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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)215号 判決

参加人主張の審決の取消事由の有無について検討する。

1 参加人の1の主張について

(一) 本願発明については、その特許請求の範囲(発明の要旨)において、本願発明が二次燃焼装置に係るものに限定されるとの明示の記載はないが、成立に争いのない丙第一号証、同第二号証(本願発明の明細書及び図面)によれば、少なくとも、本願発明が二次燃焼装置に係る場合を除外するものでないことは明らかであるところ、本願発明と対比されるべき引用例のものの技術的部分を検討するについては、本願発明における「二次燃焼」の意義が問題となるので、まず、この点について考える。

前掲丙第一号証、第二号証によれば、本願発明の明細書には、二次燃焼の意味を直接明らかにした定義的記載はないが、発明の詳細な説明中には、「本発明の第二の目的は、塵芥処理装置に関連して二次燃焼域として働きうる燃焼室を提供することである。」、「燃焼室10内における燃焼は不完全であり、可燃性の発生炉ガス及び蒸気などが生ずる。これらは、全体として18で示された本発明の二次燃焼室に通ずる導管16により室10から取出される。」、「第一室に入れられた塵芥中第一室中でスラツグにならないものは、一種の発生炉ガス、留出物、蒸気などとして、ここから引出され、第二室に送られ、第二室において燃焼され、有毒及び有害な気体やにおいがなくなるように完全に酸化された状態にされる。本発明は、特にこの第二室の構造及び構成に関連する。」との各記載があることが認められ、これらの記載と図面とを併せ考えると、本願発明にあつては、塵芥を直接焼却する場合の燃焼を一次燃焼と称し、これによつて発生した可燃性の発生炉ガス等を別途焼却する場合の燃焼を二次燃焼と称しているものと解される。したがつて、本願発明において二次燃焼とは、最初の焼却(一次燃焼)において完全に燃焼しきれなかつた可燃性の発生炉ガス等を別途焼却するために行う燃焼のことである。一方、成立に争いのない丙第四号証によれば、引用例には、その第五図に示された装置について、特に「二次燃焼」との記載は存しないことが認められる。

(二) そこで、引用例の第五図における装置75(A、B部分)において、右のような意味での二次燃焼が行われるか否かについて検討する。なお、前掲丙第四号証によると、引用例には、第五図に示す実施例に関しては、必ずしもそのすべての構造について個々具体的に説明が加えられていないが、これには、その記載の発明に関する一般的説明があり、また、「全ての図面において同一符合は同一部分を示す。」と明記されているので、第五図について直接の説明がされていない点については、これらの記述をも併せ考えることに差支えはない。

(1) まず、装置75(A、B部分)内への流入物について考える。

前掲丙第四号証によると、引用例には、「供給シヤフトよりの排出ガス及び火焔室より直接導出される反応ガスをそれぞれに又は一体化して……」との記載や「……火焔室より直接流出口2を通つて下方に流出する火焔室排出ガスの部分20と混合する。」との記載があり、これらの記載及び他の実施例に関する説明からすると、第五図における符号1は火焔室を、2は中央下側流出口を、20は反応ガスを、また、19は溶融物を示すものであることが明らかである(なお、引用例七頁左欄三二~三三行目に「反応ガスの排出路20」との記載があるが、右に述べたところからして、この記載は、不正確であり、正しくは「反応ガス20の排出路」と記載されるべきものである。)。

そうすると、第五図の装置75(A、B部分)に流入するものは、反応ガス、溶融物である。

(2) そこで進んで、反応ガス20の燃焼について考える。

引用例には、その第五図の装置75内において反応ガスが燃焼するか否かについて直接の記載はない。

ところで、家庭等からの廃棄物の燃焼には、酸素と熱が必要であるところ、右装置75内の酸素(新しい空気)と熱について、引用例第五図の装置を検討する。

前掲丙第四号証によれば、同図の火焔室1の中央流出口2の下方、すなわち、装置75の上方部にはL5の符合を付した部分があり、L5については、第五図の説明中に特段の記載はないが、第六図に関する説明として、「L5は、例えば中央流出口2……空気部分を示すものである。」との記載があるほか、「第三図において、燃焼に必要な付加空気は、L5のところで供給される。」との記載があり、更に、引用例の発明の一般的説明として「特に反応ガスの生起と導出の処理に際し、火焔室又は後部燃焼室へ給気を分割するのが好都合である。」との記載があり、これらの記載からすると、L5は、空気流又はその流入個所を示すものと解される。

