東京高等裁判所 昭和53年(ネ)1777号 判決
前記四で認定したとおり、被控訴人は、昭和三六年一〇月一一日喜作から本件土地の贈与を受けてその所有権を取得した者であるところ、本件土地の所有権に基づき直接控訴人に対し本件土地につき所有権移転登記手続をすることを求めるというのであるが、本件土地に関する所有権の移転関係は、栄蔵から喜作へ(時効取得)、喜作から被控訴人へ(贈与)と推移したのであるから、被控訴人が右のような物権変動に則して栄蔵の一般承継人である控訴人に対し本件土地につき所有権移転登記手続を訴求するのであれば、被控訴人は、中間の取得者である喜作名義への所有権移転登記を省略して直接自己名義への登記を請求することとなるので、右登記請求権の当否について検討しなければならないが、まず、喜作は、<中略>家業の後継者である被控訴人に本件土地を贈与したのであるから、本件土地につき自己名義の所有権移転登記を経由することを省略する旨を少なくとも黙示的に承諾したものと推認することができるのであり、次に、栄蔵は、喜作の時効取得によって本件土地の所有権を失い、喜作は、贈与によって本件土地の所有権を被控訴人に移転したのであるから、右栄蔵(ひいてはその登記義務を承継した控訴人)及び喜作にはいずれも本件土地につき中間取得者喜作名義の登記を経由することによって保護されなければならないような客観的な利益は認められないものというべきであるので、本件においては、被控訴人の控訴人に対する中間省略登記の請求を認容するのが相当である。
(貞家 長久保 加藤)