東京高等裁判所 昭和54年(う)954号 判決
被告人 向山和光
〔抄 録〕
二、(七) 被告人は、前記のように差押を受けた本件文書等と、前記木村巡査部長の作成した押収品目録交付書(司法警察員巡査部長市丸良成の署名押印があるもの)の記載とを照合していた際、傍らの印刷機の下から、水の入ったポリバケツをわざわざ引き寄せて、その蓋の上に腰をかけ、原判示のレポート用紙の綴りをとめてあった紙挾みやクリップなどを外したうえ、原判示のメモ紙三枚を右レポート用紙の綴りの中に挾み込むようにしたこと、
(八) 被告人の前記のような仕草を目撃した捜査員が、これをやめさせようとして注意したところ、被告人において無視する態度に出たため、被告人の手にしていた本件文書を取り上げようとするや、被告人は、やにわに腰を浮かし、前記ポリバケツの蓋をあけるなり、素早く本件文書を水の中に突込み、手と足で攪はんしたこと、
以上の事実を認めることができ、原審及び当審公判廷における被告人の供述中、右認定に反する部分は、他の関係証拠と対比して措置できない。
三、前記の事実関係に基づいて、所論の当否を考えてみるに、本件文書は、いずれも刑法二五八条にいわゆる公用文書に該当するものと認められ、被告人が、右の点を認識しながら、敢て原判示のような所為に及んだものであることもまた、これを認めるに十分であって、右所為が、同法所定の公文書毀棄罪を構成するものであることは明らかであるから、原判決の法令適用の誤りもしくは事実誤認を主張する論旨は、いずれも理由がない。
(綿引 藤野 三好)