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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2977号・昭53年(ネ)2961号 判決

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。ただし、当審における訴の一部取下げにより原判決主文第一、第二項は次のとおり変更となつた。

一  控訴人大橋富重及び同株式会社伊豆長岡カントリー倶楽部は、被控訴人大仁町に対し、原判決別紙目録第一記載の土地を明渡せ。

二  控訴人大橋富重は、被控訴人田方郡韮山町外二ケ町組合に対し、原判決別紙目録第三、第四の建物を収去し、同第五の建物から退去して、同第二の土地を明渡せ。

控訴人株式会社伊豆長岡カントリー倶楽部は、被控訴人田方郡韮山町外二ケ町組合に対し、原判決別紙目録第三の建物を収去し、同第四、第五の建物から退去して、同第二の土地を明渡せ。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人らの請求を棄却する。

3  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人らの負担とする。

との判決

二  被控訴人ら

控訴棄却の判決

第二  当事者の主張及び証拠関係

次のとおり訂正又は付加するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決五枚目裏八行目に「同年」とあるのを「昭和四五年」と改める。

二  原判決六枚目表五行目から七枚目表三行目までを次のとおり改める。

「七 控訴人大橋は、第二の土地上に第三、第四の建物を所有し(ただし、第三の建物は控訴人カントリー倶楽部と共有)、かつ同地上にある第五の建物を占有している。控訴人カントリー倶楽部は、第一の土地を占有し、また第二の土地上に第三の建物を所有し(ただし控訴人大橋と共有)、同地上にある第四、第五の建物を占有して、右土地を占有している。控訴人森脇文庫は、第二の土地上に第五の建物を所有して、右土地を占有している。

八 よつて、被控訴人大仁町は、控訴人大橋に対しては賃貸借終了による賃貸物返還請求権に基づき、控訴人カントリー倶楽部に対しては所有権に基づき、それぞれ第一の土地を明渡すことを、被控訴人組合は、控訴人大橋に対して賃貸借終了による賃貸物返還請求権に基づき、第三、第四の建物を収去し、第五の建物から退去して、第二の土地を明渡すことを、控訴人カントリー倶楽部に対しては所有権に基づき、第三の建物を収去し、第四、第五の建物から退去して、第二の土地を明渡すことを、控訴人森脇文庫に対しては所有権に基づき、第五の建物を収去して、第二の土地を明渡すことを求める。」

三  原判決一二枚目表五行目「よつて」から同八行目「求める。」までを次のとおり改める。

「よつて有益費償還請求権は存在しない。仮に被控訴人らに控訴人大橋及び同カントリー倶楽部に対する有益費償還義務があるとしても、右償還につき相当の期限の許与を求める。

また、控訴人大橋は有益費償還請求権をもつて延滞賃料債務と対当額で相殺する旨を主張するが、控訴人大橋が右償還請求権を有しないことは前記のとおりであるし、仮に右相殺により延滞賃料債務が消滅したとしても、それにより、すでにされた解除の効力が左右されるものではない。」

四  原判決一二枚目表八行目と九行目との間に、次のとおり加える。

「5 控訴人森脇文庫の主張について

控訴人森脇文庫は、原審において第五の建物を所有して、第二の土地のうちその敷地部分を占有していることを認めていたものであり、それにもかかわらず、当審において右建物が控訴人大橋の所有である旨を主張することは、禁反言の法理により許されず、また右主張は原審において十分提出可能な主張であるのにかかわらず、訴訟を遅延せしめる目的で時機に後れて提出したものであるから、却下されるべきである。」

五  原判決一二枚目裏六行目「第七項のうち」から一〇行目「その余は否認する。」までを、次のとおり改める。

「第七項のうち、控訴人大橋及び同カントリー倶楽部に関する事実はすべて認めるが、控訴人森脇文庫に関する事実は、第五の建物が第二の土地上に存在する事実のみ認める。」

六  原判決一三枚目表一一行目に「毎月」とあるのを「毎年」と改める。

七  原判決一五枚目表一〇行目に「同年」とあるのを「昭和四五年」と改める。

八  原判決二〇枚目表九行目と一〇行目との間に、次のとおり加える。

「(ロ) 控訴人カントリー倶楽部は、昭和三六年八月ころ訴外白井建設株式会社に対し請負代金一二八万八〇〇〇円をもつてゴルフ場内木橋及び開渠新設工事を発注し、右工事の完成により、右控訴人は右訴外会社に対し右同額の請負代金債務を負担した。」

