大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(う)1961号 判決

被告人 平井信治

〔抄 録〕

原判決挙示引用の関係証拠によれば、被告人は、原判示第一の無免許運転の事実で原判示第二の取調べを受けた際その衝に当たった原判示の箭内巡査に対し、自己の氏名を「平山信春」と詐称し、原判示交通事件原票中の供述書欄に署名を求められるや、その氏名欄に「平山信春」と冒書指印し、同人のごとく作為し、同巡査も被告人を「平山信春」と信じていたことが認められるから、たとえ「平山信春」が実在しない架空人であったにしても、右のような氏名は巷間に通常用いられるものに類似し、第三者をして実在人と誤信させうるものであるばかりか、被告人が右名儀を冒用して作成した原判示供述書は、一見して虚無人名義とわかるようなものではなく、むしろその行使の相手方である捜査当局はもとより一般人をして実在人の真正に作成した文書と誤信させるおそれが十分あるものであり、現に、取調べに当たった箭内巡査もその旨誤信していたことは前認定のとおりであり、その文書の真正に対する公の信用を危うくさせた点において、実在人名義を冒用した場合と何ら区別するところはなく、したがって、単に架空人名義を冒用したことの一事をもって私文書偽造に当たらないとはいえず、被告人の原判示第二の所為が私文書偽造、同行使罪を構成することは明らかであって、所論引用の判例を検討しても原判決に所論の法令適用の誤りは存しない。

(金子 下村 小林)

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