大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和53年(ウ)1303号 決定

民事訴訟法第五四四条に定める執行方法の異議が申し立てられ、裁判所が、同条第一項後段により同法第五二二条第二項に定める仮の処分として強制執行の一時の停止を命ずる裁判(以下「強制執行停止決定」という)をした場合において、裁判所が、右執行方法の異議の申立を認容する決定をするにあたり、同法第五四八条の規定を類推適用して、前記強制執行停止決定を認可する旨の裁判をするとともに、右認可決定に対して仮執行の宣言を付したときは、この仮執行宣言付の執行方法に関する裁判(決定)は、民事訴訟法第五五〇条第一号の規定に定める裁判ではなくして、同条第二号の規定にいう「執行又ハ執行処分ノ一時ノ停止ヲ命シタル旨ヲ記載シタル裁判」に該当するものと解するのが相当である。

けだし、強制執行停止決定は、執行方法の異議の申立についての決定のあるまで、強制執行の一時的停止を命じて現状を凍結することを目的とするものであって、その認可決定は右のような強制執行の一時的停止を認可するものにすぎず、右認可決定に対する仮執行宣言は、もし仮執行宣言が付されないならば執行方法の異議の申立についての裁判の発効と同時に強制執行停止決定それ自体が失効してしまい、不当な結果を招来することになるところから、強制執行の一時的な停止決定の効力を持続するための暫定措置として付されるにすぎないのであって、これを超えて、終局的に強制執行の不許ないし停止を命ずるものでないことはもちろん、右仮執行の宣言は、執行方法の異議の申立についての裁判(決定)全体に付されるのではなく、前記一時的な執行の停止を命ずる部分の認可決定に付されているにすぎないからである。

もっとも、大審院の先例(大審決昭和六年一二月一一日新聞三三五八号一〇頁、大審判昭和一二年四月二〇日民集一六巻八五三頁など)中には執行停止命令の認可の裁判に仮執行宣言が付された場合これが民事訴訟法第五五〇条第一号に該当する旨を述べるものもあるが、当裁判所は、右の見解をとらない。

したがって、強制執行停止認可について仮執行の宣言が付された裁判をもって民事訴訟法第五五〇条第一号の規定に該当することを前提として、同法第五一二条または第五四八条に定める仮の処分として執行停止を申し立てうるとする申立人の所論は、前提を欠くものとして、排斤を免れない。

(なお、大審院の先例が、強制執行停止決定認可の裁判に仮執行の宣言が付されたものを民事訴訟法第五五〇条第一号に該当する裁判であると解しているところから、相手方がこれを前提として、強制執行の処分の取消を求めることも考えられないわけではないが、かりに執行処分が取り消されたとしても申立人は右執行処分の取消処分に対し不服申立(民事訴訟法第五四四条、第五五八条)をし、その効力の発生を阻止することができないわけでもないから、申立人において、その場合の救済方法がないとはいえない。)

(森 新田 奈良)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!