九  原判決二〇枚目裏一行目に「六五〇円」とあるのを「六五〇万円」と改める。

一〇  原判決二五枚目裏一〇行目、二六枚目表一一行目及び二七枚目裏一行目に「及び被告大橋」とあるのをいずれも削除し、二六枚目裏六行目及び一〇行目に「右被告等」とあるのをそれぞれ「被告カントリー倶楽部」と改める。

一一  原判決二六枚目裏五行目に「施工させた。」とあるのを、「施行させ、その完成により、当時右同額の請負代金債務を負担した。」と改める。

一二  原判決二七枚目表二行目に「施工させた。」とあるのを、「施行させ、その完成により、当時右同額の請負代金債務を負担した。」と改める。

一三  原判決二七枚目裏一一行目から二八枚目表一行目までを、次のとおり改める。

「前記2において控訴人カントリー倶楽部が支出したと主張する有益費用のうち、(二)(5)のゴルフコース等改良工事関係費用、(五)の水道施設関係費用、(六)(1)、(2)、(3)、(6)の専用道路関係費用は、いずれも右控訴人ではなく、控訴人大橋が支出したものであり、控訴人大橋は、このほか次の費用を支出している。」

一四  原判決二八枚目表二行目に「昭和三七年六月」とあるのを「昭和三八年」と、五行目に「完成した。」とあるのを「完成し、当時右代金を支払つた。」と改める。

一五  原判決二八枚目表八行目に「道路」とあるのを、「専用道路」と、「注文した。」とあるのを、「注文し、その完成により、当時右代金を支払つた。」とそれぞれ改める。

一六  原判決二八枚目裏一行目から二行目に「注文した。」とあるのを、「注文し、その完成により、当時大成建設に対し、合計二四七万七〇〇〇円の請負代金債務を負担した。」と改める。

一七  原判決二八枚目裏五行目に「注文した。」とあるのを、「注文し、その完成により、当時大成建設に対し、右同額の請負代金債務を負担した。」と改める。

一八  原判決二九枚目表八行目から同裏二行目までを次のとおり改める。

「(二) 控訴人大橋は、本訴において前記各有益費償還請求権のうち、2(二)(5)の八四〇万円、2(六)(3)の六二二〇万円、3(一)の四六一五万円及び3(二)(1)の一八三万円に係る償還請求権をもつて被控訴人ら主張の延滞賃料債権四四九万五四〇〇円と対当額で相殺する。これにより右賃料債務は消滅し被控訴人らのした解除はその効力を生じない。」

一九  原判決三〇枚目表三行目に「破端」とあるのを「破綻」と改める。

二〇  原判決三〇枚目裏一行目と二行目との間に次のとおり加える。

「五 控訴人森脇文庫の主張

第五の建物は、控訴人森脇文庫が控訴人大橋に対して有する貸付金債権の担保として、かねて控訴人大橋から控訴人森脇文庫にその所有権を移転してあつたものであるところ、既に右貸付金が完済されたので、控訴人森脇文庫は、昭和五〇年七月一一日鉾田簡易裁判所における即決和解においてその所有権が控訴人大橋にあることを確認しており、すでに控訴人森脇文庫の所有には属さない。」

二一  証拠関係として、次のとおり付加する。<略>

理由

一当裁判所もまた、被控訴人両名の控訴人らに対する土地明渡請求のうち原判決が認容した部分は、理由があるものと判断する。その理由は、次のとおり訂正又は付加するほか、原判決が理由として説示するところと同一であるから、これを引用する。

1  原判決三一枚目裏八行目「甲第一号証、」の次に、「被告人らと控訴人森脇文庫を除くその余の控訴人らとの間においては成立に争いがなく、被控訴人らと控訴人森脇文庫との間においてはその方式及び趣旨により公務員が作成したものと認められるから、真正な公文書と推認することができる甲」と加える。

2  原判決三二行目裏五行目、「被告大橋は」から三三枚目表六行目「あるばかりか、」までを、次のとおり改め、一一行目の「いずれにしても」を削除する。

「控訴人大橋は、本訴において、その有する有益費償還請求権のうち、ゴルフコース等改良工事費用八四〇万円、専用道路開設費用六二二〇万円、上水道施設工事費用四六一五万円、専用道路舗装工事費用一八三万円に係る償還請求権をもつて被控訴人らが契約解除の理由とした延滞賃料債務四四九万五四〇〇円と対当額で相殺する旨を主張するが、」

