大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(う)856号 判決

被告人 柳信次

〔抄 録〕

よって検討すると、原審第六回公判期日において検察官が所論のとおり訴因変更を申請してこれが許可されたこと、なおこれに伴い罰条も刑法二五二条一項から同法二四九条一項に変更することが許可されたことは記録上明らかである。そこで旧訴因と新訴因との間に公訴事実の同一性が認められるかどうかについて考えると、記録によれば、本件の事実関係の概要は、被告人が株式会社三富運輸倉庫(以下三富という。)代表取締役前坂勲に対するベニヤ板代金回収のため、三富がその倉庫に保管していたダイモジャパンリミテッド社(以下ダイモ社という。)所有の商品を取得しようと考え、他二名位の者と共謀のうえ、昭和五一年一二月一日ころ東京都足立区保木間町三六七六番地所在の三富の事務所においてダイモ社の従業員和田正判ら六名に対し暴行脅迫を加えて同人らを畏怖させ、本件商品の預り証を交付したうえ、和田からダイモ社所有の商品合計一万九六〇〇個(時価合計三九五九万五〇〇〇円相当)の交付を受け、右商品を前記栗橋家具センターに運搬して同所に保管中、昭和五二年一月二八日ころから同年一一月二日ころまでの間に前後一一回にわたって右商品のうちヤングダイモA型合計一万四四八〇個(時価合計五二〇万四四〇〇円相当)を松田泰麿ほか二名に売却したというものであって、旧訴因は右事実の後半の商品を売却した部分を横領罪として構成しているのに対し、新訴因は前半の商品を交付させた部分を恐喝罪としているのである。そうしてみると、横領罪と恐喝罪とはともに不正に他人の財物を領得することを内容とする点において罪質を同じくする財産罪であるうえ、右の新旧両訴因は右一連の社会的事実関係を基礎とするもので、ただその一部の事実判断の相違によって横領罪あるいは恐喝罪を構成するものとして主張された事実なのであり、その法律構成の差異によって犯罪の日時、場所、方法及び被害品の数量、金額を異にしているに過ぎず、旧訴因の被害品は新訴因の被害品の一部であるから、被害財物及びその所有者は同一であって、基本的事実関係においては同一であると認められる。そうして、恐喝の新訴因が認められる以上、同一の財物について同一の被害者に対する横領罪が成立する余地はないと解されるから、両訴因が併立する可能性はない。したがって両訴因は公訴事実の同一性の範囲内にあるものというべきである。したがって、本件訴因の変更を違法なものということはできず、新訴因に基づいて事実を認定した原判決には所論のような違法はないから、論旨は理由がない。

(小野 斉藤 小泉)

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