東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2471号 判決
目録(四)の土地の売買代金が四九万四〇〇〇円に決定した経緯を検討すると、≪証拠≫を綜合すれば、目録(四)の土地は、被控訴人が昭和五一年一月一四日国から払下を受けた鎌倉市腰越三丁目六九―七土地二一九・八〇平方メートルの一部であるが、被控訴人が払下を受けるためには、控訴人の全面的な協力が必要であったため、これが見返りとして目録(四)の土地に当る払下部分を控訴人に対して払下価格と同額で売渡す旨の合意が控訴、被控訴人間でなされたこと、目録(四)の土地は控訴人買受土地の中央部とはいえないとしても、少なからず重要な部分を占めていること、当時付近の土地は底地価格においても坪当り金一〇万円は下らなかったが、被控訴人は控訴人の協力を得て代金一七一万三〇五〇円という廉価で払下を受けることができたこと、しかるに被控訴人は、一旦払下を受けるや、なんら理由もないのに控訴人に対して払下価格を明らかにすることをせず、同人に対して、公租公課の評価額とか払下に経費を要した、というもともと明らかな又は予見できた(したがって事情変更にはあたらない)理由を根拠として、代金を決定することを強く求め、払下価格とか払下経費がいくらであるかを知らず反論のしようもない控訴人をして被控訴人の希望する金四九万四〇〇〇円を承知させたこと、以上の事実が認められる。
右認定によれば、売主である被控訴人は、払下を受けるについて協力を得る代償として払下土地の一部を払下価格で売渡す旨を約しておきながら、その協力の下に払下を受けて少なくない利益を収めるや、首肯できる事情もないのに前言を飜して、払下価格がいくらであるかも知らない買主である控訴人に対し、払下単価の二倍を超える代金額に増額することに同意させ、これに基づいて右代金を請求することは、払下価格相当分を超える利益部分について信義則上許されないというべきである。そして目録(四)の土地の払下単価に基づく代金額を計算すると、金二一万三八五八円(1,713,050円÷219.80m2×27.44m2円未満切捨)となる。
(田中 宮崎 岩井)