大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(う)1130号 判決

被告人 松浦弘治 外一名

〔抄 録〕

所論指摘の押収にかかるメモ写一枚は、被告人太田の司法警察員に対する昭和五三年九月一九日付供述調書末尾添付のメモ写と同一物であり(なお被告人松浦の司法警察員に対する同月一八日付供述調書末尾添付のメモ写もこれと同一内容のものである。)、原審第二回公判において、これが倉形功作成のメモ写の存在を立証する趣旨で検察官から証拠調請求がなされ、決定のうえ証拠調がなされたこと、これとは別に被告人らの前記各供述調書が、検察官から被告人両名の関係で、本件の犯行状況等を立証する趣旨で証拠調請求がなされ、被告人両名ともこれを不同意としたため、それぞれ相被告人に対する請求としてはこれが撤回され、各供述被告人本人のみの関係でこれらが取調べられたこと、以上の証拠調に先立って取調べられた同公判における証人倉形功の供述によると、右各メモ写は、同証人が被告人らに対し原判示の方法により同判示第二(二)別紙一覧表丙番号2及び3記載の事実のとおりの勝馬投票類似の申込をする際、心覚えのため半紙約二枚大のカレンダーの裏面に、レース番号、連勝番号、口数等をボールペンで記載して作成したメモをそのままリコピー(複写機)で機械的にコピーして作られたもので、その原本は同人から警察官に提出され同人に対する競馬法違反被告事件の証拠として使用されたことが認められる。

以上の事実に照すと、原裁判所は右のメモ写をメモの原本と同様、倉形功が被告人らに対してなした勝馬投票類似の申込の行為を立証する趣旨のもとに、かつ証拠物として取調べたことが明らかであるところ、前記の作成の経過及び立証趣旨にかんがみると、右メモは、その存在及び状態ことに表示された数字等の形状のみならず、その書面の意義が証拠となるいわゆる証拠物たる書面と解せられるから、その証拠調は原則として所論のとおり原本によるべきではあるが、前示のとおり右メモの原本が存在すること及びその写は原本を機械的にそのままコピーしたもので文字や数字の大きさ配列等の形状等の内容が全く原本と同一であることが予め証人によって明らかにされたばかりでなく証拠価値としては記載された数字等の意味内容が重要であり、用紙の形状、大きさ、紙質等はさほど重視しなくてもよいものであること、その原本は他の被告事件の証拠に使用されていること等の事情がうかがわれる本件においては、右メモの原本を取調べることなく、写について原本と同様の証拠能力を認めてこれを取調べることが許されるものと解すべきである。そして、右メモは前記のとおり倉形功が、それまでも繰返し行ってきたように、被告人らに原判示の勝馬投票類似の申込をする際本件事件を意識することなく、心覚えのためあたかも通常の取引の折の記帳と同様にレース番号、連勝番号、申込の口数をメモしたものであることが明らかであり、特に信用すべき情況のもとに作成されたものと認めることができるばかりでなく、これを作成した倉形功は原審における証言の折には右メモに記載された具体的内容について記憶を失っていたことも明白であるから、右メモにつき刑訴法三二三条三号によってその証拠能力を肯認することができ、本件メモ写についても同様に解するのが相当である(最高裁判決昭和三二年一一月二日刑集一一巻一二号三〇四七頁参照)。もっとも原審公判調書の記載からは原審裁判所が本件のメモ写を領置していることから、これを証拠物として取調べたことは明らかであり、その証拠調手続に当って、これが法廷で展示されたことも争いがないが、進んでその要旨の告知がなされたか否かについては必ずしも明白ではなく、その点についての異議の申立がなかったこと、原判決の説示に照し原審裁判所も右メモ写を記載された意義が証拠となる証拠物たる書面と解していたと認められることから、右要旨の告知等適法な証拠調がなされたものと推認できないわけではないが、さらに前記原審証人倉形功に対する証人尋問調書の記載に徴すると、右メモ写の採用に先立って行われた右の証人尋問の際右メモ写を示しての検察官の質問及びこれに対する証言の内容から右メモ写に記載されている内容がほとんどそのまま法廷で明らかにされたことが認められるし、その後採用された両被告人の前記各供述調書に添付された右メモ写は右調書とともに要旨告知を含む適法な証拠調がなされたと認められるし、各調書の本文部分中からもメモ写の内容が知られるのであるから、その調書の取調にあたり、仮りに所論のようにあらためて右各メモ部分の朗読ないし詳細な要旨の告知が行われなかったとしても、前記展示に際しての説明によって実質上その手続は履践されたものといって差支えなく、その証拠調手続に違法があったとすることは到底できない。

(千葉 永井 中野)

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