3  原判決三三丁裏一行目から三四丁表二行目までを次のとおり改める。

「三 控訴人大橋が第二の土地上に第三、第四の建物を所有し(ただし第三の建物は控訴人カントリー倶楽部と共有)、かつ同地上にある第五の建物を占有していることは当事者間に争いがない。よつて控訴人大橋は、賃貸借終了による賃貸物返還義務に基づき、被控訴人大仁町に対し第一の土地を明渡し、被控訴人組合に対し第三、第四の建物を収去し、かつ第五の建物から退去して、第二の土地を明渡す義務がある。」

4〜6 <証拠関係略>

7 原判決三六枚目裏八行目から三七枚目表六行目までを次のとおり改める。

「3 控訴人カントリー倶楽部及び同森脇文庫は、被控訴人らは控訴人大橋がその開発のため多大の投資をした第一、第二の土地を取り上げ、これを他に転用して巨利を得ようと計画し、田京と通謀の上、前記約束手形を控訴人大橋に無断で田京に返還し、休日続きで資金調達に不都合な時期をねらつて延滞賃料の支払を催告し、支払猶予の懇請を無視して、本件解除したもので、右一連の行動は信義誠実の原則に反するから、控訴人大橋は右賃料延滞につき責めに帰すべき事由はない」

8〜10 <証拠関係略>

11 原判決四〇枚目裏三行目「右補償金を」から五行目「である旨」までを次のとおり改める。

「控訴人大橋は右補償金を昭和四四年度分賃料に充当してほしい旨を被控訴人らに申し入れたのに、被控訴人らがこれを充当しなかつたとし、この事実をも被控訴人らの行動を信義則違反と評価すべき事実関係の一つとして」

12 原判決四〇枚目裏六行目に「被告」とあるのを「原告」と改める。

13 原判決四一枚目裏二行目に「前趣旨」とあるのを、「全趣旨」と改める。

14 原判決四一枚目裏三行目「四月二八日」の次に「ころ控訴人大橋に到達した同日」と加える。

15 原判決四二枚目表五行目「五月二〇日」の次に「付」を加え、「同月二二日」の次に「限り」を加える。

16 原判決四二枚目表七行目から四三枚目表一一行目までを、次のとおり改める。

「三 控訴人カントリー倶楽部が第一の土地を占有していること、第二の土地上に第三の建物を所有し(ただし控訴人大橋と共有)、同地上にある第四、第五の建物を占有して、右土地を占有していることは当事者間に争いがない。そして、控訴人大橋の第一、第二の土地に対する賃借権はすでに消滅していることは右のとおりであり、控訴人カントリー倶楽部はその他の占有権原について何ら主張立証しないから、被控訴人大仁町は第一の土地の所有権に基づき、右控訴人に対し右土地の明渡を、被控訴人組合は第二の土地の所有権に基づき、第三の建物を収去し、第四、第五の建物から退去して、右土地の明渡を求める権利を有する。

第五の建物が第二の土地上にあることは、控訴人森脇文庫との関係でも当事者間に争いがない。右控訴人はすでに第五の建物を所有していない旨を主張し、その主張によれば、第五の建物は、控訴人森脇文庫が控訴人大橋に対して有する貸付金債権の担保として、かねて控訴人大橋から控訴人森脇文庫にその所有権を移転してあつたが、すでに右貸付金が完済されたので、控訴人森脇文庫は、昭和五〇年七月一一日鉾田簡易裁判所における即決和解においてその所有権が控訴人大橋にあることを確認したというのである。しかしながら、本件記録によれば、控訴人森脇文庫は、原審の昭和四八年八月九日の口頭弁論期日で陳述の同年四月二日付答弁書において、右建物がその所有に属することを認め、爾来右和解成立後も昭和五三年九月一四日の原審最終口頭弁論期日に至るまで、右建物が右控訴人の所有に属することを認めて争わず、当審に昭和五四年一一月一日提出の準備書面においてはじめて右主張をなし、あわせてその主張に係る即決和解の和解調書を丙第一号証として提出するに至つたことが認められ、また右丙第一号証の記載によれば、控訴人森脇文庫の控訴人大橋に対する貸付金は昭和三九年六月六日には完済され、控訴人森脇文庫は当時右建物の所有権を失つていたこととなる。それにもかかわらず、右のように本訴提起の昭和四八年当時はもちろん、右和解成立後も右建物がその所有に属することを争わなかつた事実及び成立に争いのない甲第二三、第二四号証によつて認められるところの、登記簿上、右建物の所有名義は現在に至るまで控訴人森脇文庫のままである事実からすれば、本件においては、右控訴人主張の趣旨が記載されている丙第一号証(その成立は当事者間に争いがない。)が存在することの一事をもつてしては(控訴人森脇文庫は、右丙第一号証を提出した以外には、この点につきなんら立証をしようとしない。)、いまだ控訴人森脇文庫が右建物の所有権を失つたと認めるに足りず、右建物は依然その所有に属しているものというべきである。

