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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2617号 判決 1981年10月13日

控訴人(附帯被控訴人) (以下単に「控訴人」という。) 木戸脩

右訴訟代理人弁護士 榎本昭

同 上野伊知郎

被控訴人(附帯控訴人) (以下単に「被控訴人」という。) 野並慶宣

右訴訟代理人弁護士 小島徳雄

主文

本件控訴及び附帯控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の、附帯控訴費用は被控訴人の各負担とする。

事実

第一申立

控訴人は、「原判決中控訴人敗訴部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決並びに附帯控訴として、「原判決中金員の支払を命ずる部分を、『かつ金一三〇万三〇〇〇円及び昭和五二年四月一日から前記土地明渡に至るまで一か月金二万三七四〇円の割合による金員を支払え。』に変更する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求め、控訴人は、附帯控訴棄却の判決を求めた。

第二主張

当事者双方の主張については、左に付加、訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三枚目裏七行目の「本件借地」を「本件土地」と、四枚目表一、二行目「五四九条」を「五九四条」とそれぞれ改める。

2  四枚目表五行目「土地の」から同裏初行までを左のとおり改める。

「およそ適正地代を算定するには、当該土地の課税標準額によるのではなく、実際の時価を基準にした方式によるのが合理的である。ところで、本件土地の昭和四六年当時の実勢価額は少くとも坪当り金一二万円であるので、右価額に減額補正率二分の一を乗じた額を基準にして、これに財団法人日本不動産研究所の作成にかかる「地域別六大都市市街地価格推移指数表」によって算定した同年以後の住宅地価格の上昇率及び期待利廻り(年五パーセント)を乗じ、更に固定資産税額及び都市計画税額をこれに加算して算出した適正地代額は、別表(被控訴人主張の適正地代の計算表)記載のとおりである。右によると、本件土地(その面積を五〇坪として計算)の昭和四六年八月分から昭和五二年三月分までの適正地代の合計額は金一三〇万三三一〇円であり、同年四月分以降のそれは月額金二万三七四〇円である。」

3  四枚目裏三行目「被告が」から五枚目表初行までを左のとおり改める。

「本件土地の昭和四六年八月分から昭和五二年三月分までの地代相当損害金一三〇万三三一〇円のうちの金一三〇万三〇〇〇円及び同年四月一日から本件土地明渡に至るまで一か月金二万三七四〇円の割合による地代相当損害金の支払を求める。」

4  五枚目表四行目「主張の頃」を「昭和三八年四月頃」と改める。

5  五枚目裏三行目の「土地の適正地代」から同七行目までを左のとおり改める。

「適正地代を算定するには、原判決認定のような方式によるべきではなく、東京高等裁判所昭和五三年二月二七日言渡の判決にみられるような方式即ち一か年当り地代額を土地の公示価格の〇・四ないし〇・五パーセントとする方式によるべきである。

仮に被控訴人主張のように当該土地の価格を基準として適正地代を算出するとするならば、更地価格に対する年利廻りは〇・五パーセント以下に計算すべきであり、昭和五三年における本件土地の価額が坪当り金一九万三〇〇〇円であることは、被控訴人においても異議がない筈であるから、これを基準に本件土地の面積を五〇・四八坪とし、年利廻りを〇・五パーセントとして算出した地代額は年額金四万八七〇〇円(坪当り月額金八〇円四一銭)となる。」

6  五枚目裏一〇行目「被告は」の次に「昭和三八年四月頃」を加え、同行目「本件借地」を「本件土地」と、六枚目表二行目「建築した。」を「建築したうえ、同年八月下旬頃本件土地の周囲即ち原判決別紙図面表示のイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、イの各点を順次直線で結んだ線上にブロック塀及び金網塀をめぐらして借受地の範囲を明確にした。」と、同行目「八月頃」を「九月上旬」とそれぞれ改める。

