東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)173号 判決
一 本件の争点は、本願商標からどのような称呼が生ずるか、即ち、本願商標からは、「ルポル」の称呼のみが生じ、「ポル」の称呼は生じないのかどうかであるから、以下この点を検討する。
本願商標は、別紙のとおりのものであることは当事者間に争いがないから、本願商標は、「pol」の欧文字が大きく太く横書きに書き表わされ、その左肩に、フランス語の定冠詞を示すと見られる「le」の欧文字を小さく細く付記して成るものである。そうすると本願商標を客観的に見た場合には、その全体の構成に相応した「ルポル」という称呼が生ずるとしても、本願商標の指定商品の一般取引者、需要者は、本願商標の構成部分のうち、前記のとおり顕著に書き表わされた「pol」の部分に注意を惹かれ、ここから生ずる「ポル」の称呼をもつて取引にあたる場合も少からずありうるというべきである。
ところで原告は、本願商標は、取引の実情においては、「ルポル」と一連に称呼されており、「ポル」と称呼されることはありえないと主張する。
もとより、本件審決で問題となつている商標法四条一項一一号における商標の類否判断は、当該商標の指定商品の一般の取引者、需要者が誤認混同するかどうかという見地からしなければならないから、当該商標からどのような称呼が生ずるかは、右取引者、需要者が取引の実情において、どのように称呼するかということを考慮しなければならないことは当然である。したがつて、当該商標から観念的に、二つの称呼が生ずる場合でも、取引の実際においては、一つの称呼のみが右取引者、需要者に周知著名で、これのみが通用しており、他の称呼を排除するに至つているときには、この他の称呼を類否判断において考慮する必要がなくなるということはできる。
ところが、原告の主張するところは、本願商標の指定商品の一部である「手づくりネクタイ」について原告が、現実の取引をしており、その取引分野において「ルポル」という称呼が周知著名になりつつあるというに過ぎず、本願商標の指定商品である第一七類全般の一般取引者、需要者にとつてまで「ルポル」という称呼が周知著名となつているというものではないから、原告の主張する周知著名性は、前記の本願商標から生じうべき「ポル」の称呼を排除する程度には至つていないというべきである。
また原告は、本願商標は、原告の商号をその構成要素とするから、取引の実情において「ポル」と称呼されることはないと主張するが、本願商標の指定商品の一般取引者、需要者が、本願商標の構成のみを見て、常に原告の商号を想起すると認めるに足りる証拠はないから、本願商標が、取引の実情において「ポル」と称呼されることがないということはできない。
そうすると、本願商標から「ポル」の称呼をも生ずることは否定できない。
次に成立に争いのない甲第二号証によれば、引用商標の構成および称呼は審決で認定されているとおりのものと認められる。そして、本願商標から生ずる「ポル」の称呼と引用商標から生ずる「ポル」の称呼は、審決の説示するとおり類似しているということができるから、本願商標と引用商標は称呼上類似の商標である。
二 以上検討したところによれば、本件審決に原告主張の違法はないことに帰着するから、原告の本訴請求を棄却する。
〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。
本願商標
<省略>