してみれば、控訴人森脇文庫は右建物を所有することにより、第二の土地のうち右建物の敷地部分を占有しているというべきであるが、その余の部分を占有していると認めるに足りる証拠はない。そして、控訴人大橋の第二の土地に対する賃借権はすでに消滅していることは前示のとおりであり、控訴人森脇文庫はその他の占有権原について何ら主張立証しないから、被控訴人組合は第二の土地の所有権に基づき右控訴人に対し右建物を収去して、その敷地部分の明渡を求める権利を有するが、その余の土地部分については明渡を求める権利を有しない。

17 原判決四三枚目裏五行目から五一枚目表四行目「抗弁は失当であり、」までを次のとおり改める。

「一 控訴人らが主張する有益費用に関し、証拠上認定し得る事実は、以下のとおりであり、それ以外の事実は全くこれを認めるべき証拠がない。

1 控訴人カントリー倶楽部関係

(一)  ゴルフコース造成土木工事費

<証拠>を総合すると、新井堯爾を理事長とする伊豆長岡国際カントリー倶楽部なる者(以下、「国際カントリー」という)は、昭和三五年三月一日ころ訴外飛島土木株式会社に対し請負代金八八〇〇万円でゴルフコース造成土木工事を発注し、更に同年六月ころ該造成工事につき請負代金三四二七万七三〇〇円の追加工事を発注したこと、右訴外会社に対し国際カントリーは昭和三五年三月から同年一〇月三一日までの間に工事代金合計四九〇〇万円を支払つたこと、控訴人カントリー倶楽部は昭和三六年六月一三日にゴルフ場建設工事代内金として右訴外会社に一〇〇〇万円を支払つたこと、控訴人大橋は昭和三八年八月一日にゴルフ場建設工事請負代金支払のため額面九〇〇〇万円の小切手を右訴外会社に交付したこと、控訴人カントリー倶楽部は右同日額面合計八九二三万円の約束手形二通を右訴外会社に預けたことが認められるが、国際カントリーの右支出が控訴人カントリー倶楽部の有益費支出となるべき事由を認めるに足りる証拠も、国際カントリーの右請負契約上の権利義務が右控訴人に承継された事実を認めるに足りる証拠もないし(右控訴人主張のように、国際カントリーが設立中の控訴人カントリー倶楽部であると認めるに足りる証拠はない。)また右控訴人や控訴人大橋のした右支払等が何人のいかなる債務の弁済ないし弁済の手段としてされたものであるかも証拠上明らかではない。

(二)  ゴルフコース芝張工事

(1) <証拠>によれば、国際カントリーは昭和三五年六月一八日訴外坂田種苗株式会社に対し、ゴルフコースの芝張工事を発注し、昭和三五年六月一五日から同年一二月二九日までの間七回にわたり芝張工事代金として右訴外会社に対し合計六八一万五四二八円を支払つたこと、控訴人カントリー倶楽部が右訴外会社に対し昭和三六年六月九日額面合計一四六万八五〇〇円の約束手形二通を交付したことが認められるが、国際カントリーの右支出が控訴人カントリー倶楽部の有益費支出となるべき事由を認めるに足りる証拠も、国際カントリーの右請負契約上の権利義務が右控訴人に承継された事実を認めるに足りる証拠もないし、また右控訴人のした右約束手形の交付が何人のいかなる債務の弁済の手段としてされたものであるかも証拠上明らかでない。