次に、前掲丙第四号証によると、引用例中には、「この排出ガスを火焔室より直接導出され、したがつて、一般的に高熱の反応ガスと一体とするのがよい。」との記載があり、第五図に示された構造をみると、火焔室の中央の下方を指向するバーナ5を備え、火焔室底部中央に装置75と連通する反応ガスの流出開口が設けられているので、このことからすると、装置75に導入される反応ガスは相当高温のものであることは容易に理解できるところである。

そうしてみると、L5からの新しい空気(酸素)の補給が行われると、反応ガスは高温であるため、装置75(A、B部分)内において、燃焼するものと考えるのが極めて自然である。

もしも、参加人が主張するように、反応ガス20の終局燃焼、すなわち、二次燃焼が後部燃焼室18(C部分)においてのみ行われるものであるとすれば、これには何らかの点火装置が必要となるが、それが第五図に示された補助バーナ76であるとすると(他に点火装置は見当らない。)、このようなバーナを備えていない他の実施例(第一図、第四図の装置)においては、反応ガスが燃焼しないこととなり、それでは、引用例の発明の本旨ないしその一般的説明と抵触するに至る。したがつて、この点も、反応ガスがA、B部分において燃焼することを裏づけるものといえる。そして、前掲丙第四号証を検討しても、他に右のような認定に反し又はこれを左右するに足りる特段の事情は見当らない。

なお、補助バーナ76について、付言するに、これは、引用例中の「廃棄燃焼物のカロリー量が変動する場合でも、補助バーナ76により蒸気発生装置66の要求を確実に充足するようにする。」との記載からもうかがわれるように、反応ガス20を二次燃焼させるための火源ではなく、熱量が低下した場合などに、これを補充するためのものと解するのが相当である。

(3) 以上に検討したところからすると、引用例の第五図に示されたものは、装置75(A、B部分)において反応ガス20の燃焼が行われ、この燃焼は、廃棄物を直接燃焼させる火焔室においてその燃焼により生成されたガスを、火焔室と連接する装置75内において更に行う燃焼であるから、前述の意味での二次燃焼に外ならないものというべく、したがつて、装置75(A、B部分)内で行われる燃焼は、本願発明にいう二次燃焼に相当するものと解すべきである。

もつとも、右の場合において、その燃焼のために新たな火源が特に存在しない点では、本願発明のものとは異なる。しかし、火焔室で燃焼しきれなかつた反応ガスが、火焔室に連接するが、これとは別個の装置とみるべき装置75内に導入された直後に、ここで新たな空気が補給されることにより燃焼が行われることからすれば、本願発明について、そこにいうところの二次燃焼の意義を、例えば一次燃焼とは異なる火源を用いることを要するなど、前述のように解する以上に限定解釈すべき特段の事情を認めえない本件にあつては、火源の点が異なるだけでは、右の判断を左右するには足りない。

なお、(1)、(2)に述べた点に前掲丙第四号証を併せ考えると、引用例の第五図における反応ガス20の二次燃焼は、装置75(A、B部分)のみで行われるものとは断定しがたく、後部燃焼室18(C部分)に至つても行われ、したがつて、A、B、Cの全領域で行われるものと解されるが、既に、そのうちA、B部分において二次燃焼が行われ、これが本願発明と対比しうべきものであるのみならず、後部燃焼室18(C部分)は、特に排出ガス12の燃焼のためのものであるから、二次燃焼に係る本願発明の燃焼室と対比するについて、後部燃焼室を除外して考察しても何ら差支はない。

