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東京高等裁判所 昭和52年(行ケ)80号 判決 1977年12月22日

原告

高田千代蔵

右訴訟代理人

早川政名

被告

特許庁長官

熊谷善二

右指定代理人

青木清和

外二名

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求める裁判<省略>

第二  当事者の主張

一  請求の原因

(一)  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和四六年五月二五日特許庁に対し、別紙(一)に表示する構成よりなる商標(以下本願商標という。)について、第三十類菓子パンを指定商品として商標出願をしたが、同四八年六月一八日拒絶査定を受けた。そこで原告は同年一〇月八日審判の請求をし、同年審判第七四九三号事件として審理されたが、同五二年二月二一日「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は、同年三月二三日原告に送達された。

(二)  審決理由の要点

1 本願商標は、別紙(一)に表示する構成よりなり、第三〇類「菓子・パン」を指定商品として、昭和四六年五月二五日に登録出願され、その後、指定商品については、昭和四八年一〇月八日付の手続補正書をもつて、「西陣風味菓子」と補正されたものである。

2 これに対し、登録第七一五二六〇号商標(以下「引用商標」という。)は、別紙(二)のとおり、「西陣」の漢字を縦書きしてなり、第三〇類「菓子・パン」を指定商品として、昭和四〇年二月一六日登録出願、同四一年八月四日登録、同五二年一月一八日存続期間更新の登録がなされているものである。

3 そこで、本願商標と引用商標との類否について判断すると、本願商標は、その構成中、中央に顕著に書された「西陣風味」の文字は、これが全体として特定の意味合を有せず、「西陣」と「風味」のそれぞれの文字を組合わせてなるものと認識せしめるものである。そして「風味」の文字は指定商品との関係で「あじ、上品なあじわい」の意味で指定商品の品質を表示するにすぎず、「西陣」の文字が、それ自体独立して自他商品識別の機能を果すものといえるから、本願商標は、「西陣」の文字より単に「ニシジン」の称呼をも生じるといわなければならない。他方、引用商標も、その構成にかかる「西陣」の文字よりして「ニシジン」の称呼を生じると認められる。

4 してみれば、本願商標は、引用商標と、「ニシジン」の称呼を同じくする類似の商標であり、かつ両商標は、同一または類似の商品を指定商品とするものであるから、結局、本願商標は商標法第四条第一項第一一号に該当し、登録することができない。

(三)  審決取消事由

1 本願商標の構成中「京銘菓」の文字は京都の銘菓を意味するにすぎず、また「西陣風味」の文字についても、そのうち「西陣」の文字は地名であるとともに西陣織を、また、「風味」は「あじ」をそれぞれ意味し、全体として商品の品質を表わしているにすぎないから、本願商標の要部は「玉寿軒」の文字の部分であるというべきであり、「西陣」の文字からなる引用商標とは非類似である。したがつて、本願商標と引用登録商標は称呼を同じくする類似の商標であるとした審決の判断は誤りである。

2 引用商標の「西陣」の文字は著名地名であるから、引用商標は商標法第三条第一項第三号に該当する。したがつて、審決がかかる商標を本願商標との類否の判断に用いたのは誤りである。

二  請求の原因に対する被告の認否<省略>

第三  証拠<省略>

理由

一請求の原因(一)および(二)の事実は当事者間に争いがない。

二そこで、原告の主張する審決取消事由の有無について判断する。

(一)  原告の主張1について

本願商標が別紙(一)のとおりの構成のものであることは当事者に争いがなく、右構成によれば、本願商標のほぼ中央に顕著に書されているのは「西陣風味」の文字であるから、本願商標の要部が右の部分にあることは明らかである。

ところで、原告は、「西陣風味」の文字は全体として商品の品質を表わしているにすぎないから、本願商標の商品識別機能を果す部分は「玉寿軒」の部分である旨主張する。しかしながら、「西陣風味」なる文字は、文法的にはともかくとして、原告も自認するように西陳の文字が著名な土地名であるがため、かえつて本件指定商品と直接に結びつかず、一般取引者、需要者に全体として指定商品の品質を表わすものとして認識されるとまでは到底認められない。<証拠>も原告の主張を認めさせるものではなく、その他「西陣風味」の文字が全体として本件指定商品の品質を表わすにすぎないと認めるに足りる証拠はない。それ故原告の上記主張は採用できない。

(二)  原告の主張2について

商標法第三条第一項第三号は必ずしも地名を含む標章をすべて排斥しているわけではないので、引用商標がいかなる事由にもとづいて登録されたかは明らかでないが、それはともかくとして、<証拠>によつて明らかなように引用商標が有効に存在している以上、審決がこれを引用し、本願商標と類似対比に用いたとしても何ら違法ではないことはいうまでもない。

(三)  そうすると、「西陣風味」の文字のうち「風味」の文字は指定商品の品質を表示するにすぎず、「西陣」の文字が自他商品識別の機能を果すものとし、結局、本願商標は引用商標と「ニシジン」の称呼を同じくする類似の商標であり、かつ、両商標は同一又は類似の商品を指定商品とするものであるから、本願商標を商標法第四条第一項第一一号に該当するとした審決には原告主張のような違法はない。

三<省略>

(杉本良吉 舟本信光 小笠原昭夫)

<別紙(一)>

<別紙(二)>

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