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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)177号 判決

審決取消事由の存否について判断する。

成立に争いのない甲第四号証(本件発明の特許公報)によれば、原告が主張する本件発明の第四段階が次の(イ)(ロ)(ハ)よりなることが明らかである。

(イ) 舗装作業の一スパン終了に次いでダンプ車を移動車のジブクレーンにより吊上げる。

(ロ) 舗装機を移動車上のプラツトホームに積上げる。

(ハ) これら(ダンプ車及び舗装機の双方)を移動車と共に次舗装スパンヘ移動する。

ところで、原告は、右(イ)ないし(ハ)の点はいずれも成立に争いのない甲第一号証の一ないし四、第二号証の一、二に記載され、又は記載された事項により示唆されているにもかかわらず、審決が右甲号各証は右(イ)ないし(ハ)の点を具備又は示唆するものでないとしたのは認定の誤りである旨主張する。右甲号各証(引用例)に前記(イ)ないし(ハ)の点が記載され又は示唆されているか否かを、検討する。

1 甲第一号証の一について

同号証第二二三頁の写真7―10及び図7―6、図7―7(別紙図面(二)〔編註〕省略参照)には、ダム天場上に、ジブクレーンを備え、ダム天場上を横移動しうるプラツトホーム付の移動車が示され、更に右プラツトホームには、ダム法面上端まで連なる左右一対のタラツプが備えられていることが示されているところ、これによれば、右移動車のプラツトホームは、ウインチによりけん引されてダム法面を上昇してくる舗装用の機器を収納するためのものであることが推認され得る。したがつて、甲第一号証の一には、原告主張の前記(ロ)の点が示されているものということができる。

原告は、甲第一号証の一に示された工法においても、天場附近を舗装するときは、ダンプ車を何らかの方法で除去しなければならず、また、舗装作業の一スパン終了後、次舗装スパンヘ移動するには、舗装機を移動車のプラツトホームに積上げるのであるから、ダンプ車も移動しなければならないが、この除去又は移動は移動車のジブクレーンにより吊上げて行うことが可能であるから、前記(イ)の点も甲第一号証の一に示された工法は、具備又はこれを示唆している旨主張する。

しかしながら、右甲号証の移動車のジブクレーンが、法面上端舗装の際、ダンプ車を吊上げて除去し、又は次舗装スパンヘ移動する際ダンプ車を吊上げたまま移動できるほど強力のものであるとは認めることはできず、右除去及び移動は、図7―6の左側に記載されたジブクレーンによつて行われるものと認められる。したがつて、甲第一号証の一には、前記(イ)の点は記載されておらず、まして一つの移動車で前記(イ)ないし(ハ)の工程を行う点は記載されてもおらず、示唆もしていないものといわなければならない。

2 甲第一号証の二について

原告は、甲第一号証の二には、無限軌道を備えたクレーン車がホツパーカー、バイブレーテイングローラー、簡易フイニツシヤー等の機器を引上げて移動することが示されているか、又は右甲号証の記載から、当業者がその移動方法に想到することは容易である旨主張する。

しかしながら、右甲号証には、ホツパーカー、バイブレーテイングローラー、簡易フイニツシヤ等が無限軌道を備えたクレーン車とは別にダム天場上に据付けられたギヤードモータ付ウインチで操作されることが示されているのみで、クレーン車により前記の機器が引上げられてクレーン車ごとダム天場上を移動することは示されておらず、したがつて右甲号証に示された舗装法に本件発明の前記第四段階の(イ)及び(ハ)が具備されており又はこれを示唆するものであるとする原告の主張は理由がない。

3 甲第一号証の三について

同号証第一一二頁の写真108及び第一一三頁の写真109には、ダム天場に横方向にレールが敷かれており、そのレール上にウインチ付の作業車があり、その作業車の法面側下部には、車台と法面をつなぐ左右一対のプラツトホームがあり、作業車の中央には空間があつてその下部にはプラツトホームが設けられていること、更に法面上のアスフアルト舗装用の機器は、作業車からのウインチによつてその位置を保つていることが示されているものと認められる。そうすると、右甲号証による舗装法には、舗装機を移動車上のプラツトホームに積上げて移動車ごと次スパンに移動することが示されているものということができる。しかしながら、右甲号証の移動車はジブクレーンを備えていないから、右甲号証には、前記(イ)及び(ハ)の構成、すなわち、舗装作業の一スパン終了に次いで、ダンプ車を移動車のジブクレーンにより吊上げること及びダンプ車及び舗装機の双方を移動車と共に次舗装スパンヘ移動することは記載されていないし、また、一つの移動車で(イ)ないし(ハ)の工程を行う点を示唆するものでもないといえる。

