東京高等裁判所 昭和53年(ラ)360号 決定
〔主文〕
一 原審判を取消す。
二 被相続人山川覚(本籍東京都○○区○○○○丁目○○○番地、最後の住所同所同番地、昭和三一年一月七日死亡)の遺産を次のとおり分割する。
1 別紙遺産目録(一)記載の建物の所有権及び同目録(二)記載の借地権は、被抗告人山川広の単独取得とする。
2 被抗告人山川広は、
(一) 抗告人山川昇に対し金一一三万六、二〇〇円、
(二) 被抗告人豊田猛に対し金三九七万六、七〇〇円、
(三) 被抗告人山川茂に対し金三九七万六、七〇〇円、
及び、右各金員に対する本審判確定の日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
3 被抗告人奥村百合子は遺産を取得しない。
4 抗告人山川昇、被抗告人奥村百合子、被抗告人豊田猛及び被抗告人山川茂は被抗告人山川広に対し、別紙遺産目録(一)記載の建物につき、被抗告人山川広の単独取得とするための遺産分割を原因とする共有持分権移転登記手続をせよ。
三 手続費用のうち、鑑定人杉本治に支給した金七万円は、被抗告人山川広三〇分の一四、被抗告人豊田猛、同山川茂各三〇分の七、抗告人山川昇三〇分の二の割合によりそれぞれ負担するものと定める。その償還として、被抗告人豊田猛、同山川茂は、被抗告人山川広に対し各金一万三、六六六円、抗告人山川昇に対し各金二、六六七円、をそれぞれ支払え。
【判旨】
一本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。
1 抗告理由一について
所論は要するに、被抗告人山川広の具体的相続分を一割増加し、抗告人山川昇らの具体的相続分を一割減じ、同被抗告人に遺産を単独取得させるとともに、その代償の支払を命じた原審判は違法不当であるというのである。
よつて考えるに、当裁判所も本件の遺産分割として、遺産である本件建物及び借地権の全部を被抗告人山川広の単独取得とし、同人に被抗告人奥村百合子を除くその余の相続人らに対する債務を負担させる原審判の採用した分割方法は、記録に照らして是認することができ、原審における抗告人審問の結果やその援用する各証拠によつても、右認定・判断を覆えすには足りない。しかしながら被抗告人山川広の具体的相続分につき法定相続分のほかに一割を加え被抗告人奥村百合子を除くその余の相続人の具体的相続分につき法定相続分から一割を減ずべきものとした原審判の判断は、被抗告人広が本件遺産の維持に貢献したと認めるべき事実上の根拠に乏しく、かつ、遺産分割の審判において家庭裁判所が裁量により相続分を増減することは法律上の根拠を欠き許されないものというべきであり、原審判はこの点で失当であり、これが審判に影響を及ぼすことは明らかであるから、原審判は取消を免れない。
二以上によれば、原審判は取消を免れないものの、当裁判所がみずから事件につき審判に代わる裁判をするのが相当であると認められる。
本件相続人が抗告人及び被抗告人であること、被抗告人奥村百合子はその相続分を全部を同山川広に贈与したこと、抗告人の相続分が三〇分の二、被抗告人山川広の相続分が三〇分の一四、同豊田猛、同山川茂の相続分が各三〇分の七となること、被相続人山川覚の遺産が別紙遺産目録記載の建物及び借地権であること、本件遺産全部を被抗告人山川広の単独取得とし、被抗告人奥村百合子を除くその余の相続人らに対し同被抗告人が債務を負担する方法によつて遺産分割をするのが相当であることは、何れも原審判理由の記載と同一であるから、これを引用する。
ところで、現在における本件遺産の評価は、前述のように金一七〇四万三、〇〇〇円とするのが相当と認められるから、これを前記相続分に従つて計算すると、抗告人取得分は金一一三万六、二〇〇円、被抗告人豊田猛、同山川茂の各取得分は金三九七万六、七〇〇円に相当することになる。
三よつて、家事審判規則第一八条、第一九条を適用して原審判を取消したうえ自判することとし、被相続人山川覚の遺産の分割として、別紙遺産目録記載の建物及び借地権は被抗告人山川広において単独で取得するものとし、その代償として、同被抗告人には、抗告人山川昇に対し金一一三万六、二〇〇円、被抗告人豊田猛、同山川茂に対し各金三九七万六、七〇〇円の債務を負担させ、なお、これらの各債務については民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を付すべきものとし、手続費用については、家事審判法第七条、非訟事件手続法第二六条、第二七条を適用して、主文のとおり決定する。
(外山四郎 清水次郎 鬼頭季郎)