東京高等裁判所 昭和53年(ネ)641号・昭56年(ネ)1360号・昭53年(ネ)721号 判決
主文
本件各控訴を棄却する。
第一審原告の附帯控訴に基づき原判決主文第一項及び第二項を次のとおり変更する。
第一審被告野口イヱは、第一審原告に対し、原判決添付別紙第一物件目録記載(二)の建物及び本判決添付別紙第二物件目録記載(三)、(1)から(3)までの各建物部分を収去して、右第一物件目録記載(一)の土地を明け渡せ。
第一審被告株式会社野口工務店は、第一審原告に対し、右第一物件目録記載(二)の建物及び右第二物件目録記載(三)、(1)から(3)までの各建物部分から退去して、右第一物件目録記載(一)の土地を明け渡せ。
訴訟費用は、第一審原告と第一審被告野口イヱ、同株式会社野口工務店との関係では、第一、二審とも同第一審被告らの負担とし、第一審原告と第一審被告野口栄三との関係では、控訴費用を第一審原告の負担とする。
事実
第一審被告野口イヱ、同株式会社野口工務店訴訟代理人は、「原判決を取り消す。第一審原告の請求(附帯控訴に基づき当審において追加された請求を含む。)を棄却する。第一審被告イヱ、同会社と第一審原告との間において、同第一審被告らが原判決添付別紙第一物件目録記載(五)の土地部分を通行する権利を有することを確認する。第一審原告は同第一審被告らが右土地部分に通路を開設することを妨害してはならない。訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。」との判決を求め、第一審原告訴訟代理人は、昭和五三年(ネ)第六四一号事件について、控訴棄却の判決を求め、当審において請求の減縮及び附帯控訴により請求を変更して主文第三項及び第四項同旨のほか「訴訟費用は第一、二審とも第一審被告イヱ、同会社の負担とする。」との判決を求め、昭和五三年(ネ)第七二一号事件につき、「原判決を取り消す。第一審原告と第一審被告栄三との間において、第一審原告が原判決添付別紙第一物件目録記載(四)の土地部分を通行する権利を有することを確認する。同第一審被告は、第一審原告が右土地部分に通路を開設することを妨害してはならない。訴訟費用は第一、二審とも同第一審被告の負担とする。」との判決を求め、第一審被告栄三訴訟代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者の主張及び証拠の関係は、次に付加、補正するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。
一 原判決添付別紙第一物件目録記載(三)の建物の表示(原判決一三枚目―記録四四丁―表八行目から一一行目まで)を本判決添付別紙第二物件目録記載(三)(1)から(3)までのとおり改め、原判決添付「別紙図面」を「別紙第一図面」とし、したがって原判決記載「別紙図面」をいずれも「別紙第一図面」と改める。
二 第一審被告イヱ、同会社の反訴請求原因一(原判決七枚目―記録三八丁―裏四行目ないし八行目)を、「原判決添付別紙第一物件目録記載(六)の土地は、もと亡野口政勇の所有であったが、同人の死亡により同人の妻である第一審被告イヱが相続により右土地の所有権を取得し(但し、登記は便宜上娘はる江名義をもって経由した。)、同地上に同目録記載(七)の建物を所有しており、第一審被告会社は第一審被告イヱから右建物を賃借し、これを使用している。」と改める。
三 同反訴請求原因の五として、原判決八枚目―記録三九丁―裏五行目の前に、「五 仮に、前記(六)の土地が第一審被告イヱの所有でないとすれば、右土地は同第一審被告の娘はる江の所有であり、同第一審被告は、右はる江から右土地を無償で借り受けているから、同人に代位して第一審原告に対し、前記囲繞地通行権確認及び通路妨害禁止を求める。」を加える。
四 原判決添付別紙図面(右にいう別紙第一図面)の表示中「302―2被告栄三」とあるのを、「303―2被告栄三」と訂正する。
五 《証拠関係省略》
理由
一 第一審原告の第一審被告イヱ、同会社に対する請求について
当裁判所も、右請求は理由があるから、これを正当として認容すべきものと判断する。その理由は、原判決がその理由(原判決九枚目―記録四〇丁―裏五行目から同一〇枚目―記録四一丁―裏六行目まで)において説示するとおりであるから、これを引用する。
二 第一審原告の第一審被告栄三に対する請求について
原判決添付別紙第一物件目録記載(一)の土地(本項において以下「本件土地」という。)が第一審原告の主張するとおり(原判決三枚目―記録三四丁―表二行目から八行目まで)の経過を辿って、第一審原告の所有に帰しているところ、本件土地が別紙第一図面表示のとおり他人所有の土地に囲まれて公路に通じないことは当事者間に争いがない。
