等裁判所 昭和52年(行ケ)52号 判決 1977年10月19日

原告

松石株式会社

右代表者

松本石五郎

右訴訟代理人弁護士

中島純一

弁理士

中島信一

外一名

被告

タイガーシヤツ株式会社

右代表者

中西一雄

右訴訟代理人弁護士

松石献治

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一  当事者の申立<省略>

第二  請求の原因

(特許庁における手続)

一、原告は、別紙第一記載のように、「PINE TIGER」及び「パインタイガー」の各文字を上下二段に横書きしてなり、第一七類「被服その他本類に属する商品」を指定商品とする登録第五九六五一三号商標(昭和三六年七月二四日出願、昭和三七年九月一一日登録、昭和四八年一月一二日存続期間更新登録。以下本件商標という。)の商標権者であるが、特許庁は、昭和三九年一月二五日被告からなされた本件商標の登録無効審判の請求(同庁同年審判第六二八号事件)に基づき、昭和五二年一月五日本件商標の登録を無効とする旨の審決をし、その謄本は同年二月一七日原告に送達された。

(審決の理由)

二、本件審決の理由の要点は次のとおりである。

本件商標は、その構成上、「PINE」と「TIGER」、「パイン」と「タイガー」の各文字が一体不可分に横書きされているとは看取されないばかりでなく、各両語間に何ら関連性もないから、必ずしも常に不可分一体のものとして把握し、一連に称呼、観念しなければならない強固な結合関係にあるものとはいえない。したがつて、本件商標からは、全体として「パインタイガー」(松虎)なる一連の称呼、観念を生ずるほか、各後半部の文字部分から単に「タイガー」(虎)の称呼、観念を生ずるとするのが社会通念上相当である。

他方、(一)登録第一二三四四八号商標(旧第三六類「各種シヤツ及びズボン下」を指定商品とし、大正九年五月一五日出願、同年一二月二〇日登録、昭和一五年八月七日及び昭和三三年九月三〇日各存続期間更新登録。)は虎の図形その他附記的文字よりなり(別紙第二参照)、(二)登録第四〇八二三五号商標(指定商品(一)と同じ、昭和二四年九月三〇日出願、昭和二七年二月一三日登録、昭和四七年六月一〇日存続期間更新登録)は虎の図形に竹を配してなり(別紙第三参照)、(三)登録第四〇九九一四号商標(旧第三六類「被服(洋服、オーバーコート、レインコート、パンツ、マント、二重廻し、コート、モジリ、合羽を除く。)、手巾、釦鈕及び装身用ピンの類」を指定商品とし、昭和二四年九月三〇日出願、昭和二七年三月三一日登録、昭和四八年六月一四日存続期間更新登録。)はアンダーラインを附した「TIGER」の文字の上に弧線で囲んだ虎の頭部の図形を画いてなり(別紙第四参照)、(四)登録第一四七二一八号商標(旧第三六類「各種シヤツ」を指定商品とし、昭和二五年一一月一五日出願、昭和二七年一〇月一八日登録、昭和四八年六月一四日存続期間更新登録。)は、「TIGER SHIRTS」の文字を横書きしてなる(別紙第五参照)がその指定商品との関係上、その要部は「TIGER」にあるから、上記(一)ないし(四)の商標のいずれからも「タイガー」(虎)の称呼、観念を生ずる。

したがつて、本件商標と右各商標とは、称呼、観念を共通にする類似の商標であり、かつ、両者の指定商品も相互に牴触関係にある。

よつて、本件商標は、商標法第四条第一項第一一号の規定に違反するから、その登録を無効とすべきものである。<以下省略>

理由

一請求原因中、原告が商標権を有する本件商標について、その構成、指定商品及び被告の登録無効審判の請求から審決の成立にいたる手続並びに審決理由に関する事実は、当事者間に争がない。

二そこで、原告主張の取消事由の有無について検討する。

前記争いのない構成によると、本件商標は、上段に「PINE TIGER」の英文字を、下段に「パイン タイガー」の片仮名文字をいずれも左横書きしてなるものであるが、「PINE」と「TIGER」の間及び「パイン」と「タイガー」の間には、それぞれ半字ないし一字程度の間隙があつて、前半部と後半部とに分離されている。そして、「PINE」、「パイン」及び「TIGER」、「タイガー」がそれぞれ英語の「松」及び「虎」を意味することは当裁判所に顕著なところであるが、右両語間には意味上格別の関連性はないし、また、構成上いずれかの比重が大きいともいえない。しかも、右両語について、これを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものと認むべき特段の事情は存しない。

そうだとすると、本件商標からは、原告主張のように「パインタイガー」(松虎)の称呼、観念のみが生ずるとはいえず、その後半部の各文字に対応して「タイガー」(虎)の称呼、観念をも生ずると解するのが相当である。

したがつて、本件審決には、原告主張のような違法はない。

三よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条及び民事訴訟法第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(石井敬二郎 橋本攻 永井紀昭)

別紙<省略>

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