大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2766号 判決

原判決別紙登記目録記載(一)の抵当権設定登記については被控訴人から訴外鈴木三郎への抵当権移転の付記登記(同目録記載(三)の登記)が、同目録記載(二)の所有権移転請求権保全仮登記については同じく被控訴人から右鈴木への所有権移転請求権の移転の付記登記(同目録記載(四)の登記)がそれぞれ経由されていることは、当事者間に争がない。そうすると、被控訴人は、右抵当権設定登記及び所有権移転請求権保全仮登記の抹消については、登記義務者とはなり得ないのであるから、被控訴人に対しこれら各登記の抹消手続を求めた控訴人の本訴請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。

もっとも、所有権移転登記が順次経由された場合における登記抹消においては、中間の登記名義人に対してもその登記の抹消手続を求めなければならないことを引合いに出して、本件の場合においても、付記登記による現在の名義人に対してのみならず、かっての主登記の名義人たる被控訴人に対しても、主登記たる右抵当権設定登記及び所有権移転請求権保全仮登記の抹消手続を求めなければならない(ないしは、求めることができる)とする見解もないではない。しかしながら、本件において控訴人が登記簿上負担のない完全な所有名義を回復するには、付記登記による名義人の鈴木三郎に対し、主登記たる右の各登記そのものの抹消手続を求めれば足り、またかかる手続の可能であることはいうまでもない(最高裁判所昭和四四年四月二二日第三小法廷判決・民集二三巻四号八一五ページ)。そして、かかる抹消の手続過程にあっては、かっての主登記の名義人たる被控訴人の登記が残るということはなく、この点において、所有権移転登記が順次経由されたという右の場合には最終の登記を抹消してもなお中間の登記が残るのと事情を全く異にする。したがって、右に掲げた見解は採用することができない。ただ、何らかの事由により付記登記のみが抹消されれば、かっての主登記の名義人たる被控訴人の登記が再び出現するという事態もあり得るが、これはかかる事態の生じた将来の場合のことであり、本件のごとき所有権に基づく登記抹消請求にあっては、あくまでも現に被控訴人が右抹消の登記義務者であるかどうかを問題とすれば足りるところ、既に鈴木に対し付記登記を済ませかっての主登記の名義人にすぎなくなっている被控訴人は、該主登記の抹消手続の登記義務者としての地位を失っているから、これに対する主登記の抹消請求権は成立する余地がない。

(岡松 賀集 並木)

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