大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(う)2457号 判決

被告人 塚田徹郎

〔抄 録〕

所論は要するに、選挙に関する権利は国民に均しく保障された、濫りに奪うことのできない基本的人権であるところ、公職選挙法一一条二項により同法二五二条一ないし三項所定の選挙犯罪を犯した者に対し当然に選挙権被選挙権(以下公民権と略称する)を停止するのは、その権利の重要性にかんがみ、合理的理由があるとは認められず、また右選挙犯罪により懲役又は禁錮に処せられ、その刑の執行を猶予された者や罰金に処せられたに止る者に対してまで公民権を一定期間停止することは一般犯罪による処刑者と対比しても甚だしく均衡を失し、合理的根拠のない差別をするものであり、結局前記法条は不当に国民の参政権を奪うものであって、憲法一四条、一五条及び四四条に違反するから、被告人に対し同法条を適用し公民権の行使を制限した原判決は法令の適用を誤ったものである、というのである。

そこで検討すると、公職選挙法は同法二五二条一ないし三項所定のいわゆる選挙犯罪の処刑者について、当然に一定期間公民権を有しないこととしたうえ、情状により裁判所の裁量によりその規定を適用せず又はその期間を短縮しうる場合があるものとし(同条四項)、かくしてこの公民権停止の処遇は一般犯罪の処刑者に対するよりも厳しいものがあることは所論指摘のとおりである。しかしながら、右の選挙犯罪はいずれも選挙の公正を害する犯罪であり、このような犯罪による処刑者は、現に選挙の公正を害した者として選挙に関与させることを不適当と認めるべきであるから、これを一定期間公職の選挙に関与することから排除するのが相当であり、他の一般犯罪の処刑者が公民権を停止されるのとは自ら別異の事由によるものであることは明らかであり、従って選挙犯罪の処刑者に対し一般犯罪の処刑者に比し厳しい公民権停止の処遇を規定しても不合理な差別というべきではない。また公職の選挙権が国民の最も重要な基本的権利の一つとして尊重されなければならないことも所論のとおりであるが、むしろそれだけに選挙の公正は厳粛に保持されなければならないわけであり、右の公正を阻害し、選挙に関与させるのが不適当と認められるものに対しては、少くとも同種の次回の選挙に関与しえない程度の一定の期間公民権の行使から遠ざけ謹慎反省の機会を与えることが相当と解すべきであるから、これをもって不当に国民の参政権を奪うものということはできない(最高裁判所昭和三〇年二月一九日大法廷判決、刑集九巻二号二一七頁参照)。従って、公職選挙法の違憲を前提として原判決の法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。

(千葉 永井 中野)

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