東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)148号 判決
一 原告の請求原因及び主張の一、二は、当事者間に争いがない。
そこで、本件審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて考える。
二 原告は、原告が本件商標をその指定商品について使用し、戦後わが国に輸出したのは昭和三六年であり、以来引続き輸出販売しているが、その間本件商標は常に「ロイヤル パリ」と称呼され、単に「ローヤル」、「ロイヤル」と称呼され取引された事実はなかつたにもかかわらず、審決が、本件商標からは「ローヤル」の称呼も生ずるとし、その称呼と引用登録商標から生ずる称呼とを比較して両者を類似すると判断したのは誤りであると主張する。
証人永野人の証言によれば、同人は原告から、本件商標の指定商品に属する手芸用材料である採色デザインをプリントしたキヤンバスあるいはキヤンバスと刺しゆう用糸をセツトにしたものを年間多い時で金額にして二〇〇万円くらいのものを輸入し、それを卸売業者に販売し、卸売業者はデパートその他の小売業者に販売しているが、原告から右のようなキヤンバスをわが国に輸入している者は同証人のほかにはいないこと、原告は本件商標の指定商品中右に述べたようなキヤンバス等の手芸品専門の会社であること、右証人が右のキヤンバスを卸売業者に卸売するときは、「ローヤル、」「ロイヤル」とは呼ばず、「ロイヤル パリ」と呼称しており、デパートでも「ロイヤル パリ」の呼称を使用して販売していることを認めることができる。
しかしながら、右事実が存在するからといつて、本件商標からは「ロイヤル パリ」の称呼のみが生じ、「ローヤル」、「ロイヤル」の称呼は生じないとすることはできない。その理由は、審決の述べる理由に、本件商標は中央に王冠の図形を描き、その左に「ROYAL」、その右に「PARIS」の各欧文活字のやや変態的な書体の文字を一列に配してなるものであつて、「ROYAL」と「PARIS」とは外観上も分離されているから、称呼上も両者は分離される蓋然性が高いということを加えるほかに、審決の述べるところと同様である。そうであるから、仮に前認定のように、前記キヤンバスの卸売業者、小売業者の間においては、右キヤンバスが「ロイヤル パリ」とのみ呼称されて取引されているとしても、一般需要者の間においてまでそれが「ロイヤル パリ」とのみ呼称され、「ローヤル」、「ロイヤル」の称呼をもつて取引されることがないということはできない。しかも本件出願にかかる商標の指定商品は前記キヤンバスのみではなく、「マツト、じゆうたん、その他の敷き物、カーテン、テーブル掛け、壁かけ、その他の室内装置用布製品」を含むものであるから、キヤンバスについては「ロイヤル パリ」の称呼で取引されているとしても、その称呼による取引が指定商品全般について及ぶものとすることはできない。以上要するに、本件商標が「ローヤル」、「ロイヤル」と称呼されて取引されることも決して少くないといわざるをえない。原告の主張は理由がない。
三 原告は、「ROYAL」、あるいは「ローヤル」の後に商品の品質、性能、用途を表示すると思われる語又は他の既成語を配してなる商標が多数登録されており、これらの商標からは「ローヤル」の称呼も生じ得べきはずであるのに、これらが引用例との併存を許されていることからすれば、本件商標も当然登録されるべきものであるとの趣旨の主張をするが、そのような登録例があるとしてもすべてその登録査定が正しいということはできないのみならず、商標の類否の判断は各商標につき個別的になすべき性質のものであることは当然であり、登録例における既成語等と本件商標における「PARIS」とは識別力の点でも同一に判断しなければならない理由はないから、原告主張の登録例の存在することによつて直ちに本件商標も登録すべきであるということにはならない。
四 以上のとおりであるから、審決に判断の誤りありとしてその取消を求める原告の請求は理由がない。
〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。
本件商標
<省略>
引用登録商標(登録第528420号)
<省略>