4 甲第一号証の四について

同号証第一一六頁の下七行目から始まる一節には、ターンテーブル付プラツトホームが先ずウインチにより、ダム法面上のダンプ車を牽引してターンテーブル上に載せ、ターンテーブルを九〇度回転してダム天場上にダンプ車を降し、次いでウインチによりダム法面上の舗装機をプラツトホーム上に牽引して積上げ、この状態でターンテーブル付プラツトホームをトラクターで牽引してダム天場上を次スパンまで横移動することが示されているものと認められるが、同号証には、そのほかに、ダンプ車を移動車のジブクレーンにより吊上げ、舗装機と共に移動車により次舗装スパンに移動することは記載されてもいないし、示唆もされていない。

5 甲第二号証の一について

原告は、甲第二号証の一に示された舗装法には、本件発明の前記第四段階の(イ)、(ロ)、(ハ)が具備され又は示唆されている旨主張する。

同号証第六頁左中写真(「転圧」と表示してあるもの)には、ダム天場上に横移動用のレールがあつて、その上にレール上を移動する機器があり、その機器には、法面上で作業中の転圧機の幅とほぼ同じ幅を有する傾斜面が設けられていることが認められる。右転圧機は本件発明における舗装機と同じものではなく、むしろ本件発明における輾圧ローラー車に相当するものであると認められるが、レール上を移動する機器に載せられて移動し得る点からみれば、右写真は少なくとも本件発明の第四段階の(ロ)の工程を示唆するものであるということができる。

右甲号証第六頁左下写真及び第七頁の右上写真には、原告主張のように、天場のクレーンがバケツトを吊降していることが示されてはいるが、バケツトはダンプ車に比して軽量のものであるから、この写真により移動車のジブクレーンによつてダンプ車を吊上げて移動車ごと次スパンに移動することが示唆されているものとすることはできない。

6 甲第二号証の二について

同号証第八頁の左下写真及び第九頁左下写真には、ロツフイルダムのアスフアルト舗装に際し、ダム天場上のジブクレーンがそれぞれホツパーカー(ダンプ車)、バケツト、合材を吊上げていることが示されている。しかし、ジブクレーンが右のようなものを吊上げ得ることは当然のことであつて、これらの写真により本件発明の前記第四段階の(イ)及び(ハ)が示されている又はこれを示唆しているものとすることはできない。

右に検討したところによれば、右引用例のうちには、本件発明の前記第四段階の(イ)(ロ)(ハ)の構成の或るものを具備又は示唆しているものがあることは認められるが、本件発明は右(イ)、(ロ)、(ハ)の工程を一つの移動車により同時に行うことを要件としているものであるところ、右引用例にはこのことを記載したものがないのはもちろん、引用例全部を総合したところで、右引用例から本件発明の右工程が当業者にとつて容易に想到し得るものとすることはできない。

そうであれば、本件発明について、特許法第二九条の規定に該当する特許を無効とすべき事由が存するとはし得ないとした審決に、誤りはない。

よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕 本件発明の要旨は左のとおりである。

ジブクレーン及びプラツトホーム付の移動車をロツクフイルダム天場に据え、該移動車よりダム法面に、アスフアルト散布器及び締固器を有する車両型アスフアルト舗装機ならびにダンプ車をそれぞれウインチにより吊降し、その舗装機をダム法面上方ヘウインチにより移動させてアスフアルト舗装を行いつつ必要時にこれに前記ダンプ車によりアスフアルトを補給し、且つこの際アスフアルト舗装機からダム法面に横移動し得るローラーウインチにより輾圧ローラー車を吊下げてこれにより前記舗装と併せて輾圧作業を行い、舗装作業の一スパン終了に次いで前記ダンプ車を移動車のジブクレーンにより吊上げ且つ舗装機を移動車上のプラツトホームに積上げて、これらを移動車と共に次舗装スパンヘ移動することを特徴とするロツクフイルダム法面のアスフアルト舗装法。

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