(2) <証拠>によれば、国際カントリーは昭和三六年二月一五日訴外杉山緑化有限会社に対しゴルフコースの芝張工事を発注し、同年三月二二日及び六月一五日に右工事代金として合計二五二万円を支払つたこと、控訴人カントリー倶楽部が右訴外会社に対し同年五月三〇日金一〇〇万円を手形で支払つたことが認められるが、国際カントリーの右支出が控訴人カントリー倶楽部の有益費支出となるべき事由を認めるに足りる証拠も、国際カントリーの右請負契約上の権利義務が右控訴人に承継された事実を認めるに足りる証拠もないし、右控訴人のした右支払が何人のいかなる債務の弁済としてされたものであるかも証拠上明らかでない。

(3) <証拠>によれば、国際カントリーは昭和三六年二月一日訴外<杉芝組合との間においてゴルフコースに所要の芝を右組合から購入する旨の契約を締結した事実が認められるが、国際カントリーの右契約上の権利義務が控訴人カントリー倶楽部に承継されたと認めるべき証拠も、右契約に関して右控訴人の支出又は債務負担を認めるべき証拠もない。

(三)  ゴルフ場専用道路関係工事

(1) <証拠>によれば、国際カントリーは昭和三五年九月一日訴外白井建設株式会社(以下、「白井建設」という。)に対し韮山村中区字金井辻一六一四番地から同字沢の入道の上四一六番の二までの延長3507.3メートルの林道及び農道の改良舗装工事を請負代金五九五〇万円で発注した事実が認められるが、国際カントリーの右請負契約上の権利義務が控訴人カントリー倶楽部に承継されたと認めるべき証拠も、右契約に関して右控訴人の債務負担、支出認めるべき証拠もない。

(2) <証拠>を総合すれば、控訴人カントリー倶楽部は昭和三六年九月一日白井建設に対しゴルフ場構内及び専用道路の災害復旧工事を請負代金一二九六万五八七五円で発注し、その完成により、当時右同額の請負代金債務を負担したことが認められる。

2 控訴人大橋関係

(一)  ゴルフ場専用道路関係工事

(1) <証拠>を総合すれば、控訴人大橋は昭和三八年一〇月三一日ころ大成建設に対しゴルフ場専用道路の舗装工事を請負代金一八三万円で発注し、当時その完成により、右同額の代金を支払つた事実が認められる。

(2) <証拠>を総合すると、控訴人大橋は昭和三八年一一月一九日大成建設に対し韮山町中区鳴滝のゴルフ場専用道路拡巾及び舗装工事を請負代金二三〇〇万円で発注し、更に昭和三九年四月ころ右訴外会社に対しその追加工事を請負代金一七三万七〇〇〇円で発注し、同月二〇日右各工事の完成により、右訴外会社に対し右代金合計二四七三万七〇〇〇円の請負代金債務を負担した事実が認められる。

(3) <証拠>を総合すると、控訴人大橋は昭和三九年三月三〇日大成建設に対し韮山町中区鳴滝のゴルフ場専用道路舗装修理工事を請負代金二一一万三〇〇〇円で発注し、同年四月二五日右工事の完成により右訴外会社に対し右同額の請負代金債務を負担した事実が認められる。

(4) <証拠>によれば、控訴人大橋は昭和三九年六月一五日大成建設に対し伊豆長岡スカイライン第一期工事として韮山町地内の道路工事を請負代金六二二〇万円で発注した事実が認められるが、右道路とゴルフ場ないし第一、第二の土地との関係に関しては、これを認定すべき証拠は何もない。

(二)  水道施設関係工事

<証拠>によれば、控訴人大橋は昭和三八年ころ大成建設に対しゴルフ場の上水道送水設備工事を請負代金四六一五万円で発注し、同年一二月三一日その完成により、そのころ右代金を支払つた事実が認められる。

(三)  ゴルフ場改良工事関係

<証拠>を総合すれば、控訴人大橋は昭和三八年九月ころ大成建設に対し本件ゴルフ場にゴルフ練習場上家他新築工事を請負代金八四〇万円で発注し、同年一一月その完成により右代金を支払つた事実が認められる。

二  ところで、右認定の各費用のうち第一、第二の土地をゴルフ場に造成するために投ぜられた各費用はこれを有益費ということができる。被控訴人らは、ゴルフ場建設は一面自然の破壊であつて、そのための費用は有益費とはいえない旨を主張するが、<証拠>を総合すれば、第一、第二の土地の従前の状況は原野であり、被控訴人らはこれをゴルフ場用地として使用させることを主たる目的として控訴人大橋に賃貸したもので、現時点において第一、第二の土地はゴルフ場として使用する以上に経済的に有利な使用方法はないことが認められるから、従前の原野より造成されたゴルフ場の方が客観的に見て経済的価値があるということができる。被控訴人らの右主張は理由がない。