7  六枚目表末行の次に、行をかえて左のとおり加える。

「仮に本件借地契約が使用貸借であるとしても、控訴人に背信行為はなく、又本件は民法五九四条の適用がある事案ではない。即ち、

(一)  一般に建物の建築所有を目的とする土地の使用貸借の期間は、当該建物が朽廃するまでの期間であって、借地人又はその家族が当該建物に居住する期間に限られるものではない。まして本件の場合、借主である控訴人が地方転勤等居所を転々とする必要のある国家公務員であることをみちにおいて十分承知のうえで本件土地を貸したのであって、当初は婚姻により居宅のない控訴人に対してとりあえず住宅用地を提供するものであったが、その後の本件土地の利用(使用収益)方法についてまで細かく限定するものではなかった。

(二)  控訴人が本件建物を訴外田部良明に賃貸したことは前記のとおりであるが、一般に借地人が借地上の持家を地主の承諾を得ることなく第三者に賃貸しても土地の転貸にならないことは、学説、判例上異論のないところであって、この理は、借地が使用貸借である場合でも異なるところはない。本件の場合、控訴人が訴外田部に本件建物を賃貸して同人にこれを使用させ、それに伴い、本件土地を付随的に通常の用法の範囲内で使用ないし所持させても、控訴人の本件土地に対する占有は民法一八一条所定の代理人による占有に該当し、本件土地が控訴人の事実的支配に属することには何ら変りはないのである。従って、本件建物の賃貸を目して民法五九四条一項による用法違反又は同条二項による無断転貸とするのは当らない。

(三)  被控訴人は、本件土地の外に、近隣に本件土地の数倍以上の所有地を有し、本件土地を自ら使用する必要は全くないのに反し、控訴人及びその母淑は本件建物以外には見るべき資産もなく、又本件建物を収去することは、社会的、経済的に大きな損失である。これらの事項は、控訴人の背信性の有無を判断するうえで大いに考慮されるべきである。

(四)  被控訴人は、本件土地については被控訴人において控訴人の住居のための敷地に供するという用法を定めてその無償使用を認めたものであるから、控訴人が本件建物を第三者に賃貸したことは、契約によって定った用法の違反であり、又民法五九四条二項にも違反する旨主張するが、本件土地の用法につき被控訴人主張のような限定のなされた事実のなかったことは前記のとおりである。そもそも控訴人が本件建物を訴外田部に賃貸するに至った契機は、母みちの死後被控訴人の偏奇な性格が顕現して、被控訴人において控訴人との従来の友好関係を一方的に破棄し、控訴人に対して独善的かつ利己的な態度を以て臨んできたことにあるのである。即ち、控訴人の母淑は、その実母みちの死後被控訴人がその態度を豹変して独善的かつ利己的になったため、やむなく昭和四四年四月被控訴人を相手方とするみちの相続財産分与に関する調停を申立て、これが不調に終ったため、同四六年七月被控訴人を被告とする本件土地についての所有権確認、所有権移転登記抹消登記手続請求訴訟を提起したところ、被控訴人は、右訴訟に対抗する手段として、同月末控訴人に対して本件土地の使用貸借契約の解除を通告してきたのである。その後控訴人は、前記訴訟との関連等を考慮して、本件建物を自ら使用することをはばかり、第三者に賃貸したのである。元来みちが控訴人に対して本件土地を提供した趣旨は、祖母が孫に土地を使わせるという愛情を基盤とした親族関係に基づく包括的なものであるから、控訴人において右のような事情のもとに本件建物を第三者に賃貸しても、みちの本件土地提供の趣旨を逸脱するものではなく、使用貸借の当事者間の信頼関係を破壊するものとはいい難い。」

8  六枚目裏八行目の次に、行をかえて左のとおり加える。

「本件建物の第三者への賃貸が背信行為に該らず、又本件につき民法五九四条の適用がないとする控訴人の主張は、これを争う。

控訴人は、本件建物以外には見るべき資産がない旨主張するが、同人は東京都世田谷区内に訴外伊藤格から遣贈を受けた宅地及び建物を所有している。

又控訴人は、その母淑がみちの実子で自己がみちの孫である旨主張するが、淑がみちの実子でないことは、既に淑と被控訴人間の相続権回復訴訟で確定しているのであるから、右主張も誤りである。」

