東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)153号 判決
一 請求原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。そこで、原告主張の審決取消事由の存否について、判断する。
二1 (引用例の技術内容の認定)
成立に争いのない甲第三号証及び乙第一号証の一ないし三によれば、引用例のものにおける連結部材と器体あるいは延長管との接続は、連結部材に設けられたピン(25)及び金属ブツシング(20)(蓋体も同様のピン及びブツシングを備えているものと推認できる。)が、器体に設けられた端子(13)(14)(延長管も同様の端子を備えているものと推認できる。)に電気接触していることによりされていることが認められる。そうであれば、審決のいう「一対のピン」は連結部材に設けられたピン(25)及び金属ブツシング(20)を指すものと認められるが、これを「一対のピン」とした審決は、必ずしも適切ではないが、以下に述べるところから明らかなように、審決の結論には影響がないものと認められる。
2 (相違点(1)についての判断)
成立に争いのない乙第二号証ないし第四号証及び弁論の全趣旨によれば、照明器具の機械的結合と電気的結合の双方をL型接触杆、通孔及び端子からなる構造によつて行なう結合手段(引掛式結合手段)は、周知慣用の技術であることが認められる。そうであれば、本件発明における結合手段と引用例のものの結合手段とが相違していても、引用例のものの結合手段(ねじ込み式結合手段)の代りに右周知慣用の技術(引掛式結合手段)を用いることに困難性があるとは認められない。
相違点(1)に関して原告の主張する効果も周知慣用の引掛式結合手段を用いることの当然の効果であるにすぎない。相違点(1)に関する審決の判断に誤りはない。
3 (相違点(3)についての判断)
審決は、相違点(3)について、「吊下げ部材の下端に取付けられるもの及びこれに結合されるものが、前者はソケツト本体上部及びソケツト本体下部であるのに対し、後者は延長管及び連結部材である」としており、本件発明のソケツト本体上部と引用例の延長管とが対応し、また、本件発明のソケツト本体下部と引用例の連結部材(正確には、連結部材(16)及びこれに付属するランプソケツト(43)などを含む部分全体)とが対応するものと認定しているものとみることができる。もつとも、審決は、「ソケツト本体が連結部材で支持される引用例」としている部分もあるが、ここでいうソケツト本体は連結部材に付属するランプソケツト(43)を指しており、前記のように、本件発明のソケツト本体上部と引用例の延長管とを対応させ、また、本以発明のソケツト本体下部と引用例の連結部材とを対応させていることに変りはないとみることができる。
ところで、引用例には、吊下げ部材と電球との間を延長管(吊下げ部材側)と連結部材(電球側)とに分割し、中間接続体部分(蓋体、吊下げ部材及び延長管)を器体と連結部材間に装着させるか否かにより、吊下げ型(連結部材を中間接続体部分を介して吊下げる)と直付け型(連結部材を器体に直接取付ける)とに選択使用できるようにすることが開示されている。
しかして、本件発明と引用例におけるそれぞれの照明器具の各構成要素を対応させて検討すれば、本件発明は、コードにソケツト本体を直接取付けるようにした従来慣用の照明器具に、引用例に開示されたような分割構造を適用して中間接続体部分を器体に装着させるか否かにより、吊下げ型と直付け型とに選択使用できるようにしたものであることが明らかである。要するに、本件発明は、前述の従来慣用の照明器具に引用例に開示された技術思想を単に適用したにすぎないものということができる。この点に関する審決の説示は、やや説明不足の感はあるが、結局において、相違点(3)にも格別の発明は存在しないと判断したものであつて、その結論に誤りはないということができる。
4 (作用効果についての判断)
原告は、本件発明は構造がきわめて簡単であり、設計自由度が高く、また、ソケツト本体下部を器体あるいはソケツト本体上部に対し、そのまま取付けたり、そのまま取りはずすだけのきわめて簡単な工事で直付け型と吊下げ型との相互変更が可能であるという作業性のよい構造を有していると主張するが、前述のとおり、いわゆる引掛式結合手段は周知慣用の技術であり、原告の主張する本件発明の効果も、右周知慣用の技術そのものの有する効果ないしは右周知慣用の技術を引用例のような吊下げ型と直付け型とに相互に変更できる照明器具の結合手段に適用したことにより当然予測される効果であつて、本件発明に特有の顕著な効果ということはできない。
三 右のとおりである以上、本件発明は、引用例に記載された事項及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、とした審決に誤りはない。
よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。
〔編註〕 本件における特許発明の要旨は左のとおりである。
電源電線接続部を有する器体と、端子に連設せるL型接触杆を有する蓋体とで引掛シーリングローゼツトを構成して、その器体に穿設せる通孔を介して蓋体のL型接触杆を挿入して器体の接触端子板と蓋体のL型接触杆とを着脱自在に電気接触させるようにし、また、内部に端子を装着せるソケツト本体上部と、L型接触杆を有するソケツト本体下部とでソケツト本体を構成して、ソケツト本体上部に穿設せる通孔を介してソケツト本体下部のL型接触杆を挿入してソケツト本体上部の端子に着脱自在に電気接触させ、かつ、引掛シーリングローゼツトの蓋体の端子とソケツト本体上部の端子とをコードで接続してなる照明器具。