しかしながら、一に認定の各費用のうちゴルフ場造成のための費用に当たるものは、控訴人カントリー倶楽部の主張に係る1の(一)、(二)の各費用であるところ、まずその費用を支出ないし負担すべき者が控訴人カントリー倶楽部であると認めるに足りる証拠がないことは前示のとおりであり、また、右各費用が第一、第二の土地のいずれに投ぜられたかの点についてもこれを明らかにすべき証拠がない。のみならず、民法第一九六条第二項によれば、回復者は占有者が費したる費用又は増価額のいずれかを選択して償還すれば足りるところ、本件においては右増価額に関する証拠も、あるいは増価額が費された費用を上廻ると認めるべき証拠もないし、回復者たる被控訴人らに対し選択権の行使を催告した事跡も見当らない。これらの点からして、控訴人カントリー倶楽部が右各費用につき償還請求権を有すると認めることはできないし、仮になにほどか有するとしても、その存在する請求権の額を確定するに足りる証拠はない。

また控訴人カントリー倶楽部の主張に係る1の(三)の(2)の費用のうちゴルフ場構内復旧工事の費用はゴルフ場の土地の有益費ということができようが、右費用が第一又は第二の土地のいずれに投ぜられたかについてはこれを明らかにするに足りる証拠がないし、この工事による増価額に関する証拠も、その増価額が費用を上廻ると認めるべき証拠もなく、また回復者たる被控訴人らに対し選択権の行使を催告した事跡も見当らない。したがつて、その償還請求権の存在を認め難く、少くともその額を認定することはできないというべきである。

三  次に一に認定の各費用のうち道路関係工事費用及び水道施設関係工事費用である1の三(ただし、(2)のうちゴルフ場構内復旧工事分を除く。)、2の(一)、(二)について検討するに、まず1の(三)の(1)はその費用を支出ないし負担すべき者が控訴人カントリー倶楽部であると認めるに足りる証拠がないこと前示のとおりである。

また、右道路及び水道施設が第一、第二の土地とどのような関係位置に所在するかについては、これを明らかにする証拠はなく(特に、2の(一)の(4)の道路についてはゴルフ場との関連性も不明である。)、弁論の全趣旨を併せても、これが賃貸借の目的物たる第一、第二の土地と一体となつているものとは必ずしも認め難い。してみれば、これら施設は、第一、第二の土地とは独立の権利の対象となるべき施設であつて、右各土地の所有者ないし所有者から使用収益の権原の設定を受けた者が当然にこれを使用収益し得るものではないから、これら施設のために投じた費用を当然に第一、第二の土地それぞれの有益費ということはできない。もつとも民法第一九六条第二項が回復者の選択に従い費したる費用又は増価額のいずれかを償還せしめることを規定していることからすれば、回復者に選択権の行使を催告し、もし回復者が右のような費用を償還することを選択すれば、その償還を求めることができ、しからざれば、付近にこれら施設が整備されたことにより第一、第二の土地が増価した増価額を償還せしむべきものと解する考え方もあり得ようが、仮にそのように解するとしても、右選択権の行使を催告した事跡も見当らず、第一、第二の土地それぞれの右増価額を認定すべき証拠もない。

してみれば、これら費用について控訴人らが償還請求権を有するとはにわかに認め難く、仮になにほどか有するとしても、その額を確定するに足りる証拠はない。

四 また一に認定の各費用のうち、2の(三)の費用は、第一又は第二の土地の有益費用とは認め難い。けだし右はゴルフ練習場上家他の新築工事の費用であること前示のとおりであるから、むしろ独立の不動産たる家屋の新築費用と認められるべきもので、土地の改良費とは認め難いからである。

五  以上によれば、控訴人カントリー倶楽部又は同大橋が第一又は第二の土地について有益費償還請求権を有するとは認め難く、少くともその額を確定するに足りる証拠はないから、右控訴人らの右請求権に係る留置権の抗弁は失当である。」

二してみれば、原判決中被控訴人両名の控訴人らに対する土地明渡請求につき原判決が認容した部分は相当で、本件各控訴は理由がない。よつて、民事訴訟法第三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担について同法第九五条、第八九条、第九三条本文を適用して、主文のとおり判決する。

(杉本良吉 三好達 柴田保幸)

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