大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和53年(ラ)410号 決定 1978年8月22日

抗告人 渡辺進

抗告人 鈴木隆

主文

本件抗告をいずれも棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一  抗告人らは、「原審判を取消す。本件を千葉家庭裁判所木更津支部に差戻す。」との裁判を求め、その理由とするところは、「抗告人らの直系尊属はいずれも被相続人渡辺孫七の親族であり、被相続人の生前より縁故関係の交流があり、そのため被相続人の死後もその所有にかかる本件土地を抗告人らが管理して現在に至っているのである。以上のとおり抗告人ら先代よりの被相続人との特別な縁故関係は現在の抗告人らにも続いており、これを認めなかった原審判は不当である。」というにある。

二  原審及び当審において取り調べた一件記録添付の証拠によれば、原審判認定の事実が認められ(但し原審判三枚目表一〇行目「財産管理人が選任されるまで」を削る)、抗告人らの直系尊属らと被相続人生存中における特別な縁故関係はこれを認めるに足りない。

してみると、抗告人らはその先代をも視野にいれても、原審判認定のとおり被相続人渡辺孫七の死後主として同人の祭祀をめぐって特別な縁故関係を持つに至ったものといわなければならない。

三  当裁判所は、原審判が説く民法第九五八条の三の文意ないし法意からして、被相続人の相続財産の分与を求め得る者は、被相続人生存中における特別な縁故関係者に限られ、死後、とくに祭祀をめぐって縁故を持つに至った者は除かれるべきものと考える。もっとも、被相続人の死後その菩提を弔うに至った寺院等特段の関係にある者は別としなければならないが、抗告人らには未だこの種の特段の関係を認めるに由ない。

四  以上の次第であるから、抗告人らの本件申立を却下した原審判は相当であり、本件抗告はいずれも理由がない。よって主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 西村宏一 裁判官 高林克己 高野耕一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例