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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)144号 判決

原告の請求の原因及び主張の一、二は当事者間に争いがない。

そこで審決には、これを取消すべき瑕疵があるかどうかについて考える。

本件特許発明の特許請求の範囲は、前認定のように、「前方もしくは前斜方向に噴風するように開口した多数の噴風孔を設けた多孔壁比重撰粒盤の後方行程に多孔壁粒大撰粒盤を設けたことを特徴とする石抜撰穀機。」であるところ、右特許請求の範囲中には、特に多孔壁比重撰粒盤及び多孔壁粒大撰粒盤のいずれもが後方に傾斜しておらず、且つ振動しないものを除外する旨の記載がないので、本件特許発明は、審決のいうように、そのようなものも含まれると一応みえないでもない。しかして、もし本件特許発明における石抜撰穀機がそのようなものであるときは、「多孔壁比重撰粒盤上で穀粒と粒大の重い土砂微粒子を風によつて前方に吹送した後の軽粒子をどのようにして多孔壁粒大撰粒盤に移送するのか、また多孔壁粒大撰粒盤においてどのようにして完全粒子を得るのかが、発明の詳細な説明の記載では、当業者にとつて明らかでない」ことになるもまた審決のいうとおりである。

しかしながら、本件特許発明は多孔壁比重撰粒盤の後方行程に多孔壁粒大撰粒盤を設けたことを特徴とする石抜撰穀機に関するものであり(成立について争いのない甲第二号証―本件特許公報―左欄第四行ないし第七行及び特許請求の範囲参照)、比重撰粒盤あるいは粒大撰粒盤における穀類の移送方法そのもの又はその改良方法を目的課題とするものではないから、本件特許発明がその特許請求の範囲の文言上、一応水平且つ無振動の撰粒盤をも含んでいるとされるとしても、そのようなものは本件特許発明には包含されていないとみるを相当とする。けだし、水平且つ無振動の撰粒盤は、撰粒の目的を達し得ないものと認められる(比重撰粒盤において、水平且つ無振動のものは従来なかつたし、またそのようなものは比重撰粒の目的を達し得ないものであることは、当事者間に争いがない。)ところであり、本件特許発明の発明者(出願人)は、そのようなものまで含めて特許請求する意思はなかつたことは客観的に明らかであり、本件特許権もそのようなものを除外して与えられたものと解すべきであつて、特に特許請求の範囲中に、そのような実施不可能なものを除外する旨記載しなければならないとする理由はないからである。

本件特許明細書中には、審決が指摘するように、「この発明は撰粒盤が振動する場合にも停止する場合にも用いられる」(右欄第一八、一九行)との記載はあるが、右の記載は、前段に述べたような理由から、撰粒盤が水平あるいは傾斜した状態で振動する場合にも、また傾斜した状態で無振動の場合にも用いられる、との意に解すべきものである。

そうすると、審決が、本件特許発明の明細書の特許請求の範囲には発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載していないものと認定判断したのは違法であるといわなければならない。

被告は、本件特許発明が、明細書記載のとおり、穀粒の粒大と近似な土砂大粒子と穀粒よりはるかに小さい土砂微粒子とが互に多孔壁比重撰粒盤行程の逆方向に撰出される原理を新しく見出し、これを、大小の混合土砂微粒子をことごとく穀粒と撰別する目的を達成するのに利用するものである以上、その原理の利用及びその目的の達成に必要な多孔壁比重撰粒盤の傾斜、撰粒盤の振動の有無について、その条件を全て特許請求の範囲に明記して必須要件を明示すべきであると主張する(二の(二)及び(三))が、本件明細書によれば、本件特許発明の発明者は、大小の混合土砂粒子をことごとく穀粒と撰別する目的のために、前記のような原理を利用して、多孔壁比重撰粒盤の後方行程に多孔壁粒大撰粒盤を設けるという新規な石抜撰穀機を発明したものであることが認められるのであつて、右のような目的達成のために前記のような原理(それが原告において新たに見出したものであると否とを問わない。)を利用したからといつて、両撰粒盤の前後関係のほかに、特許請求の範囲に撰粒目的達成のためのあらゆる条件を記載しなければならないということはない。被告の主張は、理由がない。

以上のとおりであるから、審決は、原告主張のその余の点についての判断をなすを要せずして違法として取消を免れない。

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