東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)67号 判決
争いのない事実によれば、本願は、昭和四五年法律第九一号による改正前の特許法第四四条第一項の規定により昭和四〇年八月五日に分割出願されたものであるところ、その原出願(昭和三九年特許願第四八七六号)が、昭和三九年一月三一日に出願され、昭和四〇年七月一二日に特公昭四〇―一四六二二号として出願公告されたこと及び審決が、本願発明は、原出願の特許請求の範囲に含まれておらず、かつ、原出願の公告後であるから特許法第六四条の規定により原出願に係る発明を二以上の発明に補正する余地もないことを理由として本願について特許法第四四条第一項の規定する分割要件を満たさないとして出願日の遡及を認めなかつたものであることが明らかである。
しかしながら、特許法第四四条第一項の規定による分割出願において、もとの出願から分割して新たな出願とすることができる発明は、特許制度の趣旨に鑑み、もとの出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載されたものに限られず、その要旨とする技術的事項のすべてがその発明の属する技術分野における通常の技術的知識を有する者においてこれを正確に理解し、かつ、容易に実施することができる程度に記載されている場合には、右明細書の発明の詳細な説明ないし右願書に添付した図面に記載されているものであつても差し支えないと解するのが相当であり、また特許法第六四条第一項本文によれば、明細書又は図面の補正は、特許出願について査定又は審決が確定する以前であつても、出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があつた後は、特許法第五〇条の規定による通知を受けたとき、又は特許異議の申立があつたときは、同条の規定により指定された期間内に限り、特定の事項についてこれをすることができるとされているが、単に分割出願の体裁を整えるために必要な明細書又は図面の補正は、前記特許法第六四条第一項本文の規定にかかわらず、これをすることができるものと解するのが相当である(最高裁昭和五三年(行ツ)第一四〇号昭和五六年三月一三日判決参照)。
したがつて、審決が、「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があつた後の出願の分割は、その分割出願に係る発明が、分割出願時に、原出願の特許請求の範囲に記載されており、しかも、その発明を分割出願と同時に、原出願の特許請求の範囲から削除した場合でない限り、適法なものということはできない。」とした判断は誤りである。
この誤りが、審決の結論に影響を及ぼすべきものであることは明らかであるから、審決は、違法として取消しを免れない。