大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(う)111号 判決

被告人 小玉典子

〔抄 録〕

原判決挙示の各証拠によれば、被告人は原判示の日時場所において、買物客和泉恵子が左腕に提げていた手提袋内から、パンフレット二通在中の封筒を、その中に金員が入っていると思って抜き取ったが、居合わせた警察官に現認されその場で現行犯逮捕されたことが明らかであるところ、原判決説示のとおり、右パンフレット二通のうち一通は広告文言を印刷した一枚の紙片、他の一通は女性の洋装品類を広告する内容のカラー印刷の部分もある変型A四番四枚綴りのもので、これを三つ折りにして入れた封筒は縦約二三・五センチメートル、横約一二センチメートルの洋装店名の印刷してある白色紙製のものであって、それらは本件現場近くのミカド洋装店の店舗内に同種のものが多量に置かれてあり、傍らに「自由にお持ち下さい」と掲示してあったので、前記和泉恵子が後でちょっと見ようと思いそのうちの一部を取り自分の手提袋の中に入れて持っていたものであることも明白であるから、本件現場ではこれらは同女の所有に属し、無主物といえないことは明らかであるが、その財物性について考えると、これらはいわゆる広告用パンフレット類に属し、右洋装店に行けば誰でも自由に入手できるものであり、右和泉恵子もさほど価値を認めていなかったのであって、現に同人は本件後帰宅してこれをべつ見しただけで捨ててしまったことが認められるのであるから、これらについては客観的にも主観的にもその価値が微小であって、窃盗罪の客体である財物としてこれを保護するに値しないと解するのが相当であり、これと同趣旨の原判決の判断は正当として是認することができる。そして、被告人は右封筒の中に金員が入っていると思って手提袋の中からこれを抜き取ったのであるから、その行為は明らかに金員窃取の実行々為に及んだものというべきであり、たゞ抜き取った右封筒の中に、見込に反して金員が入っていなかったものであり、しかも叙上のとおり右封筒等自体の財物性も認めがたいのであるから、本件はまさに窃盗の障害未遂に当たる場合というべきである。

以上のほか、所論につき逐一検討を加えてみても、原判決の認定した事実及び説示につき特段の誤りを認めることはできない。

そうとすると、原判決が本件につき窃盗未遂の事実を認定し、これに刑法二四三条、二三五条を適用したのは相当であり、何ら事実の誤認も法令適用の誤りも存しない。

(千葉 永井 中野)

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