東京高等裁判所 昭和53年(ネ)3074号 判決
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【判旨】
そこで、まず、利息金不払を理由とする控訴人、大出間の賃貸借契約解除について判断するに、再抗弁1、2の事実及び大出が控訴人に対し両者間の前記利息金請求に関する訴訟事件の判決確定後同判決による利息金と右訴訟費用とを支払つたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、大出が控訴人に対し昭和四七年四月分から同五一年一二月分までの地代差額五〇万八一八五円を昭和五二年一月末か二月初め頃に支払つたことが認められ、以上の事実によれば、前記利息金は右地代差額に対する各支払期日の翌日から昭和五二年一月末日までの間の借地法一二条二項但書による利息の合計なのであるから、右利息金債務は賃貸借契約の附随的債務としてその不履行を理由に直ちには本来の賃貸借契約を解除することはできないというべきであるばかりでなく、<証拠>によつて認められるような地代増額についての和解成立後右増額による地代と大出が従来支払つた地代との差額に対する利息請求権の成否をめぐつて控訴人と大出間に争いが生じ、当該訴訟の上告審における破棄自判の判決確定によつてようやくその成立が認められた経緯に照らせば、同判決の確定を見て後大出が控訴人に対し右利息金の支払をなした以上、右不払を理由として控訴人がした控訴人、大出間の契約解除の意思表示はその効力を生じないというべきであるから、いずれにしろ、控訴人の主張は理由がない。
次に、用方違反を理由とする控訴人、大出間の賃貸借契約解除について判断するに、抗弁1の事実(控訴人が大出祥に対し、昭和三年八月、東京都台東区清川一丁目三〇六番一の宅地を賃貸し、昭和一九年一二月大出祥死亡により大出博が賃借人たる地位を承継取得したこと)につき当事者間に争いのないことは前述のとおりであり、また、<証拠>によれば、昭和六年六月控訴人と大出祥との間に前記土地賃貸借契約に附帯して右土地中水晶稲荷の敷地二坪六合について大出祥が借地権を有しない旨の約定がなされたことが認められるところ、他方、<証拠>によれば、前記土地上に存した水晶稲荷の社屋は昭和二〇年三月一〇日戦災により焼失したこと、大出博が昭和二一年頃旧稲荷敷地を含む土地上にバラック(仮診療所)を建築所有し、昭和三五年頃これをガレーヂに建替えて現在に至るまで旧稲荷敷地を占有し、その部分についても契約若しくは時効による賃借権の取得を主張していること、水晶稲荷は現在は大出の賃借地中の旧稲荷敷地以外の部分に祀られていること、右のように戦争をはさんで長年月を経過したため、控訴人も後記賃料増額訴訟を提起する際もこの約定のあることを主張して大出に対し異議を述べることをしなかつたことが認められ、<証拠>によれば、控訴人は昭和五〇年二月二八日大出に対し右土地(水晶稲荷の敷地を除外しない坪数を表示)の賃料増額訴訟を提起し、昭和五一年一二月九日、昭和四七年四月一日から昭和五二年一二月三一日までの右土地の値上げによる賃料月額の確認と昭和五一年六月分までの地代差額の支払につき裁判上の和解が成立したことが認められ、以上の各事実によれば、大出が賃借人たる地位を承継取得した後になした旧稲荷敷地の継続的利用が賃借の意思に基くことは昭和二一年頃同人が同地上にバラックを建築所有し利用したとき以降客観的に表現されたというべきであるから、大出は遅くとも昭和四一年の経過とともに取得時効の完成により旧稲荷敷地の賃借権を取得し、控訴人もこれを容認したものというべきである。
(吉岡進 手代木進 上杉晴一郎)