第三証拠関係《省略》

理由

一  本件土地を含む本件(一)、(二)の土地が被控訴人の所有であること、控訴人が本件土地上に本件建物を所有して該土地を占有していることは、当事者間に争いがない。

二  そこで、控訴人の本件土地に対する占有権原の有無について検討する。

1  昭和三七年九月ないし昭和三八年四月頃、被控訴人の母で当時本件(一)、(二)の土地の所有者であった野並みちが控訴人に対して、本件(一)の土地を住居用として貸したこと、昭和四二年九月一七日みちが死亡したため、被控訴人が本件(一)、(二)土地の所有権と共に右(一)の土地に関する貸主の地位を、相続により承継取得したことは、いずれも当事者間に争いがない。

2  控訴人は、本件土地全部につきみちからその使用を許されたとし、右使用を許された契約関係は地上権設定ないし賃貸借の締結である旨主張するが、当裁判所も原審と同様、使用を許されたのは本件(一)の土地のみであり、右契約関係は、地上権設定でも賃貸借の締結でもなく、単に使用貸借関係に過ぎないと判断するものであって、その理由は、左に付加、訂正するほか、原判決八枚目裏二行目から一一枚目裏初行までの記載と同じであるから、これを引用する。

(一)  八枚目裏二行目「野並きよ」を「野並キヨ」と改め、同行目「各証言」及び同二、三行目「各本人尋問の結果」の次に、それぞれ「(いずれも原、当審)」を加え、九枚目裏初行「本件借地」を「本件土地」と改め、一〇枚目表一〇、一一行目「野並きよ」を「野並キヨ」と改め、同一一行目「各証言」及び同行目「各本人尋問の結果」の次に、それぞれ「(いずれも原、当審)」を加え、同裏初行「死亡した日」を「死亡した後程なく」と改める。

(二)  一〇枚目裏五行目の次に、行をかえて左のとおり加える。

「なお、成立に争いのない乙第一六号証並びに弁論の全趣旨によれば、本件貸借と関連して、控訴人とみちの連名で神奈川県知事に対し、昭和三八年六月一〇日付で本件(一)の土地につき農地法五条の規定による許可申請がなされ、同県知事によって同年七月三〇日付で右許可がなされたが、同県知事から控訴人に交付された許可書(乙第一六号証)には、本件(一)の土地の所在地番等の記載の前に「賃借権を設定する土地の表示」なる記載のなされていることが認められ、右記載によれば、右許可申請時にみちにおいて右土地につき賃借権設定の意思を有していたものと解する余地がないでもない。しかしながら、証人野並キヨの証言及び被控訴本人尋問の結果(いずれも当審)によれば、みちは、昭和三六年頃から死亡するまで引続き病床にあったもので、前記許可申請手続を自らの手で進めたことはなく、又当時みちと同居していた被控訴人もその妻キヨもみちに代ってその手続をしたことのないことが認められる(他に右認定を左右するに足る証拠はない。)から、前記許可申請手続は、控訴人が自ら又は代理人を介してこれを進めたものと推認することができる。してみれば、何故に前記許可書に「賃借権を設定する土地」なる表現が用いられるに至ったのか、その理由は詳らかでないけれども、右許可書に右のような記載がなされているとの一事を以て当時みちにおいて賃借権設定の意思を有していたものと認めることはできない。」

3  次に、被控訴人は、前記使用貸借は既に解除により消滅した旨主張するところ、当裁判所も原審と同様、右使用貸借は既に解除されたと判断するものであって、その理由は、左に付加、訂正するほか、原判決一一枚目裏四行目から一三枚目表七行目までの記載と同じであるから、これを引用する。