(三) 以上(一)、(二)に検討したところから明らかなとおり、審決が、本願発明と対比されるべき引用例のものの技術的部分として、第五図における後部燃焼室18(C部分)を除き、装置75(A、B部分)であるとしたとしても、その認定、判断には誤りはなく、相当であり、したがつて、右対比されるべき引用例のものの技術的部分を後部燃焼室18(C部分)でなければならないとする参加人の主張は誤つており、右主張を前提とするその余の主張も失当であるから、結局、参加人の1の主張は採用できない。

2 参加人の2の主張について

塵芥又は家庭等からの廃棄物を燃焼させるのに、空気の補給を必要とすることは常識であり、これらの物の燃焼装置において、空気を導入するための導管を設けることは慣用技術というべきである。なお、前掲丙第四号証によると、引用例第五図にはL5の表示があつて、これが空気の流入位置ないし構成を示すものでもあることは、既に述べたとおりであるから、右L5が、本願発明の燃焼すべき材料に空気を導入するための導管24に相当するものと認められる。

そうすると、審決が、右導管について相違点として掲記しなかつた点には誤りはなく、参加人の2の主張も採用できない。

よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める参加人の請求を失当として棄却することとする。

〔編註その一〕 本願発明の要旨および審決理由の要点は左のとおりである。

本願発明の要旨(特許請求の範囲)

可燃材料、特に気体、の完全かつ制御された燃焼を行なうための装置にして、耐火性裏張り(22)を有する垂直な円筒形状の室(18)と燃焼中に該室(18)を通つて下方へ流れるように燃焼すべき材料を該室(18)の頂部近傍に導入するための第一の導管(16)であつて、燃焼すべき材料を該耐火性裏張り(22)に衝突せしめるように接線状に配置されている第一の導管(16)と、燃焼による気体生成物を該室(18)の下端近傍から引出すための第二の導管(34)と、燃焼による固形生成物を該室(18)から引出すために該室(18)の底部に設けられた排出口(38)と、該第一の導管(16)を大気圧以下の圧力に維持するための手段(42)と、燃焼すべき材料に空気を導入するための導管(24)とを具備することを特徴とする装置。(別紙図面(一)参照)

審決の理由の要点

1 本願発明の要旨は、前項に記載のとおりである。

2 これに対し、特許出願公告昭和四一―一一〇三八号特許公報(昭和三八年九月二六日特許出願、昭和四一年六月二一日出願公告、以下これを「引用例」という。)には、本願発明と同じく、可燃物すなわち可燃材料を燃焼するための装置について記載され、特にその第五図において、垂直な円筒形状の室と、この室の頂部からこの室へ燃焼すべき可燃材料を導入するための導管と、燃焼により生じた気体生成物をこの室の下端近傍から引出すための導管と、燃焼により生じた固形生成物をその室の底部から引出すための排出口とを備えたものが記載されている。(別紙図面(二)参照)

3 そこで、本願発明を引用例に記載の技術と対比すると、本願発明では、引用例のものが具備している前記構成のほかに、

(一) 燃焼室壁に耐火性の内張りを設けている点

(二) 燃焼室からの排気用導管を大気圧以下の圧力に維持するための手段を備えている点

(三) 可燃材料導入用の導管を燃焼室の炉壁に対して接線状に配置している点

の三点をも具備している点で、引用例のものと相違している。

しかし、引用例に記載の技術において、その燃焼室壁に耐火性等の内張りを設けること及びその燃焼材料用導管を炉壁に対して接線状に配置することは、ともに単なる設計上必要に応じて採用される慣用技術に過ぎないものであるし、また、排気用導管を燃焼室内の圧力以下、例えば一気圧以下に維持することについても、その燃焼室における燃焼を円滑に行わせること等のため、当業者において必要に応じて採用される慣用技術に過ぎないものである。

そうすると、本願発明は、引用例に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第二九条第二項の規定により特許を受けることができない。

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙(一)

<省略>

別紙(二)

<省略>

<省略>

別紙(三)

<省略>

<省略>

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