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東京高等裁判所 昭和53年(ラ)1301号 決定

抗告人の本件仮処分申請の当否について考察する。

疎明資料によれば、抗告人は、名称を「シヤツター捲き取りホイール」とする実用新案登録第一一五六二六四号考案(昭和四四年一二月八日出願、昭和五二年一月三一日登録。別紙第三目録記載のとおり。以下、「本件考案」という。)の実用新案権者であること、相手方は、別紙第一、第二目録記載の各シヤツター捲き取りホイール(以下、「本件各製品」という。)を製造し、販売していることが認められる。

本件考案の実用新案公報(明細書)によれば、本件考案の要旨は、次のとおりであることが明らかである。

「その外周縁にシヤツター捲取部を備え、中心にラジアルローラーベアリングの転動体及び保持器もしくはラジアルローラーベアリングを回動自在かつ摺動自在に嵌め込み、蓋体で抜脱を防止するようにしたものにおいて、前記蓋体にフランジを突設して構成したことを特徴とするシヤツター捲き取りホイール。」

しかして、右明細書によれば、従来、商店各種家屋等において用いられる手動捲上げ式シヤツターは、断面において略溝形を示す二個の捲き取りホイールを支持軸に回動自在に軸着すると共に、捲き取りホイールのシヤツター捲取部に設けた透孔にシヤツター先端の掛止片を掛止し、捲き取りホイールを回動させて、これにシヤツターを捲き取るものであつて、捲き取りホイールの回動を容易にするため、ばねを捲き取りホイールと支持軸との間に弾装し、また、支持軸に軸着するため捲き取りホイールには玉軸受が装着されているところ、シヤツターは、通常鋼製で重量があり、偏平でもなければ薄くもないので、捲き取りホイールには、不均等なしかも大きな荷重がかかり、このため、捲き取りホイールにガタつきが来ることが多く、そして、弾装したばねの復元力によつて、捲き取つたシヤツターが片側に寄ることも、ガタつきを助長していたこと、本件考案は、ガタつきの来ない耐久性に優れたシヤツターの捲き取りホイールの提供を目的とするものであること、本件考案が、蓋体にフランジを突設すると共に、ラジアルローラーベアリングの転動体及び保持器を蓋体内に収容し、支持軸への当接面積を大きなものとしたことにより、捲き取りホイールにかかる不均一なしかも大きな荷重とシヤツターの片寄りに基因する捲き取りホイールのガタつきを防止することに成功したものであること、更に、本件考案は、ラジアルローラーベアリングの転動体及び保持器を支持軸方向に摺動しうるように蓋体内に収容することにより、ガードレール枠内を上方もしくは下方に摺動するシヤツターの横振れによる捲き取りホイールのガタつきも防止することができること、以上の事実が認められる。

右事実によれば、本件考案は、蓋体にフランジを突設したことと、ラジアルローラーベアリングを用いたことが相まつて、支持軸への当接面積を大きなものとしたこと及びラジアルローラーベアリングを支持軸方向に摺動自在に嵌め込んだことに特色があることが明らかであるから、構成要件として、少なくとも、次の事項を備えているというべきである。

(イ) 中心にラジアルローラーベアリングの転動体及び保持器もしくはラジアルローラーベアリングを嵌め込んであること。

(ロ) 右ラジアルローラーベアリングの転動体及び保持器もしくはラジアルローラーベアリングは回動自在かつ摺動自在であること。

(ハ) 蓋体に支持軸とほぼ同径でこれに接するようにフランジを突設してあること。

これに対して、本件各製品は、別紙第一、第二目録記載の図面及び構成の説明によれば、中心に嵌め込んであるのは、二列に配列されたラジアルボールベアリングの転動体及び保持器であること、右ラジアルボールベアリングの転動体及び保持器は支持軸方向に特に摺動自在として構成されたものではないこと、支持軸とフランジは接する構造ではないこと(支持軸の外面とフランジの内面との間にはいわゆる遊びを超える間隙が存在すること、フランジの開口縁が内側に絞られているため、支持軸の外周面とフランジの内周面とは平行でないことからみて、両者は接する構造とはいえない。)、以上の事実を認めることができる。

しかしてボールベアリングの場合は、支持軸とは点接触となり、ローラーベアリングのように大きな当接面積を期待することは不可能であり、しかも、本件製品においては、フランジと支持軸とが接する構造ではないから、軸受部とフランジが相まつて支持軸への当接面積を大きなものにするということは到底期待できない。

そうであれば、本件各製品は、本件考案の構成要件を充足するものとはいいがたく、その技術的範囲に属するものということはできない。

したがつて、抗告人の本件仮処分申請は、被保全権利について疎明がないことに帰し、疎明に代る保証を立てさせて仮処分命令を発することも相当ではない。

よつて、抗告人の申請を却下した原決定は相当であつて、本件抗告は理由がないから、これを棄却することとする。

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