(一)  一一枚目裏八行目「被告本人尋問の結果」を「成立に争いのない乙第二七号証、証人木戸淑の証言(当審)及び控訴本人尋問の結果(原、当審)」と、同一〇行目「一時勤務の都合で」から一二枚目表三行目「移り住み、」までを「昭和四二年四月転勤により大津市へ転居するまで本件建物に自ら居住し、右転居後は留守番代りに知人を本件建物に居住させていたこと、控訴人は、昭和四四年に再度転勤により東京に戻ったが、以後は都内の公務員宿者に居住するなどして本件建物には居住しなかったところ、昭和四六年七月訴外田部良明に本件建物を賃貸し、以後同人に該建物を占有使用させていること、控訴人と訴外田部との賃貸借は、昭和五一年六月一日川崎簡易裁判所において成立した起訴前の和解によって同年四月一日から昭和五三年三月末日までその期間を更新され、右期間が満了するや、両当事者は、」と、一二枚目裏六行目「田辺」を「田部」と、同行目「一回目」を「昭和五一年四月更新」と、七行目「二回目」を「昭和五三年四月更新」とそれぞれ改める。

(二)  一三枚目表七行目の次に、行をかえて左のとおり加える。

「控訴人は、本件使用貸借は、とりあえず婚姻により居宅のない控訴人に住宅用地を提供するものであったが、その後の土地の利用方法についてまで細かく限定するものではなかった旨、並びに控訴人が本件建物を訴外田部に賃貸した動機は、みちの死後被控訴人が控訴人及びその母淑に対して独善的かつ利己的な態度をとり、淑と被控訴人との間に訴訟が係属するに至ったので、控訴人において本件建物及びその敷地である本件土地を自ら使用することをはばかったためである旨主張するところ、証人木戸淑の証言又び控訴本人尋問の結果(いずれも原、当審)中には右主張に沿う部分がある。しかし、右は、いずれもたやすく採用することができない。

更に、控訴人は、借地人が借地上の持家を地主に無断で第三者に賃貸しても土地の転貸にならないことは異論がなく、この理は借地が使用貸借である場合でも異なるところはないから、本件建物の賃貸を目して借地の用法違反ないし無断転貸ということはできない旨主張する。

一般に建物所有の目的で土地を賃貸借した場合、借地人において借地上の自己所有の建物を第三者に賃貸し、建物敷地として借地の利用を第三者に許容しても、これを目して土地の転貸借とはいえず、従って、この場合、借地人に背信行為があったとはいい難いのが通例である。けだし、右の場合、土地の利用は特段の事情がない限り、建物の利用に伴う間接的なものであって、建物所有のための土地の利用に包含され、独立した意味を有しないと考えられるからである。そして、この理は、土地の利用関係が使用貸借である場合にも一般に妥当するものというべきであるが、他方、用法の違反の点について考えるに、土地の貸主において借地人に対し、地上建物の利用方法について、例えば借地人が右建物に居住して使用するという限定を加え、このことが土地利用の契約の内容をなしている場合に、借地人が右約定に反し貸主に無断で地上建物を第三者に賃貸し、第三者にその占有使用をさせたときは、それが土地の転貸借に該るか否かを問うまでもなく、少なくとも借地の用法の違反になるものというべく、特段の事情がない限り、民法五九四条一、三項によって契約解除事由になると解するのが相当である。

本件の場合、前記説示(原判決引用)のとおり、みちと控訴人間の当初の契約において、控訴人が本件土地に居住して自らこれを使用するという用途が限定されていたものであって、控訴人が本件建物を第三者に賃貸するがごときことは、みちの全く予想しなかったところであり、従って、本件建物の賃貸を許さないことは、本件使用貸借において黙示的に契約の内容をなしていたというべきところ、控訴人において前記事情のもとに昭和四六年七月本件建物を訴外田部に賃貸したのであるから、右賃貸行為は、それ自体で(被控訴人の主張する、本件(二)の土地に跨って本件建物を建築したことの背信性を考慮するまでもなく)、借地の用法違反として、使用貸借の解除事由になるといわなければならない。