《証拠省略》によれば、本件土地と周辺の土地との場所的関係は、別紙第一図面表示のとおりであり、右表示中の水路及びその敷地は幅員約二・七メートルあり、その幅員の約三分の一中央部分に暗渠が構築されて水路の機能を果しているが、右暗渠の上部コンクリート被覆部分及びその両側舗装水路敷部分は一体として道路状をなし(以下「水路敷道路」という。)、この水路敷道路とほぼ平行して南北に通ずる幅員三・五メートルの道路すなわち二九七番四の土地は、登記簿上の地目表示のとおり公衆用道路であって、水路敷道路とともに公衆が自由に通行しうる道路となっていること、東側で水路敷道路と接し、西側で本件土地と接して両者を隔絶させている二九六番四の土地は国有地であり、右国有地の北側及び南側でそれぞれ接する二九六番二、五及び二九六番三の土地はいずれも小林卓郎の所有地であるところ、右国有地の西側およそ半分は、右小林が国から賃借してその所有地二九六番三の土地の西側の一部と共に、二九六番五の土地上に所在する同人方居宅の庭園として使用し、右国有地の東側半分は空地のまま放置されていて、灌木の群生している一部を除いて公衆が自由に通行しうる通路となっていること、また、二九六番三の土地のうち前記西側庭園部分と、公衆用道路が南から北へ貫いて右国有地内に至る通路状部分とを除いて東側は駐車場であるが、公衆用道路の右延長通路状部分及び右国有地の東側通路部分は、水路敷道路と公衆用道路とを繋ぐ通路として公衆が自由に使用しうる状態を呈しているほか、右国有地東側部分にはその北側隣接地二九六番五所在の小林卓郎方居宅から水路敷道路に至るまでの通路に利用されているところもあること、水路敷道路は、北端末部で幹線道路「所沢街道」に入り、南端末部で幅員六メートルを擁する公道と繋り、全長約一〇八メートル、幅員二・七メートルながら、生活道路としてその機能を十分に果していることが認められる。かように認めることができ、右認定をうごかすに足りる証拠はないから、本件水路敷道路は民法二一〇条、二一三条の規定にいう「公路」に当るというべきである。
右の認定事実によれば、本件土地は、公路に接する国有地二九六番四を囲繞地の一つとする袋地であることが明らかであるところ、《証拠省略》によると、本件土地及び右国有地はもともと自創法買収農地として国の所有に帰していたか、国において右買収農地の一部である本件土地を農地法八〇条により売り払うこととして昭和四八年九月二〇日に第一審原告に売り払い、同年一〇月三〇日に本件土地につきその旨の所有権移転登記を経由したことが認められるから、本件土地は国の買収農地の一部として当時袋地ではなかったところ、右買収農地の一部の売り払いによって袋地となったといわなければならない。したがって、第一審原告は、袋地である本件土地の所有者として、右の一部売り払いの残部である国有地二九六番四についてのみその法定通行権を行使することができる筋合のものというべきである(民法二一三条二項)。もっとも、弁論の全趣旨により認められるところであるが、右買収農地の一部売り払いが農地法八〇条二項の規定による行政処分であることといい、本件土地は、本件土地を含む所有農地旧三〇三番について昭和五年いらい分筆及び一部譲渡がくりかえされたことによっていちどは袋地となったりしたが、昭和二三年に自創法買収によって隣接の二九六番四ともに国有地となって公路たる水路敷道路に直接接するにいたって袋地でなくなった経過を辿ったことといい、いずれも、前示認定を妨げるものではないというべきである。
そうすると、第一審原告の第一審被告野口栄三に対する請求は、さらに進んで検討するまでもなく、理由のないことが明らかである。
三 第一審被告イヱ、同会社の反訴請求について
本件請求において、第一審被告野口イヱ、同株式会社野口工務店は、原判決添付別紙第一物件目録記載(六)の土地の所有権にもとづいて、その囲繞地の一つである三〇三番五の土地につき法定通行権を主張し、しかも右主張は、三〇三番二、六の各土地の一部分(別紙第一図面(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(イ)を順次結ぶ範囲の土地)につき賃借権にもとづく通路としての使用権限を同第一審被告らにおいて有することを前提とし、かつ、争点とするものであるところ、右通路使用範囲の土地につき賃借権を有することを肯認するに足りる証拠がみあたらない。そして同第一審被告らの主張する三〇三番五についての通行の場所及び方法が囲繞地のために損害の最も少ないものであることにつき首肯しうべき主張及び立証するところがない。したがって同第一審被告らの本件反訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、理由を欠くものといわなければならない。
四 以上の理由説示によれば、原判決中、第一審原告の控訴及び第一審被告野口イヱ、同株式会社野口工務店の控訴は、いずれも理由のないことが明らかであるから、失当としてそれぞれ棄却することとし、なお第一審原告の当審における請求の減縮及び附帯控訴にもとづき主文第三項及び第四項のとおり原判決を変更し、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、九六条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中川幹郎 裁判官 真榮田哲 木下重康)
<以下省略>