大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(う)1663号 判決

被告人 上石昌志

〔抄 録〕

刑法二〇二条所定の嘱託殺人罪にいう嘱託は被殺者の自由かつ真意に出た殺害の依頼でなければならないが、その嘱託が真意に基づかない疑がある場合でも嘱託者を殺害するに至った行為者が真意による嘱託と信じ、かつ当時の状況に照しそのように信ずるについて通常人としても首肯できるときは刑法三八条二項により嘱託殺人罪のみの成立を認めるのが相当であり、本件においても前示のように当夜けい子の被告人に対する殺害の依頼が同棲中の青木に対する義理立てから出たものではないかとの疑いがあり、真意ではない疑いがあるとしても、自暴自棄的になっていた被告人が、別れることに未練のあったけい子から繰返し一緒に死んでしまおうといわれ、これを真意に基づく殺害の依頼と信じたことも通常人の立場から十分ありうることとして首肯できるから、被告人についてはけい子に対する嘱託殺人罪の成立を認めるのが相当である。

(小松 千葉 鈴木)

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