東京高等裁判所 昭和54年(う)989号 判決
被告人 柿岡博
〔抄 録〕
(三) 所論は、更に本件物件については科学的鑑定がなされておらず、覚せい剤であるかどうか明らかでないのに、原判決が覚せい剤と認定したのは事実を誤認したものである、と主張するけれども、覚せい剤であることを認定するには必ずしもその物件につき専門的な知識を有する者に鑑定させた結果によってのみ判断しなければならないものではなく、覚せい剤取引の常習者による当該物件の形状からの判断、当該物件を現実に使用した覚せい剤常用者らの供述、当該物件と同一の販売元から販売された物件が覚せい剤であったか否か、その物件の取引価格、当該物件が末端の者に販売され使用されたが、その効用につき覚せい剤ではないとの苦情が出たことの有無等の事実を総合考察し、覚せい剤であることを合理的に推認できれば良いのであって、関係証拠によれば、原判決が被告人及び弁護人の主張に対する説明の項一、2、(一)、(二)、(三)において本件物件が覚せい剤であると認められる理由につき詳細に説示しているところは当審においても、これを十分肯認することができるから、原判決には所論のような事実誤認は認められない。
(向井 小川 中川)