なお、控訴人は、控訴人の背信性の有無を判断するうえで、当事者双方の所有財産の多寡、被控訴人の本件土地利用の必要性の有無、本件建物の収去による社会的、経済的損失等が大いに考慮されるべきである旨主張するが、右の諸事項は、控訴人の背信性を否定すべき特段の事情の一内容をなすことがあり得るとしても、それ自体で背信性を否定すべき事由となるものでないことはいうまでもなく、又本件にあらわれた全証拠を以てしても、控訴人の前記用法違反につき背信性を否定すべき特段の事情が存在するとは認められない。」

4  以上のとおり、本件使用貸借は既に解除によって消滅し、控訴人は、本件土地につき占有権原を有しないものといわなければならない。

三  してみれば、控訴人は被控訴人に対し、本件建物を収去して本件土地を明渡し、かつ地代相当額の損害金を支払う義務がある。

そこで、本件土地の適正地代額について判断するに、この点についての当裁判所の判断は、左に付加するほか、原判決一三枚目裏二行目から一五枚目表二行目までの記載と同じであるから、これを引用する。

1  一三枚目裏六行目「証拠のない」の次に、「(成立に争いのない甲第二一号証、第二二号証の一、二並びに証人田村哲夫の証言を以てしては、本件土地に関する地価上昇率及び近隣地代等について的確な証拠があったものとすることはできない。)」を加える。

2  被控訴人は、適正地代の算定方法としては、土地の実際の時価を基準にした方式によるべきであるとして、本件土地の昭和四六年当時の価額を坪当り金一二万円としたうえ、その主張の減額補正率、地価上昇率及び期待利廻りをこれに乗じ、更に固定資産税額及び都市計画税をこれに加算した額が適正地代額である旨主張する。しかしながら、被控訴人主張のような方法によって適正地代額を算定することの妥当性については、大いに疑問があるのみならず、本件土地の昭和四六年当時の価額が坪当り金一二万円であったことについてもこれを認めるに足る確証はなく(前掲田村証言を以てしても、右の事実を肯認するには必ずしも十分ではない。)、被控訴人の主張する地価の上昇率が本件土地の場合にも妥当することについてこれを首肯するに足る資料がないのであるから、本件の場合、被控訴人主張の算定方法を採用することはできない。

次に、控訴人は、本件土地の適正地代額の算定については、土地の公示価格に〇・四ないし〇・五パーセントを乗じた額を一か年当りの地代額とする方式によるべきである旨主張する。控訴人主張の方式が適正地代額算定の合理的な方法の一つであって、実務上採用されているものの一つであることは顕著な事実であるが、他方、原判決の採用した方式も合理的算定方法の一つであることを失わないのであるから、両者のうち、いずれかが絶対的に正しい算定方法であるとすることはできない。結局、本件土地の適正地代額は、裁判所が具体的事実関係に即して判断し決しなければならないが、控訴人主張の算定方式は、東京二三区内の地代の実態調査をして得られたものの総平均値が右方式による算定結果とほゞ合致することから、その合理性が認められるものである(右の事実は、成立に争いのない乙第八号証によってこれを認める。)ところ、本件土地は東京二三区以外の場所に存するため、右方式をそのまま適用することについて若干の疑問があることなどを考慮すれば、本件の場合には、控訴人主張の算定方式にはよらず、むしろ原判決の採用した算定方式によるのが相当であると考える。

四  以上の次第で、控訴人に対して本件建物を収去して本件土地の明渡を命じ、かつ被控訴人が求める本件使用貸借契約解除後の昭和四六年八月一日から昭和五二年三月三一日までの間の前記地代相当損害金合計三三万六三六八円及び同年四月一日から本件土地明渡に至るまで一か月金九七四二円の割合による地代相当損害金の支払を命ずる限度で、被控訴人の本訴請求を認容し、その余の請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴及び附帯控訴は理由がないから、いずれもこれを棄却し、控訴費用及び附帯控訴費用の各負担につき、それぞれ民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉田洋一 裁判官 中村修三 松岡登)

<以下省略>

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